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第4章 生活環境の保全と創造

更新日:2020年10月2日 印刷ページ表示

第1節 水環境地盤環境の保全土壌汚染対策の推進

公共用水域水質測定調査環境基準達成率

河川(BOD75%値)85.0%(34/40地点)
湖沼(COD75%値)58.3%(7/12地点)
10ミリメートル以上の地盤沈下面積 0.00平方キロメートル
汚水処理人口普及率(2019[平成31]年3月末)81.3%

第1項 水質汚濁地下水汚染の防止

1 河川湖沼地下水の水質測定の実施と公表【環境保全課】
(1)河川湖沼の水質測定の実施と結果
「水質汚濁防止法」に基づき都道府県は公共用水域(*注1)の水質の汚濁状況を監視する必要があります。
本県では国土交通省や各市など関係機関と協同で主要な河川と湖沼の水質を測定し環境基準の達成状況を確認しています。
2019(令和元)年度は81河川12湖沼における218地点で水質の測定を行いました。
測定項目は環境基準(*注2)が定められている「人の健康の保護に関する項目(*注3)」(カドミウムシアンなど)と「生活環境の保全に関する項目(*注4)」(BODCODなど)「水生生物の保全に関する項目(*注5)」(全亜鉛など)が中心です。
ア 人の健康の保護に関する項目
測定を行った全163地点で環境基準を達成しました。
イ 生活環境の保全に関する項目
環境基準の類型が指定(*注6)されている21河川38水域における40地点と12湖沼の12地点計52地点(環境基準点(*注7))について評価を行いました。
a 河川
40か所の環境基準点の達成状況をBODで評価を行うと34地点で環境基準を達成し達成率は85.0%で長期的にはゆるやかな改善傾向がみられます。水域別にみると全38水域のうち環境基準を達成している水域は32水域であり(*注8)水域単位での達成率は84.2%(参考値)となります。環境基準を達成していない河川は前年度と同様に県央東毛地域の利根川中流の支川と渡良瀬川下流の支川に多く見られました。
b 湖沼
12か所の湖沼の環境基準点の達成状況をCODで評価を行うと7湖沼で環境基準を達成し達成率は58.3%でした。なお天然湖沼は3湖沼全てで環境基準を達成していませんが自然由来の有機物が原因と考えられます。
ウ 水生生物の保全に関する項目
a 河川
環境基準の類型が指定されている21河川26水域の41地点のうち39地点で環境基準を達成しました(達成率95.1%)。
水域単位では全26水域中24水域で環境基準を達成しています(達成率92.3%:参考値)。
b 湖沼
環境基準の類型が指定されている全11湖沼で環境基準を達成しました(達成率100%)。
エ 渋川地区の水銀環境汚染調査
渋川市には県内の代表的な化学工場などがあり過去にはこれらの工場でも水銀を使った生産活動が行われていたことから1973(昭和48)年以来環境調査を続けています。
2019(令和元)年度も渋川市大崎周辺の利根川の水質と底質について「総水銀(*注9)」を調査しました。水質は利根川の2地点と工場排水路の1地点についてそれぞれ年2回調査しましたがいずれの地点でも環境基準値(0.0005ミリグラム/リットル)及び排水基準値(0.005ミリグラム/リットル)を下回りました。
底質については利根川の2地点で年1回調べたところいずれの地点でも底質の暫定除去基準(25ppm)を下回りました。

BOD(生物化学的酸素要求量)
水中の微生物が汚濁物(有機物)を分解するときに消費する酸素の量で単位はミリグラム/リットルで表します。河川水排水などの汚濁の程度を示すもので数値が大きいほど水が汚れていることを示します。

COD(化学的酸素要求量)
酸化剤(過マンガン酸カリウム)が水中の汚濁物を酸化する時に消費する酸素の量で単位はミリグラム/リットルで表します。湖沼や海の汚れを測る代表的な目安として使われます。この値が大きいほど水が汚れていることを示します。

(*注1)公共用水域:河川湖沼港湾沿岸海域その他公共の用に供される水域及びこれに接続する公共溝きょかんがい用水路その他公共の用に供される水路(公共下水道及び流域下水道であって終末処理場を有しているものを除く。)です。
(*注2)環境基準:人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準で環境施策に係る行政上の目標のことです。大気汚染水質汚濁土壌汚染騒音について定められています。
(*注3)人の健康の保護に関する項目:公共用水域の水質汚濁に係る環境基準で人の健康を保護する上で維持することが望ましい基準として設定された項目です。これにはシアンをはじめ蓄積性のある重金属類のカドミウム鉛クロム(6価)砒素水銀アルキル水銀と人工的に作り出されたPCB及びトリクロロエチレン等の27項目があります。基準値は項目ごとに定められています。
(*注4)生活環境の保全に関する項目:生活環境の保全に関する項目として定められたものです。水質汚濁に関してはpHBODCODSSDO大腸菌群数全窒素全りん等の10項目について河川湖沼など公共用水域の水域類型ごとに環境基準が定められています。
(*注5)水生生物の保全に関する項目:生活環境を構成する有用な水生生物やその餌生物の生息や生育環境を保全するため平成15年に定められました。
(*注6)類型指定:河川湖沼及び海域別にそれぞれの利水目的に応じて水域の類型が定められています。
(*注7)環境基準点:環境基準の水域類型指定が行われた水域において環境基準の達成状況を把握するための地点です。
(*注8)水域単位による環境基準達成の評価:同一水域に複数の環境基準点が存在する場合その水域内の全ての環境基準点が環境基準を達成したときにその水域が環境基準を達成したとみなします。水域単位による達成率の評価はこの白書では参考値として扱います。また群馬県の湖沼では1水域に1環境基準点が設定されており湖沼の場合には達成した水域数で評価した場合と達成した環境基準点数で評価した場合の環境基準の達成率は等しくなります。

(2)地下水の水質測定の実施と結果
地下水は水温の変化が少なく一般に水質も良好であるため貴重な水資源として水道農業及び工業などに広く利用されていますがいったん有害物質に汚染されるとその回復は困難で影響が長期間持続するなどの特徴があります。
有害物質による地下水汚染の未然防止を図るため「水質汚濁防止法」では有害物質を含む汚水等の地下への浸透を禁止する措置や地下水の水質の監視測定体制の整備などの規定が設けられています。
県内の地下水の水質監視は「水質汚濁防止法」の規定により作成した水質測定計画に基づき県及び同法で定める4市(前橋市高崎市伊勢崎市及び太田市)が行っています。
ア 地下水質概況調査
a 調査方法等
県内の地下水の状況を把握するため全県を4キロメートル四方の151区画に区分し1区画につき1本(県99前橋市14高崎市17伊勢崎市9太田市12)の井戸について調査しました。
県が実施する99井戸では地下水環境基準が定められている項目をローリング方式と定点方式で調査をしました。ローリング方式では過去の調査結果等を勘案し対象項目をA~Eの5段階に区分し各区画の井戸における調査項目を選択しています。ひとつの井戸で複数の項目を調査することもあります。定点方式では鉛砒素並びに硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素を調査しました。
2019(令和元)年度の地下水質概況調査ではローリング方式により項目Aを97井戸で項目Bを47井戸で項目Cを23井戸で項目Dを19井戸で項目Eを10井戸で調査し定点方式により2井戸を調査しました。
なお4市実施分の計52井戸では全ての項目を調査しました。
b 2019(令和元)年度の結果
21本の井戸で硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素(*注11)が1本の井戸で鉛が1本の井戸で砒素が1本の井戸でテトラクロロエチレンが環境基準を超過して検出されました。
2019(令和元)年度の地下水環境基準達成率は84.8%(128/151地点)でした。
イ 地下水質継続監視調査
概況調査等で地下水質が環境基準を超過した地区の汚染の推移を監視するため継続的に調査をしています。
過去の概況調査でトリクロロエチレン等の有害物質が環境基準値を超過して検出された前橋市3地区高崎市2地区伊勢崎市2地区桐生市1地区渋川市1地区館林市1地区富岡市1地区及び藤岡市1地区の計12地区で汚染状況の監視のための継続監視調査を実施しています。その結果汚染物質の濃度は概ね前年並みでした。
また2007(平成19)年度からは硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素について20井戸を選定して継続監視調査を実施していますが基準値以下になる井戸があるなど濃度は低下傾向となっています。そこで2014(平成26)年度に複数年基準値を下回った井戸のモニタリングを終了し新たに著しい汚染が確認された井戸においてモニタリングを開始しました。
ウ 周辺(終了)調査
継続監視調査において環境基準を下回る状態が継続している地区の汚染状況を確認し同地区の継続監視調査の終了を検討するため実施するものです。
2019(令和元)年度は終了調査は行っていませんが環境基準を継続して下回っている地域については順次周辺調査を行うこととしています。

エ 群馬県地下水質改善対策連絡協議会
2003(平成15)年度に学識経験者と関係機関の職員を構成員とする「地下水質改善対策連絡協議会」を設置しました。大間々扇状地をモデルに硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水の汚濁機構について検討を行い農業畜産生活排水等による複合的な影響を受けているものと推定されました。
現在それぞれの汚染原因の影響を確認できる地点を選定し汚染の推移について継続的に調査しています。

(*注11)硝酸性窒素亜硝酸性窒素:生活排水やし尿の汚染があったり田畑の窒素肥料の影響などがあると地下水中に多量に含まれていることがあります。

2 水質汚濁事故の迅速な情報伝達と関係機関との連携【環境保全課】
公共用水域で発生した水質汚濁事故については関係機関が連携して原因調査と被害拡大防止策を講じるとともに速やかに下流域の利水関係機関に通報します。

(1)水質汚濁事故の発生状況
2019(令和元)年度の水質汚濁事故は67件です。水質汚濁事故は目視により発見されるケースがほとんどでその中でも油の流出事故が多くなっています。事故の発生原因としては人的ミスや交通事故が多くなっていますが原因不明の事故も多い状況です。そのほかには自然災害に起因するものも含まれています。
原因者が判明すれば事故の再発を防ぐなどの指導を行っています。
水質汚濁物質が河川等の公共用水域に流出すると下流の浄水場が取水を停止するなど利水障害を起こしたり水生生物がへい死したりする場合があります。
そのため水質汚濁事故を極力未然に防止できるよう県民や事業者へ啓発することが重要となります。

(2)特定指定物質の適正管理制度
2012(平成24)年5月に利根川水系の複数の浄水場で水道水質基準を超える有害なホルムアルデヒドが検出され流域の都県で取水制限等が実施されるという大規模な水質事故が発生しました。
これを受けて「群馬県の生活環境を保全する条例」の一部改正を行い水道水への影響が大きい化学物質(特定指定物質)についての適正管理制度を創設し2013(平成25)年4月から施行しました。

3 工場事業場への立入指導の実施【環境保全課】
「水質汚濁防止法」及び「群馬県の生活環境を保全する条例」では特定事業場等(*注12)に対し排水濃度の基準を設けて排出水を規制しています。
さらに県では「水質汚濁防止法」よりも厳しい排水基準(上乗せ基準(*注13))を設定する条例(排水基準上乗せ条例)を設け規制対象を排水量10平方メートル/日以上の特定事業場に拡大し基準値もより厳しいものとしています。
また2006(平成18)年度に「群馬県の生活環境を保全する条例」を改正施行しそれまで排水濃度の基準の対象となっていなかった特定事業場以外の工場事業場に対しても一部の項目で排水濃度の基準を設け水質汚濁物質の排出抑制を図っています。

4 生活排水対策に向けた広報【環境保全課】
水質環境基準(BOD75%値)を達成できない河川の多くは市街地内を流下し河川流量が少ない割には生活排水の流入する割合が多いという特徴があります。
2019(令和元)年度はぐんまこどもの国児童会館で開催されたぐんまウォーターフェアで生活排水による川の汚れの防止について啓発を行いました。

5 家畜排せつ物の取扱いの適正化指導【畜産課】
「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」(以下家畜排せつ物法)が完全施行され畜産農家は家畜排せつ物の管理について法律の基準を遵守することが義務付けられました。これに基づき家畜排せつ物処理施設を整備する事業を実施し適正な管理を指導してきました。
また同法に基づく国の基本方針変更に伴い2016(平成28)年3月に「群馬県家畜排せつ物利用促進プラン」として見直し2025(令和7)年を目標年度として堆肥の利活用を積極的に進めることにしました。
畜産農家には家畜排せつ物の適正管理に加え耕種農家と連携し家畜ふん堆肥の農地への還元を基本とした有機質資源としての有効活用を図ることを指導しました。

