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第2部第4章第2節 大気環境の保全、騒音、振動、悪臭の防止

更新日:2016年10月20日 印刷ページ表示

第1項 大気汚染の防止

1 大気汚染状況の常時監視

(1)大気汚染監視測定体制

 大気汚染の状況を正確に把握し、実態に即応した適切な防止対策を進めるため、県内各地に測定局を設置し、自動測定機による監視測定を行っています。

ア 一般環境大気
 県では10市3町1村に16測定局を設置し、二酸化硫黄、窒素酸化物、浮遊粒子状物質、オキシダントなどの測定を実施しています。
 その他、前橋市が2測定局、高崎市が4測定局で測定を実施しています。

イ 自動車排出ガス
 県では6市に6測定局を設置し、一酸化炭素、窒素酸化物、非メタン炭化水素、浮遊粒子状物質などの測定を実施しています。
 その他、環境省が1測定局、高崎市が1測定局で測定を実施しています。
 測定局の適正配置や測定項目の再検討、固定局では調査できない大気汚染状況調査のために、平成14年度から大気汚染移動観測車による測定を行っています。

大気汚染監視測定の状況は、群馬県大気汚染情報ホームページにてお知らせしています。

(2)一般環境大気測定結果

ア 硫黄酸化物(*注1)
 硫黄酸化物は、石炭、石油などの硫黄分を含む燃料を燃やすことに伴って発生します。二酸化硫黄と三酸化硫黄とがありますが、大部分は二酸化硫黄として排出されます。濃度の測定は二酸化硫黄で行い、環境基準も二酸化硫黄で設定されています。
 平成27年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。

(*注1)硫黄酸化物:硫黄と酸素とが結合してできます。代表的なものとして二酸化硫黄(亜硫酸ガス)、三酸化硫黄(無水硫酸)などがあります。
 二酸化硫黄は刺激性の強いガスで、1~10ppm程度で呼吸機能に影響を及ぼします。主な発生源としては、自然界では火山ガス、一般環境ではボイラー等の重油の燃焼があります。一部は環境中で硫酸に変化し、酸性雨の原因にもなっています。

イ 窒素酸化物(*注2)
 窒素酸化物は、一酸化窒素と二酸化窒素の総称で、発生源は工場、事業場及び自動車などがあり、燃料の燃焼過程において空気中の窒素と酸素の反応により生ずるものと、燃料中の窒素が酸化されて生ずるものがあります。大部分は一酸化窒素の形で排出され、大気中で二酸化窒素に変化します。
 窒素酸化物は、それ自体が有害であるばかりでなく、光化学オキシダントや酸性雨の原因物質でもあります。

a 二酸化窒素(*注3)
 平成27年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。また、二酸化窒素の年平均値は、低下傾向にあります。

b 一酸化窒素(*注4)
 一酸化窒素については、環境基準は定められていません。平成27年度の測定結果は、年平均値0.001~0.003ppm(前年度年平均値0.001~0.004ppm)の範囲となっています。

(*注2)窒素酸化物:窒素と酸素の反応によって生成する窒素酸化物は、一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素及び五酸化二窒素などが知られています。このうち大気汚染の原因になるのは一酸化窒素、二酸化窒素です。
(*注3)二酸化窒素:赤褐色の気体で毒性が強く、気管支炎やぜんそく、肺水腫の原因となるなど、呼吸器に影響を及ぼします。
(*注4)一酸化窒素:無色の気体で液化しにくく空気よりやや重く、空気または酸素に触れると赤褐色の二酸化窒素に変わります。血液中のヘモグロビンと結合し酸素供給能力を妨げ、中枢神経をマヒさせ貧血症をおこすことがあります。

ウ 浮遊粒子状物質(*注5)
 浮遊粒子状物質は、大気中に浮遊する粒子状物質のうち粒径10マイクロメートル以下のものです。大気中に比較的長時間滞留し、私たちの健康に影響を与えるといわれています。
 平成27年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。浮遊粒子状物質の年平均値は、やや低下傾向にあります。

