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第2部第1章第1節【森林環境の保全と適正利用】

更新日:2011年10月5日 印刷ページ表示

1 水源かん養機能等を高める森林づくり

 群馬県は、県土の3分の2が森林で占められている森林県です。また、全国一の流域面積を誇る利根川の上流部に位置することから、古くから首都圏の水がめとして重要な役割を果たしてきました。
 平成13年に従来の林業基本法を改正して成立した森林・林業基本法では、森林が有する機能の持続的発揮を図るための政策という新たな理念が打ち出され、森林に対して、これまでの「木材生産の場」だけではなく、「環境への貢献」という大きな役割が位置づけられました。
 森林が持つ、水を蓄えたり、土砂の流れる量を少なくしたり、風や砂から農地や家を守ったりなどといった公益的で多面的な機能が評価され、より多くの人々がその重要性を認識するようになったことにほかなりません。
 県では、県民の皆さんがこのような森林からの恩恵を受け、安全で豊かに生活できるよう、森林の機能を高めるための施策に取り組んでいます。

(1)森林の機能

 森林の持つ機能には主に次のようなものがあります。

ア 水源のかん養

 森林の土壌は、穴の多いスポンジのようになっており、水をすみやかに地中に浸透させる働きがあります。これらの機能は雨水を一時森林に蓄えて、ゆっくりと河川に流すことから、洪水や渇水を緩和する働きを担っています。また、雨水が森林土壌を通過することにより、水質が浄化されます。

イ 自然災害を防ぐ

 森林の土壌は、落ち葉や下草に覆われており、降雨の際にはこれらが土砂の飛散や浸食・流出を防いでいます。また森林は根を地中に張り巡らすことで土壌を固定し、土砂の崩壊や流出を防止しています。

ウ 地球温暖化を防止する

 森林は、地球温暖化の原因となる大気中の二酸化炭素を光合成により吸収し、幹や根などに有機物として貯蔵することにより、地球温暖化の防止に重要な役割を果たしています。

エ 生活環境を守る

 森林は、騒音を吸収したり風害を防いだりする役割があります。

オ 保健休養の場を提供する

 森林は、森林浴・ハイキング・キャンプ等のレクリエーションの場を提供することなどにより、人に安らぎを与え、心の緊張を和らげています。

カ 木材を供給する

 木を伐採し、用途にあった製材・加工を施すことで、身近な木製品や住宅の資材となります。

キ 自然環境を守る

 森林は、野生動植物の生息・生育の場となることにより、生物種、生態系等を保全し、自然環境を健全に保つ役割があります。

(2)森林の多様性を図るための森林づくり

 前述のような森林の機能は、林木、土壌、多様な生物などの森林の構成要素が良好な状態に保たれ、生態系として健全に維持されることによって初めて発揮されます。そのため、森林の状態を健全に保つことが不可欠ですが、現在、森林の約4割にあたる人工林では、木材価格の低迷による採算性の悪化などから間伐などの必要な手入れが不十分な状態にあります。そこで、群馬県では次のような対策を行い、積極的に森林を整備することによって森林機能の増進を図っています。

ア 間伐・作業道推進プランと森林吸収源対策

 様々な間伐関連施策の連携を図って森林整備を総合的に進めるため、平成16年からの10年間で4万ヘクタールの間伐と1,000キロメートル作業道の開設を行う計画を策定し、実施しています。また、地球温暖化対策として二酸化炭素の森林吸収源となる森林を確保するため、年間7千ヘクタールの間伐を目標に森林を整備しています。平成22年度は202キロメートルの作業道を開設し、4,417ヘクタールの間伐を行いました。

イ 保安林制度

 水源のかん養、山地災害の防止など、私たちの暮らしを守るうえで特に重要な役割を果たしている森林を、国や県で保安林に指定しています。保安林では、その働きが失われないように、立木の伐採や土地の形質変更を制限したり、適切に手を加えるなど、保安林としての機能を維持・増進するために必要な管理を行っています。平成22年度末現在、本県の保安林面積は、約23万ヘクタールで、林野面積の約54%、県土面積の約36%を占めています。

2 災害に強い活力ある森林づくり

 近年、台風やゲリラ豪雨と呼ばれる局地的な集中豪雨が頻発する傾向にあり、各地に甚大な被害をもたらしています。
 群馬県においても、平成19年の台風災害など過去には多くの災害が発生しています。
 豪雨等による山地災害を軽減し、地域の安全・安心の向上のため、災害に強い活力ある森林づくりに努めました。