(1)地域と調和した畜産環境確立
ア 耕畜連携堆肥流通支援事業(2012[平成24]年度~2016[平成28]年度)
家畜排せつ物法に対応するため家畜排せつ物処理施設を整備し畜産農家の周辺環境の保全を支援してきましたが2012(平成24)年度からは地域における資源循環型農業の推進及び畜産経営の健全な発展を図ることを目的とし堆肥の流通利用を促進するために必要な機械等の整備を支援する事業を開始し2013(平成25)年度は西部地域3か所東部地域1か所2014(平成26)年度は中部地域1か所西部地域1か所で機械整備を実施しました。また2015(平成27)年度からは推進事業に移行し耕種農家の堆肥利用に関する調査耕畜連携先進地視察堆肥利用の研修会を行うとともに耕種農家向け啓発資料の作成配布やホームページを利用した堆肥生産者情報の公開等を行い堆肥利用の促進を図りました。
イ 畜産環境リース整備促進事業(2002[平成14]年度~2016[平成28]年度)
(一財)畜産環境整備機構が実施した畜産環境整備リース事業の特別緊急対策(1/2補助付きリース事業)を利用し畜産農家が設置したふん尿処理施設や機械等のリース代金について附加貸付料の一部を助成しました。

6 鶴生田川(城沼)水質浄化対策【河川課】
河川の水質を悪化させる主な原因として生活雑排水の河川や湖沼への流入が問題視されています。
特に都市部では生活雑排水の流入が多く水質は悪化する傾向にあります。この生活雑排水を河川へ流入させないため公共下水道や浄化槽の整備が行われていますが計画が長期にわたることや進捗が自治体によって異なることから悪臭等生活環境にも影響するほど水質悪化が著しい河川においてはその対策が急務となっています。
県では館林市の市街地を流下し水質悪化の著しい一級河川鶴生田川において河川の水を直接浄化する水質浄化対策に取り組んでいます。
浄化対策としては多々良沼からの浄化用水の導入(1994[平成6]年度完成)鶴生田川及び城沼の底泥浚渫(1992[平成4]~2004[平成16]年度)鶴生田川の礫間浄化施設(2001[平成13]年度完成)城沼北岸の植生浄化施設(2004[平成16]年度完成)等を実施しその結果鶴生田川本川では水質が改善傾向にあります。
一方城沼では近年アオコの発生が見られていませんが未だ水質目標を達成できない状況であることから2019(令和元)年度は引き続き水質調査や水質浄化施設を利用し水質浄化対策に取り組みました。

7 下水道合併処理浄化槽農業集落排水処理施設等の汚水処理施設の整備【下水環境課】
川や湖を汚す大きな原因として家庭からの汚水が直接川や湖に流れ込んでいることが挙げられます。
川や湖などの汚れをなくすには家庭からの汚水をきれいにして川や湖に戻すことが大切です。
汚水を処理する施設には下水道農業集落排水合併処理浄化槽やコミュニティプラントなどがあります。しかし無秩序にこれらの施設をつくっても効率的に地域の汚水を浄化することはできません。
そこで県では市町村の協力のもと効率的な汚水処理施設の整備を行うために1998(平成10)年3月に「群馬県汚水処理計画」を策定しました。その後財政状況等の社会環境の変化さらに将来人口の予測や使用水量などの要因の変化に合わせ2004(平成16)年度2008(平成20)年度2012(平成24)年度2017(平成29)年度にそれぞれ見直しを行ってきました。
これにより各施設の整備を進めると汚水処理人口普及率(*注14)が現在81.3%(2018[平成30]年度末)であるものが中期計画終了後(概ね2027[令和9]年頃)には約92%になります。
また川や湖に流れ込む汚濁負荷量も中期計画終了後には高度経済成長期前の1955[昭和30]年頃の汚濁負荷量を下回ることになり水質改善がなされます。
よりよい水環境を一日も早く実現するためにも市町村と協力しながら汚水処理施設の効率的な整備を本計画に基づいて推進します。

8 流域下水道建設【下水環境課】
流域下水道は二つ以上の市町村の公共下水道から汚水を集めて処理するもので主に公共用水域の水質保全を効率的に行うことを目的として都道府県が設置管理しています。本県では以下の整備を進めています。
ア 利根川上流流域下水道
沼田市みなかみ町を処理区域とする奥利根処理区及び前橋市高崎市を含む10市町村を処理区域とする県央処理区で事業を実施中です。奥利根処理区については1981(昭和56)年4月から県央処理区については1987(昭和62)年10月から供用を開始しています。
イ 東毛流域下水道
太田市千代田町大泉町邑楽町を処理区域とする西邑楽処理区桐生市みどり市を処理区域とする桐生処理区太田市を処理区域とする新田処理区伊勢崎市太田市を処理区域とする佐波処理区で事業を実施しています。
西邑楽処理区は2000(平成12)年4月から新田処理区は2006(平成18)年7月から佐波処理区は2008(平成20)年9月から供用を開始しています。
また桐生処理区については桐生市公共下水道(広沢処理区)として整備された施設を1991(平成3)年度に桐生市のほか周辺2町1村を新たに取り込んだ事業に着手し1995(平成7)年4月から流域下水道(桐生処理区)として供用を開始しています。
(*注14)汚水処理人口普及率:下水道処理のほか農業集落排水処理施設合併処理浄化槽コミュニティプラント処理施設が整備されている人口が県の行政人口に対して占める割合のことです。

9 市町村下水道事業費補助(公共下水道の整備)【下水環境課】
公共下水道は家庭及び事業場からの下水を排除し又は処理するために各市町村が設置管理する下水道です。現在29市町村で公共下水道事業を実施しています。
県では県立公園内に位置する赤城大沼及び榛名湖の汚水処理施設の更新に重点的に支援を行うとともに下水道処理人口普及率の向上による公共用水域の水質を改善するため市町村に対して管渠整備費の一部を補助しています。
2018(平成30)年度末での本県の下水道処理人口普及率(処理区域内人口÷行政人口)は54.2%で今後も一層の整備を推進する必要があります。

10 農業集落排水事業費補助【下水環境課】
「農業集落排水事業」は農村下水道とも呼ばれ1集落から複数集落を単位として実施する農村の集落形態に応じた比較的小規模な下水道事業です。
この事業は農村地域を対象に農業用水の水質改善と生活環境の改善を図るとともに河川等の公共用水域の水質改善を図るためし尿や生活雑排水の処理を行うもので処理された水を農業用水として再利用したり処理の過程で発生した汚泥を肥料として農業に利用したり資源循環型社会の構築にも役立っています。
2018(平成30)年度末までに117地区で事業に着手し全ての地区が完了しました。

11 浄化槽設置整備事業費補助【下水環境課】
私たちの身近な水路や小川には生活雑排水(台所風呂洗濯などの汚水)が流れ込んでおりこれが河川や湖沼の汚濁の主要な原因になっています。
公共用水域の水質を保全していくためにはし尿のみを処理する単独処理浄化槽ではなくし尿と併せて生活雑排水を処理できる合併処理浄化槽を計画的に整備していくことが欠かせません。
本県では1987(昭和62)年度から市町村が実施する「浄化槽設置整備事業」に対して県費補助制度を設け単独処理浄化槽やくみ取り槽から合併処理浄化槽への転換(切り換え)の促進を図っています。

12 浄化槽市町村整備推進事業費補助【下水環境課】
市町村が自ら実施主体となって合併処理浄化槽を整備し維持管理する「浄化槽市町村整備推進事業」についても1996(平成8)年度から県費補助制度を設けその促進を図っています。

13 浄化槽エコ補助金事業費補助【下水環境課】
単独処理浄化槽等を使用している個人等が合併処理浄化槽へ転換した場合が対象となります。原則として単独処理浄化槽やくみ取り槽を撤去処分等するものが対象となり「浄化槽設置整備事業費補助」に上乗せして10万円/基を2011(平成23)年度から補助しています。
なお2000(平成12)年6月に「浄化槽法」が改正され2001(平成13)年度から下水道予定処理区域を除いて浄化槽を設置する場合は合併処理浄化槽の設置が義務化されたほか既設の単独処理浄化槽の設置者に対しても合併処理浄化槽への転換努力が規定されています。

14 浄化槽の維持管理の促進【廃棄物リサイクル課】
浄化槽は主に微生物の力を使ってし尿や生活雑排水を浄化しきれいになった水を放流するものです。
浄化槽の機能を生かすための維持管理として

  1. 浄化槽の保守点検
  2. 浄化槽の清掃
  3. 浄化槽の定期的な検査の受検

が必要です。
浄化槽の定期的な検査(「浄化槽法」第11条に基づく検査(11条検査))は浄化槽管理者が毎年受検することが義務付けられていることから県では11条検査を受検していない方を対象に受検指導等を行いました。
また県では11条検査の受検を促進するため50人槽までの小規模な浄化槽の11条検査について保守点検と併せて法定検査を行う「効率化11条検査」の制度を設けています。
これらの効果により11条検査の受検率は2019(令和元)年度で74.8%となり全国平均の43.1%(2018[平成30]年度)を大きく上回りました。

第2項 地盤沈下の防止

1 一級水準測量による地盤変動調査の実施と結果の公表【環境保全課】
地盤沈下とは過剰な地下水の採取によって主に粘土層が収縮するために生じる現象です。
地下水は雨水や河川水等の地下浸透により補給されますがこの補給に見合う以上の汲み上げが行われることで帯水層の水圧が低下(地下水位が低下)し粘土層に含まれる水(間隙水)が帯水層に排出され粘土層が収縮します。そのため地表部では地盤沈下として認められます。
地盤沈下は比較的緩慢な現象で徐々に進行しほかの公害と異なりいったん地盤沈下が起こると元に戻ることはありません。
県では「一級水準測量」と「地下水位計地盤沈下計による観測」を行いこれら地盤の変動を把握しています。

(1)一級水準測量(*注15)
県では地盤変動の状況を経年的に調査するため1975(昭和50)年度から一級水準測量を実施しています。広域的な測量を行うことによりどの場所でどれくらい地盤が変動しているかを把握することができます。
2019(令和元)年度は県の平坦地域10市町の水準点134点測量延長286キロメートルの規模で実施しました。
2019(令和元)年の地盤変動量は2020(令和2)年1月1日現在の標高(T.P.)(*注)16から2019(平成31)年1月1日現在の標高(T.P.)を差し引いて求めたものです。
2019(令和元)年度における観測の結果10ミリメートル以上沈下した地域はありませんでした。

(2)地下水位計地盤沈下計による観測
地盤沈下は地下水の過剰な汲み上げが原因とされており地盤沈下の現状を把握するためには地下水位の変化と地盤沈下量を観測分析することが有効です。このため県では一級水準測量に加え県で管理する地下水位観測井に地盤沈下計を併設し地下水位と地盤沈下量(地層収縮量)を調査しています。
2019(令和元)年度は地下水位観測井(地下水位のみ観測)15井地盤沈下観測井(地下水位と地盤沈下量を観測)5井の合計20井で観測を行いました。

2 地下水採取状況の把握と結果の公表【環境保全課】
「群馬県の生活環境を保全する条例」により一定規模以上の井戸を揚水特定施設として設置の届出と地下水採取量の報告を義務付けています。

3 地下水から表流水への転換の推進【(企)水道課】
県では高度経済成長の過程で工場等による地下水採取量が増大したため特に東部地域の地盤沈下が著しく進行したと考えられています。
こうした状況を回避するため県企業局では地下水保全(地盤沈下防止)対策として東毛工業用水道事業(給水区域:伊勢崎市太田市館林市板倉町明和町千代田町大泉町邑楽町)を計画事業化しました。
2019(令和元)年度において地下水から表流水への新たな転換はありませんが引き続き表流水への転換を進め地盤沈下の防止に努めます。

第3項 土壌汚染対策の推進

1 有害物質使用事業場に対する立入指導【環境保全課】
土壌地下水は一度汚染されてしまうと元の状態に戻すために多くの時間と費用が必要となり原因事業者を主として多大な負担が発生します。そのため土壌や地下水の汚染は未然に防止することが重要です。2012(平成24)年6月に改正「水質汚濁防止法」が施行され新たに有害物質の地下浸透防止のための構造基準等について遵守義務が創設されました。県では構造基準等の適合状況を立入調査により確認し指導助言を行っています。
また「群馬県の生活環境を保全する条例」では「有害物質を使用する事業者は定期点検や事故時に有害物質が地下に浸透するおそれがあれば調査をして知事に報告する。」ことを義務付けています。