(*注5)浮遊粒子状物質:浮遊粉じんのうち粒径が10マイクロメートル以下の粒子をいいます。10マイクロメートル以下の粒子では気道、肺胞への付着率が高くなります。

エ 一酸化炭素(*注6)
 一酸化炭素は有機物の不完全燃焼により発生し、大気汚染の原因として問題となるのは、主に自動車の排出ガスです。
 平成27年度の測定結果によると、前橋局における年平均値が0.1ppm(前年度年平均値0.2ppm)となり、環境基準を達成しています。

(*注6)一酸化炭素:無味、無臭、無色、無刺激の空気より少し軽いガスで、有機物の不完全燃焼により発生します。大気汚染として問題となる大部分は、自動車の排出ガスによるものです。このガスを体内に吸入すると、血液(赤血球)中のヘモグロビンと結合し酸素供給能力を妨げ中枢神経をマヒさせ、貧血症をおこすことがあります。

オ 光化学オキシダント(*注7)
 光化学オキシダントは、工場や自動車から直接排出されるものではなく、大気中に存在する様々な物質が化学反応して生成します。こうした大気中で新たに生成する汚染物質を二次汚染物質といいます。
 平成27年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成していません。これは全国的にも同様であり、二次汚染物質による大気汚染対策が困難であることを顕著に示しています。
 夏季を中心にその濃度が著しく上昇し、光化学オキシダント注意報(*注8)が発令される場合もあります。光化学オキシダントの年平均値は、ほぼ横ばいです。
 近年では大陸からの移流の影響も指摘されており、広域的な問題になっています。

(*注7)光化学オキシダント:自動車や工場・事業場から大気中に排出された窒素酸化物や炭化水素等が、太陽光線に含まれる紫外線を受けて化学反応をおこして生成されるオゾン、アルデヒド、パーオキシアセチルナイトレート等、酸化力の強い物質の総称です。その95%がオゾンで、現在ではオゾン濃度を測定して光化学オキシダント濃度と見なしています。高濃度になると粘膜を刺激するため、目がチカチカしたり喉がいがらっぽく感じる等の健康被害が発生する恐れがあります。また、植物に対しても葉が枯れるなどの影響を及ぼすことがあります。大気中のオキシダント濃度は例年4月から9月の間に高濃度となることが多く、また、気象条件としては、日差しが強く、気温が高く、弱い風(群馬県の場合、南東風)が吹いているときに高濃度になりやすい傾向があります。
(*注8)光化学オキシダント注意報:大気中のオキシダント濃度が高濃度(0.120ppm以上)となり、気象条件等を考慮してその状態が継続すると判断される際に発令します。注意報発令時には健康被害を防止するため、屋外での激しい運動を控えるよう教育施設や関係機関に伝達して注意を促します。また、汚染状況をなるべく早期に改善させるため、オキシダント発生の原因となる汚染物質を大量に排出している工場・事業場に対して排出量を抑制するよう要請します。

カ 微小粒子状物質(PM2.5)(*注9)
 平成21年度から新しく環境基準が設けられた項目です。県内では、平成23年度から前橋局で測定を開始し、順次測定機を増設し、現在、県内10箇所で測定を行っています。
 平成27年度の測定結果によると、館林局では環境基準を達成できませんでしたが、それ以外の測定局では環境基準を達成しました。
 また、微小粒子状物質の発生原因や、大気中の挙動等を明らかにするため、平成27年度は前橋局及び館林局で成分分析を実施しました。
 これまでに実施してきました、微小粒子状物質の成分分析結果からわかってきたことは、以下のとおりです。

  1. 割合の多い主な成分は、硫酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、有機炭素、元素状炭素である。
  2. 一次生成粒子に比べ、二次生成粒子(*注10)の割合が大きい。
  3. 秋から冬にかけ、バイオマスの燃焼による成分が増加する傾向がある。
  4. 春から夏にかけて、硫酸塩の割合が高くなり、秋から冬にかけて、硝酸塩の割合が高くなる傾向がある。
  5. 関東地方では、西日本に比べ、大陸由来の汚染の影響が小さい。