(1)災害に強い活力ある森林とは

 森林が健全な状態にあると、根が杭のように地面をしっかりつかみ、降雨や地震動による表層の崩壊を抑えます。
 また、光が十分に入る森林には下草が生え、落ち葉や枯れ枝にも覆われているため、雨が降っても直接土に当たらず土砂の流出を抑えています。
 健全な森林の土壌には、多くの微生物や小動物が住み多くの土壌孔隙と呼ばれるすき間を作ります。
 すき間の多い土は、スポンジのように降った雨を吸収し、時間をかけ少しずつ流下させることで、洪水を防ぐことが出来ます。
 災害に強い活力ある森林とは、本来森林の持つ多様な機能を健全に発揮できる森林です。

(2)災害に強い活力ある森林づくりのために

 近年、林業生産活動が木材価格の低迷のため停滞し、森林が手入れをされずに放置され、森林の荒廃、公益的機能の低下が危惧されています。
 このため、治山事業による森林整備を通じて健全な森林づくりを行い、森林の持つ公益的機能の維持に努めました。
 併せて、山地災害の発生のおそれが高い地域を山地災害危険地区に指定し、土砂の流出を抑える治山ダムや、落石を止める落石防止施設などの治山施設を整備し、安全で安心な生活環境の構築に努めています。

3 再生可能資源である県産木材の利用推進

 森林は、石油、石炭などの地下資源と異なり、伐採しても苗木を植え育成することで再生します。地域資源である県産木材を利用することは、地産地消の流れを生み、地域の森林が再び育成される森林循環へとつながるのです。そして健全に育成された森林は、水源のかん養や県土の保全などの公益的な機能を発揮して県民のみなさんに多大な恩恵をもたらします。また、県産木材を利用することは、循環型社会の構築、快適な住空間の創造、林業の振興を通じた山村の活性化など、多様な意義を有しています。「ぐんまの木」を使うことが、「ぐんまの森林」を守ります。「ふるさとの山の木を使おう」を合い言葉に、積極的に県産木材の利用推進を図っています。

(1)ぐんま優良木造住宅建設の推進

 森林から生産された木材の多くは、住宅の建築用材として使われています。地元ぐんまの木材を使った住宅は、炭素の貯蔵効果だけでなく、遠方からエネルギーを使って運ばれる資材よりも炭素排出が少なく、地球温暖化防止に貢献します。「ぐんま優良木材」を構造材に60%以上使用した「ぐんま優良木造住宅」の建設を積極的に推進しています。

(2)公共事業等への利用推進

 県や市町村などの公共施設をはじめ、河川・道路・公園等の公共事業にも県産木材の利用を推進しています。また、公共施設や公共事業で県産木材を利用してもらうため、木材製品のPRをはじめ、県庁関係部局の連絡・調整、情報交換を行うとともに、地域機関においては市町村を含めた県産木材の利用促進に取り組んでいます。なお、公共建築物等の木材利用の促進について法律が制定されたことから、今後は、建築に係わる公共工事で利用が進められる見込みです。

(3)教育施設等への県産木材利用推進

 木材が人に与える影響について様々な調査が行われていますが、木材がつくりだす心地よい空間は、人の心身や活動に良好に作用することが確認されています。このため、次代を担う子どもたちが、長い時間を過ごす県内の保育園や幼稚園、小中学校などの内外装材や遊具、机・椅子などの家具類に県産木材の利用を進めているほか、障害者や高齢者の関連施設にも、県産木材を使った快適空間づくりを支援しています。

(4)県産木材の普及啓発

 生活の中の身近な素材として、県産木材の良さを県民のみなさんに広く知ってもらうために、木材関係団体が開催する親と子の木工広場の支援や、県主催の児童生徒木工工作コンクールなど各種イベントの開催を通じ、普及啓発に努めています。

(5)県産木材の新たな利用

 高度経済成長の過程で、木材は鉄やプラスチックなどの素材に代わられ、また、外国の安い木材が輸入されるなど、国産の木材利用は減少を続けてきました。しかし、近年、環境や資源の問題が取り上げられる中で、再び木材の利用価値が見直されてきています。特に、住宅に地域の木材を利用したり、今まで使われずに林地に放置されていた不良材や、丸太を製材した後の端材をバイオマスエネルギー等に利用したりしています。県産木材も新しい需要を開拓するため、合板、集成材、燃料利用など様々な用途開発を進めます。県民の生活をもっと豊かで安全安心なものにするため、新たな分野における木材利用を探っています。