2 市街地における土壌汚染対策の推進【環境保全課】
(1)土壌汚染対策法
土壌の汚染状況の把握や汚染による人の健康被害の防止に関する措置を定めた「土壌汚染対策法」により土地所有者等に対し一定の契機をとらえた土壌汚染状況調査が義務付けられています。
この調査により土壌中に一定の基準(指定基準)を超える有害物質が検出された土地は県知事政令市長(前橋市高崎市伊勢崎市太田市)により区域指定され土地所有者等は汚染状況に応じ汚染の除去等の措置を実施しなければなりません。

(2)土地改変時の届出
「土壌汚染対策法」により一定規模以上の土地の改変時には届出が義務付けられており届出における土地に土壌汚染のおそれがみられる場合には調査命令が発出されます。

(3)坂東工業団地周辺土壌地下水汚染問題
坂東工業団地(渋川市北橘町)周辺においては昭和30年代後半に埋設されたカーバイド滓を原因とする土壌汚染によってテトラクロロエチレン等による地下水汚染が確認されています。
この事案に関して健康被害が生じるおそれがないよう県は周辺地下水のモニタリングを継続しています。

第2節 大気環境の保全騒音振動悪臭の防止

環境基準達成率

一般環境大気測定局
二酸化硫黄 100%(13/13局)
二酸化窒素 100%(14/14局)
浮遊粒子状物質 100%(18/18局)
一酸化炭素 100%(1/1局)
光化学オキシダント 0%(0/18局)
微小粒子状物質 100%(10/10局)

自動車排出ガス測定局
二酸化窒素 100%(8/8局)
浮遊粒子状物質 100%(7/7局)
一酸化炭素 100%(8/8局)
微小粒子状物質 100%(1/1局)
騒音 環境騒音 90.4%(123/136地点)
自動車騒音 87.0%(20/23地点)
道路交通騒音面的評価 90.5%
高速道路 100%(10/10地点)
新幹線 53.8%(7/13地点)

第1項 大気汚染の防止

1 大気汚染監視測定体制【環境保全課】
(1)大気汚染監視測定体制
大気汚染の状況を正確に把握しその汚染が著しくなった場合に人の健康等に被害が生じないよう県内各地の測定局に自動測定機を設置し常時監視を行っています。
ア 一般環境大気測定局(一般局)
県では10市3町1村に16測定局を設置し二酸化硫黄二酸化窒素浮遊粒子状物質光化学オキシダントなどの測定を実施しています。
このほかに前橋市が2測定局高崎市が4測定局で測定を実施しています。
イ 自動車排出ガス測定局(自排局)
自排局は一般局と比較して自動車排出ガスの影響を調べるため交通量の多い道路沿道に設置しています。現在県では6市に6測定局を設置し二酸化窒素浮遊粒子状物質一酸化炭素微小粒子状物質などの測定を実施しています。
このほかに環境省が1測定局高崎市が1測定局で測定を実施しています。

(*注1)大気汚染監視結果の状況は群馬県大気汚染情報ホームページにてお知らせしています。
(パソコンスマホ版)http://gunma-taiki.jp/
(モバイル版)http://gunma-taiki.jp/mobile

(2)環境基準等
「環境基本法」により人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として大気の汚染に係る環境基準が定められてい
ます。

(3)一般環境大気測定局測定結果
ア 硫黄酸化物
硫黄酸化物は石炭石油などの硫黄分を含む燃料を燃やすことに伴って発生しその大部分は二酸化硫黄として排出されます。そのため濃度の測定は二酸化硫黄で行い環境基準も二酸化硫黄で設定されています。
2019(令和元)年度の測定結果では全測定局で環境基準を達成しています。
イ 窒素酸化物
窒素酸化物は一酸化窒素と二酸化窒素の総称で発生源は工場事業場及び自動車などであり燃料の燃焼過程において空気中の窒素と酸素の反応により生ずるものと燃料中の窒素が酸化されて生ずるものがあります。大部分は一酸化窒素の形で排出され大気中で二酸化窒素に変化します。
窒素酸化物はそれ自体が有害であるばかりでなく光化学オキシダントや酸性雨の原因物質でもあります。
a 二酸化窒素
2019(令和元)年度の測定結果によると全測定局で環境基準を達成しています。
b 一酸化窒素
一酸化窒素については環境基準は定められていません。2019(令和元)年度の測定結果は年平均値0.000~0.002ppm(前年度年平均値0.000~0.002ppm)の範囲となっています。

(*注2)硫黄酸化物:硫黄と酸素とが結合してできます。代表的なものとして二酸化硫黄(亜硫酸ガス)三酸化硫黄(無水硫酸)などがあります。二酸化硫黄は刺激性の強いガスで1~10ppm程度で呼吸機能に影響を及ぼします。主な発生源としては自然界では火山ガス一般環境ではボイラー等での重油の燃焼があります。一部は環境中で硫酸に変化し酸性雨の原因にもなっています。
(*注3)窒素酸化物:窒素と酸素の反応によって生成する窒素酸化物は一酸化窒素二酸化窒素三酸化二窒素及び五酸化二窒素などが知られています。このうち大気汚染の原因になるのは一酸化窒素二酸化窒素です。
(*注4)二酸化窒素:赤褐色の気体で毒性が強く気管支炎やぜんそく肺水腫の原因となるなど呼吸器に影響を及ぼします。
(*注5)一酸化窒素:無色の気体で液化しにくく空気よりやや重く空気又は酸素に触れると赤褐色の二酸化窒素に変わります。血液中のヘモグロビンと結合し酸素供給能力を妨げ中枢神経をマヒさせ貧血症をおこすことがあります。

ウ 浮遊粒子状物質(SPM)(*注6)
SPMは大気中に浮遊する粒子状物質のうち粒径10μm以下のものです。大気中に比較的長時間滞留し私たちの健康に影響を与えると言われています。
2019(令和元)年度の測定結果によると全測定局で環境基準を達成しています。

エ 一酸化炭素(*注7)
一酸化炭素は有機物の不完全燃焼により発生し大気汚染の原因として問題となるのは主に自動車の排出ガスです。
2019(令和元)年度の測定結果によると前橋局における年平均値が0.1ppm(前年度年平均値0.1ppm)となり環境基準を達成しています。
オ 光化学オキシダント(*注8)
光化学オキシダントは工場や自動車から直接排出されるものではなく大気中に存在する様々な大気汚染物質が化学反応をおこして生成されます。こうした大気中で新たに生成する汚染物質を二次汚染物質といいます。
2019(令和元)年度の測定結果によると全測定局で環境基準を達成していません。これは全国的にも同様であり二次汚染物質による大気汚染対策が困難であることを顕著に示しています。夏季を中心にその濃度が著しく上昇し光化学オキシダント注意報(*注9)が発令される場合もあります。近年では大陸からの移流の影響も指摘されており広域的な問題になっています。

(*注6)浮遊粒子状物質(SPM):浮遊粉じんのうち粒径が10μm以下の粒子をいいます。10μm以下の粒子では気道肺胞への付着率が高くなり呼吸器に影響を及ぼします。
(*注7)一酸化炭素:無味無臭無色無刺激の空気より少し軽いガスで有機物の不完全燃焼により発生します。大気汚染として問題となるのは自動車の排出ガスによるものです。このガスを体内に吸入すると血液(赤血球)中のヘモグロビンと結合し酸素供給能力を妨げ中枢神経をマヒさせ貧血症をおこすことがあります。
(*注8)光化学オキシダント:自動車や工場事業場から大気中に排出された窒素酸化物や炭化水素等が太陽光線に含まれる紫外線を受けて化学反応をおこして生成されるオゾンアルデヒドパーオキシアセチルナイトレート等酸化力の強い物質の総称です。その大部分がオゾンで現在ではオゾン濃度を測定して光化学オキシダント濃度と見なしています。高濃度になると粘膜を刺激するため目がチカチカしたり喉がいがらっぽく感じる等の健康被害が発生するおそれがあります。また植物に対しても葉が枯れるなどの影響を及ぼすことがあります。大気中のオキシダント濃度は例年4月から9月の間に高濃度となることが多くまた気象条件としては日差しが強く気温が高く弱い風(群馬県の場合南東風)が吹いているときに高濃度になりやすい傾向があります。
(*注9)光化学オキシダント注意報:大気中のオキシダント濃度が高濃度(0.120ppm以上)となり気象条件等を考慮してその状態が継続すると判断される際に発令します。注意報発令時には健康被害を防止するため屋外での激しい運動を控えるよう教育施設や関係機関に伝達して注意を促します。また汚染状況をなるべく早期に改善させるためオキシダント発生の原因となる汚染物質を大量に排出している工場事業場に対して排出量を抑制するよう要請します。

カ 微小粒子状物質(PM2.5)(*注10)
2009(平成21)年度から新しく環境基準が設けられた項目です。県内では2011(平成23)年度から前橋局で測定を開始し順次測定機を増設し県内10か所で測定を行っています。
2019(令和元)年度の測定結果によると全測定局で環境基準を達成しました。
またPM2.5及び前駆物質の大気中の挙動等を明らかにし効果的なPM2.5対策の検討に資するため2019(令和元)年度は前橋局及び太田局で成分分析を実施しました。
これまでに実施してきたPM2.5の成分分析結果などからわかってきたことは以下のとおりです。
(1)一次生成粒子に比べ二次生成粒子(*注11)の割合が大きい。
(2)秋から冬にかけバイオマス燃焼による割合が大きくなる傾向がある。
(3)有機炭素は四季を通して割合が高く硫酸塩は春から夏にかけて硝酸塩は秋から冬にかけてそれぞれ割合が増加する傾向がある。
しかしながらPM2.5の成分についてはまだ不明な部分も多いためさらに研究を重ねPM2.5の削減対策に役立てていきたいと考えています。

キ 炭化水素(*注12)
環境基準は定められていませんが光化学オキシダントの原因物質(メタンを除く)の一つであるためその低減が必要となっています。
a 非メタン炭化水素
非メタン炭化水素の年平均値の経年変化は図2-4-2-6のとおりで最近は横ばい傾向です。
非メタン炭化水素に係る光化学オキシダント生成防止のための指針には「午前6時から午前9時までの3時間平均値が0.20~0.31 ppmC(*注13)の範囲」と定められています。
2019(令和元)年度の測定結果で各測定局における3時間平均値が0.31ppmCを超えた日数は77日でした。
b メタン
2019(令和元)年度の測定結果は各測定局における年平均値が1.92~2.04ppmCの範囲でした。

(4)自動車排出ガス測定局測定結果
自動車排出ガスに含まれる下記の項目について全体的に自排局は一般局より濃度が高くなっています。しかしその程度は僅かであり県内で大気環境に及ぼす自動車の影響はそれほど大きくない状況です。
ア 窒素酸化物
a 二酸化窒素
2019(令和元)年度の測定結果によると全測定局で環境基準を達成しています。また各測定局における年平均値は0.009~0.017 ppmの範囲となっています。
b 一酸化窒素
2019(令和元)年度の測定結果は各測定局における年平均値が0.002~0.020ppmの範囲でした。
イ 浮遊粒子状物質(SPM)
2019(令和元)年度の測定結果によると全測定局で環境基準を達成しています。また各測定局における年平均値は0.010~0.017mg/平方メートルの範囲となっています。
ウ 一酸化炭素
2019(令和元)年度の測定結果によると全測定局で環境基準を達成しています。また各測定局における年平均値は0.2~0.3ppmの範囲となっています。
エ 炭化水素
a 非メタン炭化水素
2019(令和元)年度の測定結果は各測定局における年平均値が0.10~0.17ppmCの範囲でした。
また各測定局における3時間平均値が0.31ppmCを超えた日数は40日でした。
b メタン
2019(令和元)年度の測定結果は各測定局における年平均値が1.94~2.02ppmCの範囲でした。
オ 微小粒子状物質(PM2.5)
国設前橋局における年平均値は9.9μg/平方メートル日平均値の98%値は25.1μg/平方メートルで環境基準を達成できました。

(*注)10 微小粒子状物質(PM2.5):浮遊粒子状物質よりさらに細かく粒径が2.5μm以下の粒子です。粒子が細かいため肺の奥深くまで入りやすく肺ガンや呼吸器系への影響だけでなく循環器系への影響も懸念されています。このため類似項目の浮遊粒子状物質と比較して非常に厳しい環境基準値が設定されています。
(*注11)二次生成粒子:ボイラーや自動車などから直接大気中に排出された粒子状物質を「一次生成粒子」大気中で原因物質から光化学反応などにより粒子化したものを「二次生成粒子」といいます。
(*注12)炭化水素:炭素と水素だけからなる有機化合物の総称です。石油石油ガスの主成分であり溶剤塗料医薬品及びプラスチック製品などの原料として使用されています。さらに自動車排出ガスにも含まれています。環境大気中のメタンを除いた炭化水素(非メタン炭化水素)は窒素酸化物とともに光化学オキシダントの主原因物質のため光化学オキシダント生成の防止のために濃度の指針が定められており単位はppmCで示します。