 しかしながら、微小粒子状物質の発生源については、まだ不明な部分も多いため、更に研究を重ね、PM2.5の削減対策を推進していきたいと考えています。

(*注9)微小粒子状物質:浮遊粒子状物質よりさらに細かく、粒径が2.5マイクロメートル以下の粒子です。粒子が細かいため、肺の奥深くまで入りやすく、肺ガンや呼吸器系への影響だけでなく、循環器系への影響も懸念されています。このため、類似項目の浮遊粒子状物質と比較して非常に厳しい環境基準値が設定されています。
(*注10)二次生成粒子:ボイラーや自動車などから直接大気中に排出された粒子状物質を「一次生成粒子」、大気中で原因物質から光化学反応などにより粒子化したものを「二次生成粒子」といいます。

キ 炭化水素(*注11)
 想定される濃度域では直接的な健康影響は認められないため、環境基準は定められていません。しかしながら、光化学オキシダントの原因物質(メタンを除く)の一つであるため、その低減が必要となっています。

a 非メタン炭化水素
 平成27年度の測定結果は、各測定局における年平均値が0.08~0.14ppmC(*注12)(前年度年平均値0.08~0.17ppmC)の範囲でした。
 非メタン炭化水素に係る光化学オキシダント生成防止のための指針には「午前6時から午前9時までの3時間平均値が0.20~0.31ppmCの範囲」と定められています。
 平成27年度の測定結果で、各測定局における3時間平均値が0.31ppmCを超えた日数は、0~11日でした。

b メタン
 平成27年度の測定結果は、各測定局における年平均値が1.93~1.99ppmCの範囲でした。

(*注11)炭化水素:炭素と水素だけからなる有機化合物の総称です。石油、石油ガスの主成分であり、溶剤、塗料、医薬品及びプラスチック製品などの原料として使用されています。さらに自動車排出ガスにも含まれています。環境大気中のメタンを除いた炭化水素(非メタン炭化水素)は、窒素酸化物とともに光化学オキシダントの主原因物質のため、光化学オキシダント生成の防止のために濃度の指針が定められており、単位はppmCで示します。また、全炭化水素とは、大気中の炭化水素の測定に用いられている自動測定機で測定されるメタンと非メタン炭化水素の合計数値で表したものです。
(*注12)ppmC:炭化水素の濃度をメタンの濃度に換算するため、炭素原子数を基準として表した100万分の1の単位です。

(3)自動車排出ガス測定結果

 自動車排ガス測定局(自排局)は一般大気測定局(一般局)と比較して、自動車の影響を受けやすいと考えられる交通量の多い道路沿道に設置されています。
 自動車排ガスに含まれる下記の項目について、全体的に自排局は一般局より濃度が高くなっています。しかしながら、その程度はわずかであり、群馬県内で大気環境に及ぼす自動車の影響はそれほど大きくない状況です。

ア 窒素酸化物

a 二酸化窒素
 平成27年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。また、各測定局における年平均値は0.007~0.020ppmの範囲となっています。

b 一酸化窒素
 平成27年度の測定結果は、各測定局における年平均値が0.003~0.025ppmの範囲でした。

イ 浮遊粒子状物質
 平成27年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。各測定局における年平均値は1立方メートル当たり0.014~0.023ミリグラムの範囲となっています。

ウ 一酸化炭素
 平成27年度の測定結果によると、全測定局で環境基準を達成しています。また、各測定局における年平均値は0.2~0.4ppmの範囲となっています。

エ 炭化水素

a 非メタン炭化水素
 平成27年度の測定結果は、各測定局における年平均値が0.08~0.22ppmCの範囲でした。
 また、各測定局における3時間平均値が0.31ppmCを超えた日数は、0~80日でした。

b メタン
 平成27年度の測定結果は、各測定局における年平均値が1.91~2.02ppmCの範囲でした。

オ 微小粒子状物質
 国設前橋局における年平均値は1立方メートル当たり13.4マイクログラム、日平均値は1立方メートル当たり30.9マイクログラム環境基準を達成しました。