2 大気汚染による健康被害の防止対策【環境保全課】
(1)大気汚染緊急時対策
「大気汚染防止法」では大気の汚染が著しくなり人の健康又は生活環境に係る被害が生ずるおそれがある場合に住民への周知ばい煙排出者への排出量削減の協力要請等の措置を行うよう定められています。
このため光化学オキシダント等の濃度が高くなった際に「群馬県大気汚染緊急時対策実施要綱」に基づき注意報の発令などの措置を行っています。
光化学オキシダント注意報等の発令時にはその旨を関係機関に周知するとともに

  1. 屋外での運動は避け屋内運動に切り替える。
  2. 目やのどに刺激を感じた時は洗眼うがいなどをする。
  3. 症状が深刻な場合は医療機関を受診する等の対策をとるよう注意喚起し ています。

注意報の発令解除は群馬県防災情報ツイッターでもお知らせしています。(https://twitter.com/gunma_bousai)

(2)微小粒子状物質注意喚起基準
PM2.5については2013(平成25)年2月に環境省から「注意喚起のための暫定的な指針」が示されました。
県ではこの指針に基づき判断基準に該当しかつ「日平均値が70μg/平方メートルを超えると見込まれるとき」に県内を6区域に区分し注意喚起を行います。
なお県内ではこれまで注意喚起を行った実績はありません。

(*注)13 ppmC:炭化水素の濃度をメタンの濃度に換算するため炭素原子数を基準として表した100万分の1の単位です。

【判断基準】次のいずれかの場合

  • 各測定局の午前5時6時7時の1時間値の平均値が85μg/平方メートルを超過
  • 各測定局の午前5時から12時の1時間値の平均値が80μg/平方メートルを超過

3 大気環境測定調査(有害大気汚染物質酸性雨等)【環境保全課】
(1)有害大気汚染物質対策
有害大気汚染物質は低濃度でも継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある物質として「大気汚染防止法」に規定されています。現在有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質として247物質がリストアップされています。その中でも健康リスクがある程度高いと考えられる優先取組物質のうち測定方法が確立されている21物質(ダイオキシン類については別途モニタリング調査を実施。)並びに水銀及びその化合物について県内8地点(前橋市1地点高崎市2地点伊勢崎市沼田市渋川市安中市太田市)で調査を行いました。(前橋市内高崎市内は市が実施)
測定結果は環境基準が定められているベンゼン等4物質は全ての測定局で環境基準以下でした。また指針値が定められているアクリロニトリル等9物質についても全ての測定局で指針値以下でした。

(2)酸性雨(*注14)
降水のpHなどを把握するため前橋市郊外(1989[平成元]年度から衛生環境研究所実施)及び赤城山(1996[平成8]年度から環境省実施)で酸性雨調査を実施しています。
2019(令和元)年度の降水について通年観測したところpHは前橋市郊外では4.8~5.9の範囲で平均値は5.2でした(2019[令和元]年度の赤城山のデータは環境省が集計中)。過去のpH年平均値の経年変化は長期的には改善傾向です。

(*注)14 酸性雨:一般的にpHが5.6以下の雨のことです。酸性雨は化石燃料等の燃焼によって生じる硫黄酸化物や窒素酸化物が大気中で硫酸や硝酸などに変化しこれらが雨(雲)に取り込まれることによって起こります。広く酸性雨という場合には雨のほか酸性の霧やガスなどの地上への降下も含みこれらを酸性降下物と呼ぶ場合もあります。酸性雨が湖沼や森林に降り注いだ場合には生態系を破壊する可能性があり都市部では建造物等が腐食してしまうなどの被害が考えられます。

第2項 騒音振動の防止

1 工場事業場等の騒音振動対策【環境保全課】
「騒音規制法」及び「振動規制法」は工場事業場建設作業から発生する騒音振動を規制し自動車騒音振動に対する要請等を定めています。さらに「群馬県の生活環境を保全する条例」においては飲食店営業等から深夜発生する騒音や航空機による商業宣伝放送について規制しているほか「騒音規制法」の規制対象外である3施設(コンクリートブロックマシン製瓶機ダイカストマシン)「振動規制法」の規制対象外である5施設(圧延機械送風機シェイクアウトマシンオシレイティングコンベアダイカストマシン)及び1作業(空気圧縮機を使用する作業)を規制対象としています。

(1)騒音振動について規制する地域の指定
騒音振動公害は発生源の周辺地域に限られ大気汚染や水質汚濁のように広域的に影響を及ぼすおそれがありません。そのため生活実態のない地域について規制する必要がないことから「騒音規制法」及び「振動規制法」では保全する地域を指定しこの指定地域内にある工場事業場等から発生する騒音振動を規制しています。県では全町村について地域指定しています(ただし全域ではありません。また市域は各市において指定しています)。

(2)工場事業場等への指導
騒音振動に係る事務は市町村長の権限となっており(航空機による商業宣伝放送に係る事務を除く。)「騒音規制法」「振動規制法」及び「群馬県の生活環境を保全する条例」に基づく規制基準の遵守及び各種手続の適正な実施は市町村によって工場設置者及び事業者に対して指導されます。

2 環境騒音の測定調査【環境保全課】
(1)環境騒音測定結果
現在騒音に係る環境基準は等価騒音レベル(*注15)をもって評価しています。
時間帯別では夜間の環境基準達成率が低くなっています。

(2)自動車騒音測定結果
ア 一般道路
2019(令和元)年度は県内主要道路沿線の23地点で市町村により自動車騒音の測定が行われました。
環境基準の達成状況及び要請限度の超過状況は表2-4-2-12のとおりです。
測定地点のうち20地点(87%)が昼間及び夜間の時間帯で環境基準を達成しました。
また自動車騒音の要請限度(公安委員会に対する要請及び道路管理者に意見を述べる際に自動車騒音の大きさを判定する基準)を超える地点はありませんでした。

(3)新幹線鉄道騒音振動
上越新幹線北陸新幹線における沿線地域の騒音振動の状況を把握するため新幹線騒音振動測定を行いましたが結果は次のとおりです。
ア 上越新幹線
2019(令和元)年度に実施した新幹線鉄道騒音振動の調査結果及び新幹線鉄道騒音の環境基準達成状況については表2-4-2-14に示すとおりでした。なお測定結果にある25メートル50メートルとの表示はそれぞれ上下線中心線から測定地点までの距離を表しています。
それによると線路に近い25メートル地点における半数以上の測定地点で新幹線鉄道騒音に係る環境基準を超過していました。
また振動については環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策に示されている勧告指針値(70dB)を各測定地点とも下回っていました。
イ 北陸新幹線
2019(令和元)年度に実施した新幹線鉄道騒音の調査結果及び新幹線鉄道騒音の環境基準達成状況については表2-4-2-15に示すとおりでした。
それによると線路に近い25メートル地点で新幹線鉄道騒音に係る環境基準を超過している地点がありました。また振動については環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策に示されている勧告指針値(70dB)を各測定地点とも下回っていました。

(4)道路交通騒音の測定評価
道路交通騒音面的評価は県内全域の主要な道路に面する地域における自動車騒音について原則5年間(最長10年間)で測定評価を行い自動車騒音の環境基準達成状況を調査しています。
この評価は環境省から示されている「自動車騒音常時監視マニュアル」に基づき実施したものです。
なお達成率は道路端から両側50メートルの範囲内にある住居等について推計した騒音レベルを基にその範囲内の住居総戸数のうち環境基準を達成している数の割合を算出した結果です。

(5)防音対策の要望
測定調査等の結果を踏まえ2019(令和元)年度には次の要望を行いました。
ア 高速自動車道沿線騒音対策要望
各高速自動車道における環境基準の達成及びその維持については県内の沿線市町村から遮音壁設置要望をまとめ東日本高速道路(株)の高崎管理事務所に対して要望を行いました(2019[令和元]年8月)。
また2019(令和元)年11月には関係県で構成する「東北上越北陸新幹線高速自動車道公害対策10県協議会」を通じて同社に要望を行いました。
イ 新幹線騒音対策要望
上越北陸新幹線における環境基準の達成及びその維持については2019(令和元)年11月前述した「東北上越北陸新幹線高速自動車道公害対策10県協議会」を通じて東日本旅客鉄道(株)本社及び(独)鉄道建設運輸施設整備支援機構に要望を行いました。
また測定の結果環境基準未達成地域があることから2020(令和2)年3月に東日本旅客鉄道(株)高崎支社に発生源から出る騒音の防止対策をより一層強化するよう強く要望しました。

3 騒音振動の業務を行う市町村に対する支援【環境保全課】
「騒音規制法」及び「振動規制法」を運用する上で必須となる騒音振動の測定に係る知識の習得のため市町村職員を対象に2012(平成24)年度から「騒音振動市町村担当者研修」を開催しています。
さらに2015(平成27)年度に「騒音規制法」「振動規制法」及び「群馬県の生活環境を保全する条例」における地域指定の権限を市に移譲し市町村が運用しやすい法制度の整備を図りました。今後も市町村の実情を十分に考慮しながら市町村が行う騒音振動の業務を支援していきます。

4 騒音振動防止のための路面改善の促進【道路管理課】
沿道に住居が連担している地域で通行車両による騒音レベルが3年連続して環境基準を超えている箇所に低騒音舗装を施工し騒音の低減を
図ります。
通常のアスファルト舗装が空隙率4%程度であるのに対し低騒音舗装では空隙率が20%前後の排水性舗装(*注16)を使用することで自動車騒音が吸収され騒音レベルが3db程度低下します。

(*注16)排水性舗装:骨材の粒度の粗い特殊な舗装で 排水性に優れ車両の騒音低減効果もあります。

第3項 悪臭の防止

1 悪臭防止法の管理運営【環境保全課】
「悪臭防止法」は事業活動に伴って発生する悪臭について必要な規制を行うことによって生活環境を保全し県民の健康を保護することが目的です。規制の方法は次の2種類がありいずれかにより悪臭の排出等が規制されています。それぞれの規制値は地域の実情を考慮して地域ごとに定められています。
【規制の方法】
ア 物質濃度規制(アンモニア(*注17)等の特定の22物質を対象とした排出濃度規制)
イ 臭気指数規制(人間の嗅覚に感知される悪臭の程度に関する値である臭気指数による規制)
悪臭に関する苦情は物質濃度規制では解決できない事例も多い状況でした。
そのため県では県内全市町村で複合臭(*注18)や未規制物質にも対応できる臭気指数による規制を行うことを基本方針に市町村と調整を行ってきました。
2020(令和2)年3月31日現在長野原町を除く12市14町8村全域が臭気指数規制地域として指定されています。
今後とも県内全市町村全区域への臭気指数規制導入を目指し調整を行っていきます。

2 悪臭防止対策の業務を行う市町村に対する支援【環境保全課】
臭気指数規制を導入した際に必要となる実務知識の習得のため市町村職員を対象に2004(平成16)年度から「嗅覚測定法研修会」を開催するなど実際に規制の運用にあたる市町村の支援に努めています。
さらに規制地域内の事業者に対しては説明会の実施等によって制度の普及啓発に努めるとともに今後も地域の実情を十分に考慮しながら悪臭防止対策を推進していきます。

3 畜産公害防止対策の推進【畜産課】
畜産経営に関する公害苦情の発生状況(2018[平成30]年7月1日~2019[令和元]年6月30日)は表2-4-2-19に示すとおりでした。県内の畜産経営に関する苦情の約5割が悪臭関連であり畜産業の健全な発展のためには悪臭防止対策が重要です。

(1)臭気対策
ア 家畜排せつ物臭気対策モデル事業(2009[平成21]年度~2013[平成25]年度)
本県で開発した脱臭装置を2009(平成21)年度に11か所設置し2013(平成25)年度まで実証データを収集しその効果を確認するとともに地域と調和した畜産経営を確立するため普及を図ってきました。
イ 家畜排せつ物臭気対策事業(2010[平成22]年度~2012[平成24]年度)
本県で開発した脱臭装置等の導入費を補助し畜産臭気の問題を抱えている地域の生活環境を改善する事業を2010(平成22)年度から開始し2010(平成22)年度には利根沼田地域に脱臭装置を2か所設置しました。また2012(平成24)年度には中部地域に脱臭装置を2か所と常緑樹の生垣を1か所設置しました。
ウ 畜産経営環境周辺整備支援事業(2013[平成25]年度~2019[令和元]年度)
2013(平成25)年度には「水質汚濁防止法」の硝酸性窒素等及び窒素りんの暫定排水基準の改正に対応するため事業を拡充し高度処理装置等の追加設置に対する排水処理対策メニューを追加しました。また2014(平成26)年度は中部地域で臭気対策耐久資材1か所排水処理施設1か所の整備を実施しました。さらに2015(平成27)年度は中部地域で脱臭装置1か所排水処理施設1か所西部地域で臭気対策耐久資材1か所吾妻地域で排水対策1か所の事業を実施しました。2016(平成28)年度については中部地域で臭気対策耐久資材等1か所高度処理装置1か所吾妻地域で排水対策1か所の事業を実施しました。2017(平成29)年度は中部地域及び吾妻地域で高度処理装置等2か所の事業を実施しました。2018(平成30)年度は中部地域において高度処理装置3か所の事業を実施しました。2019(令和元)年度は中部地域で臭気対策耐久資材1か所の整備を実施しました。

(2)畜産環境保全
ア 畜産環境保全対策推進事業(2006[平成18]年度~)
地域の環境保全を図るため畜産に関する苦情の実態調査及び巡回指導等を実施しました。
また堆肥流通を促進するため堆肥施用による実証展示ほを2地域2か所に設置し地域の特徴を活かした資源循環型農業の推進を図りました。
「悪臭防止法」や「水質汚濁防止法」に対応するため臭気低減対策や尿汚水浄化処理施設維持管理の研修会を開催するとともに環境保全に対する意識向上を図るための冊子を作成配布しました。

(*注17)アンモニア:刺激臭のある無色の気体で圧縮することによって常温でも簡単に液化します。畜産鶏糞乾燥し尿処理場などが主な発生源で粘膜刺激呼吸器刺激などの作用があります。し尿のような臭いがします。
(*注18)複合臭:複数の原因物質が混ざり合うことによって様々な相互作用が起こります。例えば別々に嗅ぐとそれほど強く感じない臭いでも混ぜて嗅ぐと強く感じることがあります。このような相互作用が複雑に絡み合って1つの臭いが作り出されます(例:香水)。人間の嗅覚はこのような相互作用を全て加味して総合的に臭いを感じ取っています。

4 畜舎臭気低減技術の開発【畜産試験場】
(1)畜舎臭気の特徴
畜舎臭気の主な原因は家畜が排せつするふん尿です。ふん尿中の臭気成分は硫黄化合物(硫化水素等)低級脂肪酸(プロピオン酸酪酸吉草酸等)塩基性物質(アンモニアアミン類等)などが絡み合った複合臭です。また家畜によって飼料の種類や消化器官が異なるため発生する臭気も異なります。牛は主に牧草を飼料とするためその臭気成分はアンモニアが多くを占めていますが豚や鶏は主に穀類やタンパク質を含むものを飼料としているため低級脂肪酸やアミン類も排出することから臭いもきつく感じられます。
臭気成分のうち例えばアンモニアは100万分の1の濃度(ppm)で低級脂肪酸では10億分の1(ppb)でも悪臭として感じます。また人間の鼻では臭気成分を90%程度削減してようやく半分と感じる程度のため臭気対策は大変難しいものです。
ところで畜産施設の多くは開放式となっているため畜舎全体から臭気が拡散します。加えて臭気の発生や広がり方は気象条件によっても異なるため対策はさらに難しくなります。
畜産試験場ではこうした畜産臭気への対策として臭気成分が水に溶け易いことを利用し臭気低減装置の開発について取り組んでいますのでその概要について紹介します。

(2)軽石脱臭装置
ウインドレス(窓のない)畜舎や密閉式の堆肥化処理施設等から排出される臭気に対して軽石を用いた脱臭装置を開発しました。
本装置は密閉された施設から発生した高濃度臭気をブロア等により水で浸潤させた軽石充填槽(脱臭槽)に送り込みます。この脱臭槽で臭気成分を捕集し物理的化学的に脱臭します。臭気の主成分のアンモニアは軽石に定着させた硝化細菌により亜硝酸や硝酸に変化させることで継続的な脱臭が可能となります。この装置を用いてアンモニア濃度400ppm以下の臭気を90%以上除去できます。
本装置は県内の養豚農家の堆肥化処理施設に設置(11か所)され稼働中です。

(3)モミガラを利用した低コスト脱臭装置の開発
前述の軽石脱臭装置は比較的大規模の畜産農家を対象としており装置の設置や運転には費用がかかります。そこで中小規模の畜産農家でも導入しやすい低コストな脱臭装置が必要になります。
当場では脱臭槽に充填する資材として安価で手に入りやすいモミガラを利用し微生物をモミガラに定着させ脱臭を行う装置の開発に取り組みました。
当場での試験では堆肥化処理施設から発生する平均20ppm程度のアンモニアを70%以上除去することができました。また畜舎において悪臭が発生しやすいバーンクリーナー(ふんをトラックまで搬出する装置)の搬出部に本装置を設置したところ効果があることが分かりました。一方冬季は気温低下により微生物活性の低下とともに脱臭能力も低下するため保温対策が必要となります。

(4)ネットによる畜舎臭気低減技術の開発
ウインドレス畜舎や密閉式施設からの臭気は前述した微生物脱臭装置で対応できますが開放式の畜舎や堆肥舎では微生物脱臭装置による脱臭は困難です。
そこで畜舎や堆肥舎の開放面に親水加工した化学繊維のネットを設置した装置を開発し試験を行っています。その方法はネットにクエン酸水溶液を浸潤させ臭気がネットを通過する際に物理的化学的に水溶液に吸着させることにより臭気低減を可能にするものです。
当場の堆肥舎において開発試験を行い既に牛農家については脱臭効果を確認し現在は豚鶏農家でも実証試験を実施しています。運転方法や気候風土等の異なる環境下での脱臭効果またネットの耐久性等について検討中です。そして安定した脱臭が可能な装置の開発を目指しています。

(5)三県連携による「畜産臭気対策マニュアル」の発行
三県(群馬新潟埼玉)で連携して畜産における解決すべき重要な研究課題を整理し畜産臭気への対策技術について検討しました。その成果として畜産臭気の発生メカニズムや特徴並びに三県におけるこれまでの研究成果などを取りまとめた「畜産臭気対策マニュアル」を発行しました。
マニュアルを関係機関に配布して活用を図るとともに三県が技術連携し地域の実情に即した臭気対策技術の普及推進を図ります。

第3節 有害化学物質による環境リスクの低減

環境基準達成率

ダイオキシン類 大気 100.0%(17/17地点)
公共用水域(水質)100.0%(12/12地点)
公共用水域(底質)100.0%(12/12地点)
地下水質 100.0%(2/2地点)
土壌 100.0%(5/5地点)

第1項 有害化学物質対策

1 ダイオキシン類対策【環境保全課】
(1)ダイオキシン類の現状
「ダイオキシン類対策特別措置法(*注1)」ではダイオキシン類をポリ塩化ジベンゾーパラージオキシン(PCDD)ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(*注2)(コプラナーPCB)の総称と定義しています。
ダイオキシン類は意図的に製造する物質ではなく焼却の過程等で発生する副生成物です。環境中に広く存在していますがその量は非常に僅かです。
私たちは1日平均で体重1キログラム当たり約0.50pg-TEQ(*注3)のダイオキシン類を摂取していると推定されておりその大部分は食品経由と言われています(*注4)。この水準はダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI(*注5))(体重1キログラム当たり4pg)を下回っているため健康への影響はないと考えられます。

1pg(ピコグラム)は1兆分の1gに相当します。例えば東京ドームを水でいっぱいにして角砂糖1個(1g)を溶かしたときその水1mLに含まれている砂糖の量がおよそ1pgです。

「ダイオキシン類対策特別措置法」に基づく規制の結果ダイオキシン類の排出量は着実に減少しています。国内の事業場からの総排出量(2018[平成30]年)は1997(平成9)年比で約99%削減され(*注6)環境基準の達成状況も非常に高い状態が継続しています。
県ではダイオキシン類による汚染を防止し環境リスクの低減を図り安全な生活環境を確保するため国が推進する対策等を勘案しながら1発生源対策2ごみ減量化リサイクル3環境実態調査を総合的に推進しています。

(2)環境中のダイオキシン類調査結果
「ダイオキシン類対策特別措置法」により大気水質水底の底質及び土壌の環境基準が定められています。2019(令和元)年度の県内の調査結果は表2-4-3-1のとおりです。全ての地点で環境基準を達成しています。

(3)「ダイオキシン類対策特別措置法」の届出状況立入検査
2020(令和2)年3月末日現在本県における本法の届出状況は表2-4-3-2のとおりです。大気基準適用施設では全体の約9割を廃棄物焼却炉が占めています。
県では対象施設が適法に運用されているか確認するため随時立入検査を実施しています。2019(令和元)年度は大気基準適用37(3)施設(括弧内は前橋市高崎市実施分。以下同様。)水質基準対象5(2)施設に立入検査を行いその結果10(0)施設に対して口頭で改善指示を行いました。

(4)施設設置者による測定結果
施設設置者は排出ガス排出水及び燃え殻等のダイオキシン類による汚染状況について年1回以上測定を行い結果を県に報告することが義務付けられています。2019(令和元)年度分の報告状況は表2-4-3-2のとおりです。未報告の施設については速やかに報告するよう指導しています。なお県では県に報告された測定結果をwebサイトで公表しています。
(公表サイトのURL https://www.pref.gunma.jp/04/e09g-00060.html)(*注1)ダイオキシン類対策特別措置法:1999(平成11)年7月12日制定同年7月16日公布2000(平成12)年1月15日より施行されました。
(*注2)コプラナーPCB(コプラナーポリ塩化ビフェニル):PCBの一成分でポリ塩化ジベンゾーパラージオキシン(PCDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)と同様な毒性をもつものです。「ダイオキシン類対策特別措置法」ではダイオキシン類に含まれます。
(*注3)TEQ(毒性等量Toxicity Equivalency Quantityの略):ダイオキシン類の中で最も毒性が強い2,3,7,8−TCDDの毒性を1とし換算した毒性等価係数(TEQ)を用いて毒性を評価するためのものです。
(*注4)出典:2019(令和元)年版環境白書循環型社会白書生物多様性白書(環境省)
(*注5)TDI(耐容一日摂取量 Tolerable Daily Intakeの略):人が一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される一日あたりの摂取量であり世界保健機構(WHO)や各国において科学的知見に基づいて設定されています。
(*注6)出典:ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)2020(令和2)年3月(環境省)

2 アスベスト対策【環境保全課】
アスベスト(石綿)は天然の鉱物繊維であり熱や摩耗に強く酸やアルカリにも侵されにくいという特性を持ち安価であったことから高度経済成長期を主として建築材料や工業製品などに幅広く大量に使用されてきました。
しかしアスベストの極めて微細な繊維を吸い込むことにより人体に深刻な影響を与えることが確認されるようになりアスベストへの規制が行われることとなりました。アスベストに係る法規制は1960(昭和35)年に制定された「じん肺法」から始まり1971(昭和46)年に「労働基準法特定化学物質等障害予防規則」が制定されこれ以降関係法令が段階的に強化されました。
「大気汚染防止法」では1989(平成元)年にアスベスト製品製造工場を対象とした規制が始まり1996(平成8)年には解体等工事に係る規制として特定建築材料(吹付け石綿)を使用する建築物の解体について事前の届出と作業基準の遵守が義務化され2005(平成17)年には特定建築材料に石綿含有保温材等が追加されました。2006(平成18)年には「労働安全衛生法施行令」の改正によりアスベストを0.1重量%超含有する製品の製造使用譲渡等が原則禁止されました。2014(平成26)年6月には「大気汚染防止法」及び「石綿障害予防規則」が改正され解体工事等を施工する際事前調査を行うことが義務化されました。
また2006(平成18)年3月には国においてアスベストを原因とする健康被害者に対する救済制度が創設されました。アスベストを原因とする健康被害についてはアスベストを吸い込んでから自覚症状等をきっかけとして発見されるまでの期間が非常に長いため(例:中皮腫では20から50年)今後も長期的な視野に立って被害者の早期発見及び救済を図っていくことが必要です。