2 大気汚染による健康被害の防止対策

(1)大気汚染緊急時対策

 「大気汚染防止法」では、大気の汚染が著しくなり人の健康又は生活環境に係る被害が生ずるおそれがある場合に、被害を防止するため、住民への周知、ばい煙排出者への排出量削減の協力要請等の措置を行うよう決められています。
 このため、光化学オキシダント等の濃度が高くなった際に「群馬県大気汚染緊急時対策実施要綱」に基づき、注意報の発令などの措置を行っています。
 平成27年度は、光化学オキシダントについて、注意報を9日発令しました。
 光化学オキシダント注意報の発令時には、その旨を関係機関に周知するとともに、

  1. 屋外での運動は避け、屋内運動に切り替える。
  2. 目やのどに刺激を感じた時は、洗眼、うがいなどをする。
  3. 症状が深刻な場合は医療機関に受診する。

等の対策をとるよう注意喚起しています。
 また、微小粒子状物質(PM2.5)については、平成25年2月に環境省から「注意喚起のための暫定的な指針」が示されました。
 県では、環境省の指針に基づき、「日平均値が1立方メートル当たり70マイクログラムを超えると見込まれるとき」に県民に向けて注意喚起を行うこととしています。なお、県内では、注意喚起を行った実績はありません。

注意喚起基準
 県内を6区域に区分し、1局でも下記基準に該当し、かつ日平均値が1立方メートル当たり70マイクログラムを超えると見込まれる場合に、その局が該当する発令区域に対して行います。

判断基準
 大気中PM2.5濃度1時間値において

  1. 午前5~7時の平均値が1立方メートル当たり85マイクログラムを超えた場合
  2. 午前5~12時の平均値が1立方メートル当たり80マイクログラムを超えた場合

(2)大気汚染事故対策

 従来、大気汚染事故(自然災害、事故災害によるものも含む)が発生した際は、「群馬県地域防災計画」に基づいて対応を行ってきましたが、小規模の大気汚染事故など規定対象外の事故についても迅速に対応を行うため、「大気汚染事故対応要綱」を制定し、平成15年4月1日から施行しています。
 この要綱により、環境保全課、環境森林事務所、環境事務所及び衛生環境研究所の対応や県関係機関相互の連絡対応について必要な事項を定め、当該事故による環境への影響を最小限にとどめるよう、より一層連携して対応していきます。

3 大気環境測定調査(有害大気汚染物質、酸性雨等)の実施と結果

(1)有害大気汚染物質対策

 有害大気汚染物質とは、継続的に摂取されると人の健康に影響を与えるおそれのある物質で大気汚染の原因となるもののことで、現在該当する可能性があるとされている物質は248物質あります。
 その中で、大気汚染による人の健康被害に係る被害が生ずるおそれがある程度高い物質は優先取組物質とされています。県では、優先取組物質(別途測定しているダイオキシン類(後述)を除き、六価クロム化合物・クロム及び三価クロム化合物の2項目は分離して測定することができないため、実質21項目)について、平成27年度は、県内5地点(伊勢崎市、沼田市、渋川市、安中市、太田市)で調査しました。
 ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンの4物質は環境基準値が、アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀及びその化合物、ニッケル化合物、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,3-ブタジエン、ヒ素及びその化合物、マンガン及びその化合物の9物質については、健康リスク低減のための指針値が設定されています。
 これらすべての物質において、調査した5地点ともにそれらの値を下回っていました。

(2)酸性雨(*注13)・酸性霧

 降水のpHなどを把握するため、平成元年度から前橋市郊外で酸性雨調査を実施しています。
 平成27年度の降水について通年観測したところ、pHは4.7~5.9の範囲で、平均値は5.0でした。
 pH年平均値は、ゆるやかな上昇(改善)傾向にあります。
 また、山岳部に発生する酸性霧について、その性状を長期的に把握するため、衛生環境研究所が赤城山で酸性霧調査を実施しています。平成27年度の酸性霧について観測したところ、pHは3.2~6.8の範囲で、平均値は4.0でした。