(1)県の対応
県は法令に基づく立入検査や環境調査等の実施に加え県民等からのアスベストに関する相談や質問に対応するとともに国が創設した健康被害者に対する救済制度の申請受付を行っています。

(2)県内の特定粉じん排出等作業への対応
吹付けアスベスト等の飛散性アスベストが使用された建築物等を解体改造補修する場合は事前に「大気汚染防止法」で特定粉じん排出等作業の実施の届出の必要があります。県ではこの届出があった全ての作業現場に立入り飛散防止対策が適正に行われているかを確認しています。
なお2019(令和元)年度は87(31)件の届出がありました(括弧内は前橋市及び高崎市への届出分)。

(3)特定粉じん排出等作業実施届出書の届出以外の解体等工事への対応
解体工事業者におけるアスベストの飛散防止対策を徹底するために2017(平成29)年度から特定粉じん排出等作業実施届出書の届出現場以外の解体等工事現場への立入検査を強化しています。さらに解体等工事請負業者の会社の事務所も訪問し法令の遵守について指導啓発を行っています。

(4)大気中のアスベスト濃度
県内の大気環境中のアスベスト調査に係る総繊維数濃度について一般環境2地点で測定を行いました。
どちらの地点も1本/Lを下回っていました。(*注7)

(*注7)本調査は「アスベストモニタリングマニュアル(第4.1版)」に基づいて行われており総繊維数濃度が1本/Lを超過した場合は電子顕微鏡で物質を同定しアスベスト繊維数濃度を求めることとされています。
(*注8)特定粉じん発生施設を設置する工場事業場の敷地境界基準として石綿濃度10本/Lが定められています。

3 食品の安全確保【食品生活衛生課】
食品の中には食物連鎖を通じて蓄積されたもの環境に由来して食品に残留したもの本来その食品を組成するもの等様々な化学物質などが含まれる可能性があります。
こうした化学物質などの中には一定量を超えて摂取し続けると人の健康に危害をもたらすものがありこれを防ぐために「食品衛生法」により様々な基準が設けられています。
(1)流通食品の安全検査の実施
県内で販売消費されている食品の検査を実施することにより安全の確認を行い検査結果は速やかに情報提供しています。2019(令和元)年度は放射性物質検査66検体重金属検査50検体その他23検体計139検体の検査を実施し全ての検体で「食品衛生法」の基準に違反するものはありませんでした。

4 シックハウス対策【住宅政策課】
新築やリフォームした住宅に居住する人の化学物質過敏症がシックハウス症候群として社会問題化したことから2002(平成14)年7月に「建築基準法」が改正されました。これに伴い以下資材の使用制限等が義務付けられ新築や増築する建物はこれに対応しています。

  1. クロルピリホス(シロアリ駆除剤)使用禁止
  2. ホルムアルデヒド(建材等接着剤)使用制限
  3. 24時間換気設備の設置

また厚生労働省により屋内汚染物質としてホルムアルデヒドを含む13種の揮発性有機化合物の室内濃度指針値が個別に設定されています。
改正法施行後10年以上が経過しホルムアルデヒドの使用制限等は着実に進んでいますが24時間換気設備の有効性は継続して情報提供していく必要があります。
県では群馬県住宅供給公社内の「ぐんま住まいの相談センター」においてシックハウス対策を周知するとともに屋内の化学物質を測定分析する機関を案内しています。

第2項 有害化学物質の適正管理の推進

1 化管法に基づく情報の収集公開【環境保全課】
(1)PRTR制度(*注9)の背景
現在の私たちの生活は多種多様な化学物質を利用することで成り立っています。
これらの化学物質には人や生態系に悪影響を及ぼすおそれがあるものもありますが一つひとつの物質に個別の基準を設け規制するには限界があります。そのため1999(平成11)年に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(*注10)が公布されPRTR制度が導入されました。

(2)PRTR制度の目的と特徴
PRTR制度の主な目的は次の2点とされています。

  • 事業者による化学物質の「自主的な管理」の改善を促進する。
  • 環境保全上の支障を未然に防止する。

この制度は従来からの手法である「規制」は最低限としあくまで事業者の「自主的」な取組によって化学物質による環境リスクの低減を図る点が特徴となっています。

(3)PRTR制度の仕組み
対象となる化学物質を製造又は使用等している事業者は大気公共用水域土壌及び事業所内埋立など環境中に排出した化学物質の量と廃棄物として処理するために事業所外へ移動させた化学物質の量を自ら把握し県(高崎市内の事業者にあっては高崎市)を経由して国に毎年届け出ます。
国は事業所からの届出データを整理集計するほか届出要件に該当しない事業者や届出対象となっていない家庭や農地自動車などから排出されている対象化学物質の量を推計し両データを併せて公表します。これらのデータを利用して県民事業者行政が化学物質の排出の現状や対策の内容進み具合について話し合いながら協力して化学物質対策を進めていくことが期待されます。
なお公表されたデータは次のホームページから入手することができます。
[環境省]
https://www.env.go.jp/chemi/prtr/risk0.html
[経済産業省]
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/

(4)排出量移動量の集計結果
2020(令和2)年3月に2018(平成30)年度分の排出量等のデータが国から公表されました。
ア 届出データ
a 届出事業所数
県内の届出事業所数は前年度より7件少ない771件となり全国の33,669件の約2.3%を占めています。そのうち約49%をガソリンスタンド等の燃料小売業が占めていました。(全国と同傾向)
b 届出排出量移動量
県内の届出排出量は約4.1千トンで全国の約2.8%を占め排出量順で16番目でした。全国及び県内の排出量移動量は表2-4-3-5に示すとおりです。大気への排出量の割合が高く群馬県の場合は排出量全体の約99%を占めています。排出量の多い物質はトルエンキシレンエチルベンゼン(*注10)の順となっています。
イ 届出外(推計)排出量データ
県内の届出外排出量は届出排出量の約1.5倍となっています。
また届出外排出物質のうち排出量の上位3物質はトルエンクロロピクリン(*注11)キシレンの順となっています。
PRTR制度により得られたデータは県が行う化学物質調査の基礎として活用されています。またリスクコミュニケーション(次ページ参照)への活用も図っていきます。

(*注9)PRTR制度:化学物質の排出移動量届出制度。
(*注10)特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律:1999(平成11)年7月13日公布2000(平成12)年3月30日より施行されました。「化学物質排出把握管理促進法」または「化管法」などと略されます。
(注*10 トルエンキシレンエチルベンゼン:いずれも人や生態系に悪影響を及ぼすおそれがある物質で溶剤洗浄剤などに用いられています。
(*注11)クロロピクリン:農薬(土壌消毒剤)の成分です。目や皮膚を刺激するほかのどや呼吸器を侵し吐き気や咳を生じます。

(5)化学物質大気環境調査
PRTR制度による届出データの集計結果に基づき環境への影響を調査するため化学物質排出量の多かった地域で夏季及び冬季の年2回大気環境調査を行いました。調査対象は排出量の上位5物質(トルエンキシレンエチルベンゼンジクロロメタントリクロロエチレン)で2019(令和元)年度の調査結果(年2回の調査結果における平均値)は表2-4-3-7のとおりです。
調査した全ての地点において環境基準又は室内濃度指針値を超過する濃度は検出されませんでした。

2 リスクコミュニケーションの推進【環境保全課】
(1)リスクコミュニケーションとは
現代社会においては事業活動等に伴って様々なリスクが発生します。例えば化学物質を使用する場合その化学物質が環境中へ排出されることで生態系や私たちの健康に悪影響を与える可能性(リスク)が発生します。このようなリスクのことを特に「環境リスク」といいます。このリスクを地域全体で減らすためには住民事業者行政が情報を共有し取組を進めることが重要です。このように様々な立場から意見交換を行い意思疎通と相互理解を図りながら環境リスクを減らすための取組を「リスクコミュニケーション」といいます。

(2)県の取組
県では住民事業者行政が一体となって環境負荷を減らすこと等を目指してリスクコミュニケーションを推進しています。
多くの事業者がリスクコミュニケーションについて前向きな意見を持っているものの知識スキル不足等が障害となり実際に実施するのが困難であるというのが現状です。またリスクコミュニケーションについて名前は知っているものの実施内容等については未だ認知度が低いという実情もあります。
県では2019(令和元)年度に県民向け講座である「ぐんま環境学校(エコカレッジ)」においてPRTR制度及びリスクコミュニケーションに関する説明を行いました。リスクコミュニケーションの普及を目指し今後も啓発を継続していきます。

独立行政法人 製品評価技術基盤機構ホームページより引用
リスクコミュニケーションに関する情報は次のホームページから入手することができます。
[群馬県](「リスクコミュニケーションについて」ホームページ)https://www.pref.gunma.jp/04/e0900059.html
[環境省] https://www.env.go.jp/chemi/communication/index.html
[経済産業省] https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/risk-com/r_index2.html
[独立行政法人 製品評価技術基盤機構]https://www.nite.go.jp/chem/management/rc_index.html

第1項 中長期的な視点での環境監視の実施

1 空間放射線量率の測定実施【環境保全課】
(1)モニタリングポストによる監視
県では文部科学省(2013[平成25]年度からは原子力規制委員会)の委託事業である「環境放射能水準調査」の一環として放射性物質の飛来状況を監視するため1990(平成2)年度から衛生環境研究所の屋上(地上21.8メートル)に空間放射線量測定器(モニタリングポスト)を設置し継続して測定を行っています。
2011(平成23)年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故により衛生環境研究所(前橋市上沖町)では一時的に空間線量の上昇が認められましたが(2011[平成23]年3月15日13時~14時:0.562μSv/h)その後減少し現在の同地点の空間放射線量率は0.02μSv/h程度と事故前の平常値の範囲内で安定して推移しています。
2012(平成24)年度からはさらに24基のモニタリングポスト(地上1メートル)を追加した25基で県内全域を常時監視しています。
2019(令和元)年度の県内の状況(地上1メートル)は0.017~0.098μSv/hの範囲で推移しています。
なおこの水準調査ではこのほかに浮遊じん上水(蛇口水)(*注2)降下物土壌精米野菜類牛乳の放射性物質濃度についても調査を行っています。

(2)サーベイメータ等による測定
モニタリングポストによる監視とは別に「県市町村放射線対策会議」(後述)では「県及び市町村による全県的な放射線監視」として携行型の空間放射線量測定器(サーベイメータ)等により定期的に生活圏を中心に空間放射線量を測定し結果を公表しています。
2019(令和元)年度は5月に県内443地点で11月に県内441地点で測定を実施し全地点で空間放射線量率は問題のないレベルで安定していることが確認されました。

2 汚染状況重点調査地域【環境保全課】
東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故により大気中に放出された放射性物質が降下沈着し平均的な空間放射線量率が0.23μSv/h以上である地域については「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(放射性物質汚染対処特別措置法)に基づき国が市町村ごとに汚染状況重点調査地域として指定することとされています。県内では2011(平成23)年12月28日付けで桐生市沼田市渋川市安中市みどり市下仁田町中之条町高山村東吾妻町片品村川場村みなかみ町の12市町村が指定を受けました。
その後の詳細調査の結果片品村とみなかみ町については空間放射線量率が低いことが確認され2012(平成24)年12月27日付けで指定が解除されました。
汚染状況重点調査地域に指定された10市町村のうち9市町村(*注3)で除染実施計画が策定され除染作業が実施されました。除染は学校や公園等の子ども空間から優先的に実施され順次住宅公園スポーツ施設道路農地等について実施されました。
2015(平成27)年11月19日除染実施計画を策定した全市町村が除染を完了し群馬県内での法律に基づく除染作業は終了しました。

3 水道水中の放射性物質検査【食品生活衛生課環境保全課(企)水道課】
(1)上水(蛇口水)の監視
「環境放射能水準調査」の一環として年1回測定を行っています。2019(令和元)年度の測定結果はヨウ素131は0.0016Bq*4/L未満セシウム134は0.00042Bq/L未満セシウム137は0.00073Bq/Lでした。
原子力発電所事故発生直後はモニタリング強化として毎日1回測定を行う体制となりました。しかし概ね2011(平成23)年4月下旬を最後に放射性ヨウ素及び放射性セシウムの不検出が続いたため文部科学省(当時)の方針変更を受けて2012(平成24)年1月からは3か月分の水道水を濃縮し精度を100倍に高めた測定を行う体制へと移行しました。
その後検出量が減少傾向になったため2016(平成28)年度からは通常のモニタリング体制に戻っています。