(*注13)酸性雨:狭い意味ではpHが5.6以下の雨のことです。酸性雨は化石燃料等の燃焼によって生じる硫黄酸化物や窒素酸化物が大気中で硫酸や硝酸などに変化し、これらが雨(雲)に取り込まれることによって起こります。広く酸性雨という場合には、雨のほか酸性の霧やガスなどの地上への降下も含み、これらを酸性降下物と呼ぶ場合もあります。酸性雨が湖沼や森林に降り注いだ場合には生態系を破壊する可能性があり、都市部では建造物等が腐食してしまうなどの被害が考えられます。

4 工場・事業場への立入検査

(1)法律・条例による規制

ア「大気汚染防止法」による規制
 「大気汚染防止法」では、ばい煙発生施設、揮発性有機化合物排出施設、一般粉じん発生施設等を対象として規制しています。この他に、特定粉じん(アスベスト)についても規制していますが、これについては次節に記述します。
 それぞれの施設ごとに、ばい煙発生施設及び揮発性有機化合物排出施設については排出基準が、一般粉じん発生施設については管理基準が定められています。

イ「群馬県の生活環境を保全する条例」による規制
 「群馬県の生活環境を保全する条例」では、ばい煙特定施設、粉じん特定施設等を対象として規制しています。
 それぞれの施設ごとに、ばい煙特定施設については排出基準が、粉じん特定施設については管理基準が定められています。

(3)法令遵守状況の監視

 平成27年度は、ばい煙発生施設等を設置する243事業場に対して立入検査を実施し、排出ガス中のばい煙濃度の自主測定結果や、施設の維持管理状況などについて、確認・指導を行いました。
 また、18事業場(各事業場につき1排出口)でばい煙等濃度の測定を行ったところ、1事業場において排出基準超過がありました。この事業場については、現在、事業者に対し、対策を取るよう指導中です。

第2項 騒音・振動の防止

1 騒音規制法および振動規制法の管理運営

 騒音・振動公害は、発生源の周辺地域に限られ、大気汚染や水質汚濁のように広域的に影響を及ぼす恐れがありません。そのため、生活実態のない地域等について規制する必要がないことから、「騒音規制法」及び「振動規制法」では、地域指定制を採用しています。この指定地域には、工場騒音・振動の規制、建設作業騒音・振動の規制、自動車騒音・振動測定に基づく要請等が適用され、本県では全市町村について地域指定しています。(ただし、全域ではありません。)
 「群馬県の生活環境を保全する条例」においては、飲食店営業等から深夜発生する騒音や航空機による商業宣伝放送について規制しています。また、「騒音規制法」の規制対象外である3施設(コンクリートブロックマシン、製瓶機、ダイカストマシン)を、「振動規制法」の規制対象外である5施設(圧延機械、送風機、シェイクアウトマシン、オシレイティングコンベア、ダイカストマシン)及び1作業(空気圧縮機を使用する作業)を規制対象としています。

(1)工場・事業場等の騒音・振動対策

 騒音・振動については、市町村長に事務が委任されており(航空機による商業宣伝放送を除く。)、「騒音規制法」、「振動規制法」及び「群馬県の生活環境を保全する条例」に基づき、規制基準の遵守及び各種手続きの適正な実施を工場及び事業者に対して指導しています。

2 環境騒音の測定調査

(1)環境騒音測定結果

 現在、騒音に係る環境基準は等価騒音レベル(*注14)をもって評価しています。
 時間帯別では、夜間の環境基準達成率が低くなっています。

(*注14)等価騒音レベル:ある時間範囲Tについて、変動する騒音レベルをエネルギー的に平均値として表したもの。時間的に変動する騒音のある時間範囲Tにおける等価騒音レベルは、その騒音の時間範囲Tにおける平均二乗音圧と等しい平均二乗音圧をもつ定常音の騒音レベルに相当します。(単位はデシベル。)

(2)自動車騒音測定結果

ア 一般道路
 平成27年度は、県内主要道路沿線の22地点で、市町村により自動車騷音の測定が行われました。
 測定地点のうち17地点(77%)が昼間及び夜間の時間帯で環境基準を達成しました。
 また、自動車騷音の要請限度(公安委員会に対する要請及び道路管理者に意見を述べる際に自動車騒音の大きさを判定する基準)を超えた地点はありませんでした。

イ 高速道路
 東北縦貫自動車道、関越自動車道新潟線、関越自動車道上越線(上信越自動車道)及び北関東自動車道における沿線地域の騒音の状況を把握するため、沿線市町村により自動車騒音測定が行われました。

(3)新幹線鉄道騒音・振動

 上越新幹線、北陸新幹線における沿線地域の騒音・振動の状況を把握するため、新幹線鉄道騒音・振動測定を行っています。

ア 上越新幹線
 平成27年度に実施した新幹線鉄道騒音・振動の調査結果及び新幹線鉄道騒音の環境基準達成状況によると、上下線中心線から測定地点までの距離が線路に近い25メートル地点における多くの測定地点で新幹線鉄道騒音に係る環境基準を超過していました。
 また、振動については、環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策に示されている勧告指針値(70デシベル)を各測定地点とも下回っていました。

イ 北陸新幹線
 平成27年度に実施した新幹線鉄道騒音の調査結果及び鉄道騒音の環境基準達成状況については、線路に近い25メートル地点で新幹線鉄道騒音に係る環境基準を超過している地点がありました。また、振動については、環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策に示されている勧告指針値(70デシベル)を各測定地点とも下回っていました。

(4)道路交通騒音の測定評価

 道路交通騒音面的評価は、県内全域の主要な道路に面する地域における自動車騒音について、原則5年間(最長10年間)で測定評価を行い、自動車騒音の環境基準達成状況を調査しています。平成27年度は群馬県及び県内12市が道路交通騒音面的評価を行いました。
 県では、これまでの路線に加え玉村町における2路線で行いました。この評価は、環境省から示されている「騒音に係る環境基準の評価マニュアル・地域評価編(道路に面する地域)」に基づき実施しています。

(5)防音対策の要望

 測定調査等の結果を踏まえ、平成27年度には次の要望を行いました。

ア 高速自動車道沿線騒音対策要望
 各高速自動車道における環境基準の達成及びその維持については、県内の沿線市町村から遮音壁設置要望をまとめ、平成27年8月に東日本高速道路(株)高崎管理事務所に要望を行いました。
 また、平成27年11月には関係県で構成する「東北・上越・北陸新幹線、高速自動車道公害対策10県協議会」を通じて同社に要望を行いました。

イ 新幹線鉄道騒音対策要望
 上越・北陸新幹線における環境基準の達成及びその維持については、平成27年11月に関係都県で構成する「東北・上越・北陸新幹線、高速自動車道公害対策10県協議会」を通じて東日本旅客鉄道(株)本社及び(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構に要望を行いました。
 また、測定の結果、環境基準未達成地域があることから、平成28年3月に東日本旅客鉄道(株)高崎支社に発生源から出る騒音の防止対策をより一層強化するよう強く要望しました。

3 騒音・振動の業務を行う市町村に対する側面支援

 「騒音規制法」及び「振動規制法」を運用する上で必須となる騒音・振動の測定に係る知識の取得のため、市町村職員を対象に、平成24年度から「騒音・振動市町村担当者研修」を開催しています。
 平成27年度には、「群馬県の生活環境を保全する条例」における地域指定の権限を市に移譲し、運用しやすい法制度の整備を図りました。今後も市町村の実情を十分に考慮しながら、市町村が行う騒音・振動の業務を支援していきます。

4 騒音・振動防止のための路面改善の促進

 沿道に住居が連担している地域で、通行車両による騒音レベルが3年連続して環境基準を超えている箇所に、低騒音舗装を敷設し、騒音の低減を図ります。
 通常のアスファルト舗装が空隙率4%程度であるのに対し、低騒音舗装は空隙率が20%前後の排水性舗装(*注15)を使用することで、自動車騒音が吸収され、騒音レベルが3デシベル程度低下します。
 本事業は平成10年度から実施しています。