(2)県内の水道水中の放射性物質検査の実施
県内の水道水は厚生労働省が示している「今後の水道水中の放射性物質のモニタリング方針について」に基づき各水道事業者(市町村等)が定期に実施しています。

(3)県営水道の監視体制
企業局は水道用水供給事業者として2つの県営水道を運営しており市町村の経営する水道事業を通じて県内の約120万人に水道水を供給しています。
安全な水を供給するという事業者としての責務から水質検査センター(太田市新田反町町)において県営水道の浄水場ごとに放射性ヨウ素放射性セシウムについて検査し結果を公表しています。
2019(令和元)年度は月1回検査し放射性物質は検出されませんでした。

(*注3)安中市は指定後の詳細調査の結果面的除染が必要な区域は確認されていません。
(*注4)Bq:ベクレル。放射性物質が放射線を出す能力を表す単位。1秒間に崩壊する原子核の数を表します。

4 流通食品の放射性物質検査【食品生活衛生課】
県内に流通する食品の安全性を確認するために放射性物質の検査を実施し結果を速やかに情報提供しています。
2019(令和元)年度は計66検体の検査を実施し全ての検体で基準値を下回っていました。

5 野生鳥獣肉の放射性物質検査【自然環境課】
県内各地で捕獲された野生鳥獣肉については環境調査及び食肉利用の面から検査を実施しています。なおクマイノシシシカ及びヤマドリについては原子力対策本部長から県内全域を対象として出荷制限の指示を受けています。2019(令和元)年度は73検体の検査を行いうち9検体で基準値超過がありました。
検査結果については県のホームページで公開しています。

6 きのこの放射性物質検査【林業振興課】
県では栽培されているきのこ類については毎週定期的にモニタリング検査を行い安全性を確認することとし2020(令和2)年3月末までに1,954件実施しました。
なお2012(平成24)年度以降は基準値を超える栽培きのこ類はありません。

7 農産物の放射性物質検査【技術支援課】
県内で生産されている農産物は定期的に放射性物質検査を行い安全性を確認しています。
県内では2011(平成23)年3月にホウレンソウ及びカキナが暫定規制値を超えたため出荷制限の対象となりましたがその後の検査によって安全性が確認され2011(平成23)年4月に出荷制限が解除されました。
また2011(平成23)年6月の検査で暫定規制値を超えたため出荷制限の対象となった茶は2012(平成24)年5月に一部の地域2013(平成25)年6月全ての地域で出荷制限が解除されました。

8 農地土壌等の放射性物質の調査【農政課】
県産農畜産物の安全性を確保し生産者が安心して営農に取り組めるよう2011(平成23)年4月から県内の農地土壌を対象とした放射性物質に係る土壌調査に取り組んでいます。

モニタリング定点調査
モニタリング定点調査では県内の農地土壌における放射性セシウム濃度の2011(平成23)年度以降の推移を把握するため2012(平成24)年度から継続的な土壌調査を実施しています。2015(平成27)年度は県内88地点で調査を実施したところ各地点の濃度は乾土1キログラム当たり10~660Bqの範囲で平均すると乾土1キログラム当たり139Bqでした。
2015(平成27)年度調査時の各地点の放射性セシウム濃度は約4年半前と比較して平均46%に減少していました。このことは放射性セシウムの崩壊による物理的減衰(約59%)以上に減少したことを示しています。その理由については同一ほ場内のばらつきのほかに風雨によるほ場からの流亡流入などの自然要因やほ場管理の違いなど人為的要因の差による可能性が考えられます。本調査は2015(平成27)年度までは毎年実施してきましたがそれ以降は5年ごとに実施する予定であり本年度(2020[令和2]年度)に調査を行っています。
なおモニタリング定点調査の結果は県のホームページで公開しています。

9 流域下水道脱水汚泥の放射性物質検査【下水環境課】
福島第一原子力発電所の事故に起因し県内の流域下水道終末処理場(奧利根県央西邑楽桐生利根備前島平塚)から発生する下水汚泥は現在微量な放射性物質が検出されていますがセメント肥料の原材料基準を満たしていることから再資源化を行っています。
下水汚泥に含まれる放射性物質濃度については県民への情報提供のため2011(平成23)年5月からは約2週間に1回2013(平成25)年10月からは検出濃度の低下により月1回のペースで検査結果を県ホームページで公表しています。

【2019(令和元)年度 検査結果】
セシウム134 不検出
セシウム137 0~16(Bq/キログラム)

 第2項 情報の共有化広報の推進

1 「群馬県放射線対策現況」による県民への広報【環境保全課】
県内各分野の放射線対策の現況を網羅的に取りまとめわかりやすく示すために2014(平成26)年3月に「群馬県放射線対策現況第1版」を作成しました。
その後放射線対策の進捗が見えるように更新を重ね2019(令和元)年10月に「第8版」を作成しました。

2 県市町村放射線対策会議等による連携強化情報の共有化【環境保全課】
放射線対策について県と市町村が連携し総合的な対策を推進することを目的に2012(平成24)年5月7日に「県市町村放射線対策会議」を設置しました。
またこの会議に汚染状況重点調査地域の指定を受けた12市町村(現在解除となっている市町村を含む。)を構成員とする除染部会を設置し除染対策の円滑な推進に向けた情報共有を図っています。
また県では分野横断的に放射線対策業務の円滑な推進を図るため2012(平成24)年4月25日に企画会議の部会として「放射線対策庁内連絡会議」を設置し情報の共有などを行っています。

第3項 放射性物質を含む廃棄物の処理

1 指定廃棄物の処理【廃棄物リサイクル課】
(1)指定廃棄物の現状
指定廃棄物とは放射性物質汚染対処特別措置法において事故由来放射性物質の放射能濃度(放射性セシウム134と放射性セシウム137の合計値)が8,000Bq/kgを超える廃棄物であって環境大臣が指定したものと定められています。
県内には指定廃棄物として浄水発生土が672.8トン下水汚泥焼却灰等が513.9トンその他0.3トン計1,187.0トンが保管されています。これら指定廃棄物は国が責任をもって処理することとされています。

(2)指定廃棄物の処理方針
「放射性物質汚染対処特別措置法に基づく基本方針」では指定廃棄物の処理は当該指定廃棄物が排出された都道府県内において行うこととされています。
宮城茨城栃木千葉群馬の5県については国が長期管理施設(最終処分場)を確保し処理することとされていますが群馬県については2016(平成28)年12月の第3回群馬県指定廃棄物処理促進市町村長会議において現地保管継続段階的処理の方針が決定されました。

2 放射性物質汚染廃棄物処理状況監視【廃棄物リサイクル課】
県では放射性物質汚染対処特別措置法に基づく特定一般廃棄物処理施設である焼却施設7施設及び最終処分場17施設に対して排出ガスや放流水の自主測定結果の報告を求めたり立入検査を行っています。その結果全ての施設において基準に適合していることが確認されました。

第4節 快適な生活環境の創造

主な指標と最新実績

県植樹祭参加者数 1,000人
エコファーマー認定者数(累計)5,728人

第1項 快適な環境の確保

1 環境美化活動【気候変動対策課】
空き缶やペットボトルたばこの吸殻などのポイ捨てによるごみの散乱は私たちに最も身近な環境問題です。ごみの散乱は私たち自身のモラルやライフスタイルにも関わることから容易には解決できない困難な問題となっています。
そのため県では環境美化の意識を啓発し快適で住みよい「美しい郷土群馬県」をより一層推進するために「春秋の環境美化運動」をはじめとして様々な施策を展開しています。

(1)春の環境美化運動(5~6月)実施状況
県では5月1日から6月30日までを春の環境美化月間と定め市町村やボランティア団体等と連携して県内各地において清掃活動や啓発活動を実施しています。
清掃活動 33市町村10事業者 67,145人
ごみ収集総量 289,983キログラム
啓発活動 13市町村2事業者 4,132人

(2)秋の環境美化運動(9~10月)実施状況
県では9月1日から10月31日までを秋の環境美化月間と定め市町村やボランティア団体等と連携して県内各地において清掃活動や啓発活動を実施しています。
清掃活動 26市町村13事業者 54,658人
ごみ収集総量 270,528キログラム
啓発活動 7市町村2事業者 25,304人

(3)各種啓発事業の実施
ア ごみの散乱防止と3Rを進めるための標語コンテストの実施
県と「群馬県環境美化運動推進連絡協議会」では次代を担う子どもたちへの環境美化とごみの適切な処理に対する意識啓発を目的に標語コンテストを実施しています。
対象 県内の小学生中学生高校生
応募数 8,154点
イ 環境美化教育優良校等表彰
(公社)食品容器環境美化協会の主催する「環境美化教育優良校等表彰」に県が受賞候補校を推薦しています。2019(令和元)年度は館林市立多々良中学校が優良校に選ばれました。

2 公害紛争処理公害苦情相談【環境保全課】
公害に係る紛争では司法制度(裁判)による解決以前に簡易迅速少ない費用で行政的解決を図るため1970(昭和45)年に「公害紛争処理法」が制定され公害紛争処理制度が確立されました。
この法律に基づき国の公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等において公害紛争についてのあっせん調停仲裁及び裁定の制度を設けています。
また公害苦情相談員制度を設けることによって苦情の適切な処理を図っています。

(1)公害審査会
1970(昭和45)年11月に設置された公害審査会における最近の調停事件の状況は表2-4-5-1のとおりです。

(2)公害苦情相談員
公害に関する苦情は地域に密着した問題であるとともに公害紛争に発展する可能性もあるため迅速な処理が必要となります。
このため1970(昭和45)年11月に「群馬県公害苦情相談員設置要綱」を制定し関係する地域機関に設置された公害苦情相談員が住民からの苦情相談に応じ苦情の解決のために必要な調査指導及び助言等を行っています。公害苦情相談員は以下の地域機関に合計32名が設置されています。

  • 環境事務所及び環境森林事務所
  • 農業事務所(農業振興課家畜保健衛生課)
  • 土木事務所

(3)公害苦情の状況
2019(令和元)年度において公害苦情相談員及び市町村の公害担当課で対応した公害苦情の件数は1,254件でした。
典型7公害に関する苦情を種類別にみると大気汚染(251件)騒音(195件)悪臭(148件)の順となっています。
苦情を受付機関別にみると市町村での受付が
90.7%県での受付が9.3%となっています。
なお処理に当たっては関係機関との連携により対応しています。

3 制度融資【県民活動支援広聴課環境政策課経営支援課】
環境生活保全創造資金は公害防止や廃棄物対策さらには循環型社会づくりや地球環境問題に取り組む中小企業者を支援する融資制度です。
1968(昭和43)年度に「公害防止対策資金」として発足し制度内容の充実とともに1999(平成11)年4月に「環境保全創造資金」2003(平成15)年4月に「環境生活保全創造資金」へと改称しました。
2019(令和元)年度における融資実績は1件2,800千円でした。

4 緑化の推進【森林保全課】
森林や緑は水源の涵養国土保全地球温暖化の防止等様々な機能を持ち私たちの豊かな生活を支え多くの恵みを与えてくれます。
緑化は従来から家庭や地域市町村で取り組まれていますが社会情勢の変化とともに県民や行政NPO法人等が一緒にあるいは役割を分担して緑化森林整備の展開を図る取組もなされてきています。
県では森林や緑の持つ公益的機能を十分に発揮させ緑豊かで暮らしやすい生活環境づくりを推進するため植樹祭等各種イベントの開催や緑の募金活動などを通じて広く県民に緑化思想の高揚を図るとともに身近な環境の緑づくりを推進しています。
なお2019(令和元)年度の県植樹祭はみどり市で開催され約1,000人が参加しました。
また県緑化センターを運営し見本園管理や各種緑化講座の開催など緑化技術の指導普及を実施しました。

5 環境保全型農業の推進【技術支援課】
(1)エコファーマーの推進
「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」に基づきたい肥等による土づくりと化学肥料農薬の低減を一体的に行う生産方式の導入を支援し導入計画を策定した農業者を県知事が認定しています。
エコファーマーに認定されるとエコファーマーマークが使用できるほか融資の優遇策などが利用できます。
2020(令和2)年3月末現在エコファーマーの認定者数は1,176人です。

(2)群馬県特別栽培農産物認証制度
「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」の基準に従い化学肥料と化学合成農薬の使用量を地域での一般的な使用量から50%以上減らして栽培された農産物を認証しています。
認証された農産物は「特別栽培農産物」として表示し流通することができます。
2020(令和2)年3月末現在本制度に取り組んだ栽培面積は145.4ヘクタールです。