(*注15)排水性舗装:骨材の粒度の粗い特殊な舗装で、排水性に優れ、車両の騒音低減効果もあります。

第3項 悪臭の防止

1 悪臭防止法の管理運営

 「悪臭防止法」では、事業活動に伴って発生する悪臭について必要な規制を行うことによって、生活環境を保全し、県民の健康を保護することを目的としています。規制の方法として、アンモニア(*注16)等の特定の22物質を対象とした物質濃度規制と、複合臭(*注17)や未規制物質にも対応できる臭気指数規制の2種類あり、いずれかにより悪臭の排出等が規制されています。それぞれの規制値は、地域の実情を考慮して地域ごとに定められています。
 悪臭に関する苦情は、物質濃度規制では解決できない事例や、規制地域外での事例が多い状況です。
 そのため、本県では県内全市町村で臭気指数による規制を行うことを基本方針に、市町村と調整を行ってきました。
 平成28年3月31日現在、長野原町を除く12市14町8村全域が臭気指数規制地域として指定されています。
 今後とも、県内全市町村、全区域への臭気指数規制導入を目指し、調整を行っていきます。

(*注16)アンモニア:刺激臭のある無色の気体で、圧縮することによって常温でも簡単に液化します。畜産、鶏糞乾燥、し尿処理場などが主な発生源で、粘膜刺激、呼吸器刺激などの作用があります。し尿のような臭いがします。
(*注17)複合臭:複数の原因物質が混ざり合うことによって、様々な相互作用が起こります。例えば、別々に嗅ぐとそれほど強く感じない臭いでも、混ぜて嗅ぐと強く感じることがあります。このような相互作用が複雑に絡み合って、1つの臭いが作り出されます(例:香水)。人間の嗅覚は、このような相互作用を全て加味して、総合的に臭いを感じ取っています。

2 悪臭の業務を行う市町村に対する側面支援

 臭気指数規制を導入した際に必要となる実務知識の取得のため、市町村職員を対象に、平成16年度から「嗅覚測定法研修会」を開催するなど、実際に規制の運用にあたる市町村の支援に努めています。
 さらに、規制地域内の事業者に対しては、説明会の実施等によって制度の普及啓発に努めるとともに、今後も地域の実情を十分に考慮しながら、悪臭防止対策を推進していきます。

3 畜産公害防止対策の推進

 畜産経営に関する公害苦情の発生状況(平成26年7月1日から平成27年6月30日)は、表2-4-2-18に示すとおりでした。県内の畜産経営に関する苦情の約7割が悪臭関連であり、畜産業の健全な発展のためには悪臭防止対策が重要です。

(1)臭気対策

ア 家畜排せつ物臭気対策モデル事業(平成21~25年度)
 本県で開発した脱臭装置を平成21年度に11か所設置し、平成25年度まで実証データを収集し、その効果を確認するとともに、地域と調和した畜産経営を確立するため、普及を図ってきました。

イ 家畜排せつ物臭気対策事業(平成22~24年度)
 本県で開発した脱臭装置等の導入費を補助し、畜産臭気の問題を抱えている地域の生活環境を改善する事業を平成22年度から開始し、平成22年度には利根沼田地域に脱臭装置を2か所設置しました。また、平成24年度には中部地域に脱臭装置を2か所と常緑樹の生垣を1か所設置しました。

ウ 畜産経営環境周辺整備支援事業(平成25~27年度)
 平成25年度には「水質汚濁防止法」の硝酸性窒素等及び窒素・燐の暫定排水基準の改正に対応するため、事業を拡充し、高度処理装置等の追加設置に対する排水処理対策メニューを追加しました。また、平成26年度は中部地域で臭気対策耐久資材1か所、排水処理施設1か所の整備を実施しました。さらに平成27年度は中部地域で脱臭装置1か所、排水処理施設1か所、西部地域で臭気対策耐久資材1か所、東吾妻町で排水対策1か所で事業を実施しました。

(2)畜産環境保全

ア バイオマス利活用推進(平成18年度~)
 地域の環境保全を図るため、畜産に関する苦情の実態調査及び巡回指導等を実施しました。
 また、堆肥流通を促進するため、堆肥施用による実証展示ほを3地域・4カ所に設置し、地域の特徴を活かした資源循環型農業の推進を図りました。
 「悪臭防止法」や「水質汚濁防止法」に対応するため、臭気指数測定や尿汚水浄化処理施設維持管理の研修会を開催するとともに、環境保全に対する意識向上を図るための冊子を作成・配布しました。

4 畜舎臭気低減技術の開発

(1)畜舎臭気の特徴

 畜舎臭気の主な原因は、家畜が排せつするふん尿です。家畜によって餌や消化生理が異なるため、発生する臭気も異なります。牛ふんの主な臭気成分はアンモニアですが、豚ぷんではプロピオン酸、酪酸、吉草酸などの低級脂肪酸も発生します。鶏ふんではアンモニア以外にアミン類も発生します。
 臭気成分のうち、アンモニアは百万分の1の濃度(ppm)で悪臭として感じます。一方、低級脂肪酸では十億分の1(ppb)でも悪臭として感じるため、臭気を低減させるのは大変難しくなります。また、畜舎のほとんどは開放型となっているため、畜舎全面から臭気が拡散します。加えて、臭気の発生や広がり方は気象条件によっても異なるため、対策はさらに難しくなります。
 畜産試験場では、こうした畜産臭気への対策として、低コストな臭気低減技術及び装置を研究しています。

(2)軽石脱臭装置

 家畜ふんを堆肥化処理する時には、アンモニア主体の臭気が発生します。こうした臭気を脱臭するため、軽石を用いた脱臭装置を開発しました。
 この装置は、堆肥化処理施設で発生した高濃度臭気を軽石を充填した脱臭槽に送り込み、アンモニアを捕集するとともに、軽石に生息させたアンモニア酸化細菌により亜硝酸や硝酸に変化させることで、継続的な脱臭を行います。この装置を用いて、アンモニア濃度400ppm以下の臭気を90%以上除去できます。

(3)モミガラを利用した低コスト脱臭装置の開発

 前述の軽石脱臭装置は、比較的大規模の畜産農家を対象としており、施設の設置・運転には費用がかかります。そこで、中小規模の畜産農家でも導入しやすい低コストな脱臭装置を開発しています。
 現在、脱臭槽に充填する資材として安価で手に入りやすいモミガラを利用し、モミガラに生息させた微生物により脱臭を行う装置の開発に取り組んでいます。
 小規模試験では、堆肥化処理施設から発生する平均20ppm程度のアンモニアを90%以上除去することができました。また、畜舎において悪臭が発生しやすい場所であるバーンクリーナー(畜舎内の家畜ふんを集めトラックまで搬出する装置)の搬出部に本装置を設置し、脱臭効果があることを確認しました。
 しかし、冬季には脱臭能力が低下するので、年間を通して安定した除去能力が得られるように改良を進めています。

(4)ネットによる畜舎臭気低減技術の開発

 密閉された堆肥化処理施設や畜舎の臭気は、脱臭装置を利用することで対応できますが、ほとんどの畜舎や堆肥舎は開放型であるため、前述のような脱臭装置は利用できません。
 そこで、現在、開放型の畜舎や堆肥舎に化学繊維のネットを設置して脱臭する方法を検討しています。
 実験施設での小規模試験では、5×5ミリメートルの網目のネットをクエン酸水溶液で浸潤させることにより、ネット通過後のアンモニア臭気を約40%低減させることができました。本装置について改良を行い、実際の畜産施設で安定した脱臭が可能な装置の開発を目指しています。

(5)三県連携による「畜産臭気対策マニュアル」の発行

 三県(群馬・新潟・埼玉)で連携して畜産環境において解決すべき重要な研究課題を整理し、畜産臭気への対策技術について検討しました。その成果として、畜産臭気の発生メカニズムや特徴ならびに三県におけるこれまでの研究成果などを取りまとめた「畜産臭気対策マニュアル」を発行しました。
 マニュアルを関係機関に配布して活用を図るとともに、三県が技術連携し、地域の実情に即した臭気対策技術の普及推進を図っています。

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