(3)有機農業の取組推進
有機農業とは化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業のことです。
県では群馬県有機農業推進計画を策定し有機農業者のネットワーク化や消費者の理解促進等有機農業の取組を支援しています。

6 総合的病害虫雑草管理(IPM)推進【技術支援課】
(1)総合的病害虫雑草管理(IPM)とは
化学農薬による防除だけでなく様々な防除手段の中から適切なものを組み合わせ経済的な被害が生じないように病害虫や雑草を管理することです。
IPMにより難防除病害虫の効率的な防除や環境への負荷軽減による持続的な農業生産の実現を目指すことができます。

IPM=Integrated(総合的な)
Pest(病害虫)
Management(管理)

(2)IPMの基本的な実践方法
IPMを実践するに当たっては予防判断防除の3分野の基本的要素についてそれぞれ検討する必要があります。
ア 予防
輪作抵抗性品種の導入や土着天敵等の生態系が有する機能を可能な限り活用すること等により病害虫雑草の発生しにくい環境を整える。
イ 判断
病害虫雑草の発生状況を把握して防除の要否及びそのタイミングを的確に判断する。
ウ 防除
防除が必要と判断された場合には多様な防除手段の中から適切な手段を組み合わせ環境負荷を低減しつつ病害虫雑草の発生を経済的な被害が生じるレベル以下に抑制する。

(3)県におけるIPMの取組
近年環境に優しく環境と調和した農業の推進が求められています。
国では農作物の病害虫防除対策としてIPMを普及推進することで環境保全を重視した農業生産に転換していくこととしています。
本県でも環境保全及び難防除病害虫等の効率的な防除対策を推進するためIPMに取り組むことが重要なことと考えています。
県では国が示した主要作物別IPM実践指標をベースに本県の栽培技術体系に適合した群馬県版の作物別IPM実践指標を主要な17作物について策定しました。
また今後新たなIPM技術が開発された段階で農作物を付け加えることとします。

さらにIPM技術を体系化した指導者用作物別技術集(半促成ナス施設キュウリ露地ナス)を作成配布し指導力強化を図っています。これにより一層の普及推進を行うとともにIPMの導入を目指す農家の技術向上及び定着を図ります。

7 農薬適正使用推進【技術支援課】
(1)有機リン系農薬とは
有機リン系農薬とは炭素と水素から成る有機基にリンが結合した構造をもつ農薬で主に殺虫剤として広く使われています。
有機リン系殺虫剤は神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素アセチルコリンエステラーゼの働きを阻害することで昆虫や哺乳動物に対し毒性を示し残留性は一般的に低いとされています。

(2)有機リン系農薬の空中散布による人の健康への影響
有機リン系農薬は最近の研究などで慢性毒性の危険性や子どもに及ぼす影響等が指摘されています。
特に無人航空機による空中散布においては地上散布と比較して高濃度の農薬(通常1,000倍程度に希釈して散布するところ8倍程度で散布)を細かい粒子で散布します。そのため農薬成分がガス化しやすく呼吸により直接体内に取り込まれるため農薬を経口摂取する場合に比べ影響が強く出る可能性があると言われています。
慢性中毒では免疫機能の低下や自律神経症状などが現れることがあります。

(3)県の対応
現在は有機リン系農薬の空中散布を規制する法的根拠はありませんが有機リン系農薬に代わる薬剤の使用が可能であることや速やかに対応すべきであるとの判断などから2006(平成18)年から防除実施者や関係団体に無人航空機による有機リン系農薬の空中散布の自粛を要請しています。
その結果関係者の理解を得ることができ2006(平成18)年度以降無人航空機による有機リン系農薬の空中散布は実施されていません。

8 景観の保全と形成【道路管理課都市計画課】
景観は地域の自然歴史文化や日常の様々な活動の結果として形成されるものです。
そのため良好な景観を形成するためには自然や歴史的な景観の保全や利活用だけでなく私たちが暮らす地域の景観を創造しそのための活動を育成するとともに阻害要因を除去する取組も重要になります。

(1)景観条例に基づく施策
県では1993(平成5)年に制定した「景観条例」に基づき大規模行為(一定規模以上の建築や土地の形質変更など)の届出などにより良好な景観づくりを進めています。2019(令和元)年度は247件の届出がありました。

(2)市町村を中心とする景観行政の取組
景観形成の取組は地域に根ざした活動が重要であるため市町村が「景観法」に基づく景観行政団体になって景観計画を策定して積極的に景観施策を展開することが望まれます。2019(平成31令和元)年度には新たに玉村町みなかみ町で「景観条例」が施行されました。表2-4-5-7のとおり21市町村が「景観法」に基づく景観行政団体となっています。

(3)補助金の交付
市町村が景観計画の策定や世界遺産の緩衝地帯を設定するための経費の一部を補助しています。

(4)広域景観形成(景観誘導地域の指定)
2016(平成28)年度に観光ルート等における良好な景観形成を図るための「景観誘導地域」新設を盛り込んだ「県屋外広告物条例」の一部改正を行い(2017[平成29]年4月施行)上信自動車道の一部を景観誘導地域に指定しました。2020(令和2)年4月までに渋川西バイパス(現道区間を除く)から長野原バイパスまでの区間を指定したほか甘楽町景観誘導地域(上信越自動車道(仮)甘楽PASIC周辺地域)も2020(令和2)年4月に景観誘導地域に指定しました。

(5)無電柱化の推進
道路における無電柱化は「防災機能の向上」や「安全で快適な通行の確保」とともに「景観の改善」にも大きく寄与しています。県では緊急輸送道路や市街地の幹線道路富岡製糸場周辺や桐生市の重要伝統的建造物群保存地区などの景観に配慮すべき地域において無電柱化事業を進めています。

9 屋外広告物の規制誘導美化推進【都市計画課】
良好な景観の形成や風致の維持公衆に対する危害防止のために看板や広告塔などの屋外広告物について設置場所や形状面積等を規制しています。また規制を効果的に講じるため屋外広告業者の登録制度を設けています。

(1)屋外広告物の管理事務
県では「屋外広告物法」及び「屋外広告物条例」に基づき屋外広告物の設置場所表示面積高さ及び表示方法等の基準を設け設置の許可事務を行い良好な景観づくりを進めています。2019(令和元)年度は683件を許可しました。

(2)屋外広告業の登録事務
2004(平成16)年の「屋外広告物法」の改正を受け県では2006(平成18)年度から屋外広告業者の登録制度を施行し不良業者を排除するとともに良質な業者の育成を進めています。2019(令和元)年度末現在715件の業者の登録があります。

(3)屋外広告物の美化推進
各土木事務所において違反広告物の是正指導及び除却を行うとともに2019(令和元)年度も「屋外広告物美化キャンペーン」(9月1日~12月27日)を実施しました。

10 都市公園の管理整備【都市計画課】
(1)管理
県民の自然とのふれあいや文化的余暇利用を向上させるため民間等が持つ創造的で柔軟な発想や豊富な知識を活用することにより管理運営経費の縮減を図りながら施設の効用を最大限発揮し県民サービス向上を図るため5公園で指定管理者制度を導入しています。

(2)整備
都市公園は多目的な機能を持つ都市の重要な生活基盤です。
平時は緑あふれる県民の交流拠点として自然とのふれあいやレクリエーション施設を通じて児童や青少年をはじめとする県民の心身の健康の維持増進に寄与し住み良い生活環境を整えています。
また災害時には避難所としての機能はもちろん復旧救援の拠点としても都市住民の安全を確保する重要な役割を果たしています。
2019(令和元)年度の都市公園事業は県立公園「敷島公園」の水泳場ボイラーの更新やサッカーラグビー場の音響設備の更新を実施するなど5か所の公園で整備を実施しました。
また市町村の都市公園事業として前橋市の「前橋市総合運動公園」や高崎市の「浜川運動公園」をはじめ7市の9か所で公園整備を実施しました。
本県の都市公園の整備状況は2019(平成31)年3月末現在で1,470か所2,596ヘクタールが供用開始しており都市計画区域内の一人当たりの都市公園面積は11.78平方メートル/人(「榛名妙義公園」を除く)となっています。

11 河川内の伐木除草【河川課】
河川内に繁茂する草木は洪水時に流水の正常な流下を妨げたり堤防に根を張ることで堤防の機能を弱めてしまうなど河川の安全性に悪影響を与えます。また防犯上あるいは良好な景観を形成する上でも河川内の草木を適切に管理することが求められています。
このため県内の河川のうち伐木除草が必要となる区間を調査し順次伐木及び除草を実施しました。
伐木は鳥獣害対策及び流下能力確保と合わせ25ヘクタールで実施しました。
除草は専門業者のほか自治会等へ委託して実施しました。2019(令和元)年度の除草面積は810ヘクタールでそのうち204ヘクタールを自治会等により実施されました。

12 環境に配慮した都市地域づくり【都市計画課】
「ぐんま“まちづくり”ビジョン」に掲げる「人口減少局面でもぐんまらしい持続可能なまち」の実現に向け本県の緑豊かな自然環境や豊富な水資源伝統的な街並みをはじめとする歴史文化資源など地域の誇る魅力的な地域資源を有効活用しつつ建て替えや新設にあわせて教育文化施設商業施設病院等の都市機能を中長期的に中心市街地や役所駅周辺地区などへ集約を図ることで「まちのまとまり」を維持します。
また「まちのまとまり」をつなぐ利便性の高い多様な移動手段を確保することで徒歩や公共交通での移動が容易な誰もが暮らしやすく環境にもやさしいまちづくりを推進します。

第2項 文化財の保護

1 世界遺産の包括的保存管理【文化振興課】
(1)「富岡製糸場と絹産業遺産群」包括的保存管理計画について
「富岡製糸場と絹産業遺産群」は2014(平成26)年6月25日に世界遺産に登録されました。
世界遺産は人類が過去から現在へと引き継いできたかけがえのない宝物です。現在を生きる私たちはこの世界遺産を人類共有の財産として未来へ伝えていく責務を負っています。遺産の保護は「世界遺産条約」で定められており世界遺産としての価値が破壊されたときは登録抹消の可能性もあります。
「富岡製糸場と絹産業遺産群」を人類共通の遺産として将来に伝えていくという責務を果たすためには具体的に何を行えばよいのかについて行政資産の権利者来訪者そして地域の人々が意識を共有しておく必要があります。県では文化庁富岡市伊勢崎市藤岡市及び下仁田町と共同し「包括的保存管理計画」を策定しました。個別資産の保存管理計画を基に世界遺産としての観点から資産周辺を含めた保存管理を網羅したものが「包括的保存管理計画」です。この計画は「富岡製糸場と絹産業遺産群」の推薦書とともにユネスコに提出されています。
この計画を円滑に推進するため県と関係市町で「群馬県世界遺産協議会」を組織し2019(令和元)年度までに会議を12回開催しています。
以下に構成資産の保存管理のために行われた事業と各資産の周辺環境を含めた一体的な保全の仕組みについて紹介します。

(2)構成資産の保存管理
各資産は「文化財保護法」に基づく史跡(4資産全て)国宝重要文化財(富岡製糸場のみ)に指定され保護されています。
同法に基づき2019(令和元)年度は主に次のような文化財保存事業を行いそれに対して県では事業費の補助を行いました。
1富岡製糸場
西置繭所保存修理
西置繭所整備活用
総合防災事業(建造物)
乾燥場等保存修理
社宅85保存修理
発掘調査
2田島弥平旧宅
別荘冷蔵庫跡保存修理等
3高山社跡
石垣修復工事等
4荒船風穴
風穴保存工事
番舎遺構ゾーン整備工事等

(3)周辺環境を含めた一体的な保全(緩衝地帯)
世界遺産の構成資産の価値を守るため緩衝地帯を設定し各資産とその周辺環境について一体的な保全を図っています。緩衝地帯においては世界遺産にふさわしい周辺環境に悪影響を及ぼす開発行為等を未然に防ぐため次のとおり様々な法令が適用されています。
1富岡製糸場
景観法(富岡市景観計画富岡市景観条例)
都市計画法
屋外広告物法(富岡市屋外広告物条例)
2田島弥平旧宅
景観法(伊勢崎市景観計画伊勢崎市景観まちづくり条例埼玉県景観計画埼玉県景観条例)
都市計画法
屋外広告物法(伊勢崎市屋外広告物条例)
農業振興地域の整備に関する法律
3高山社跡
景観法(藤岡市景観計画藤岡市景観条例)
屋外広告物法(藤岡市屋外広告物条例)
4荒船風穴
景観法(下仁田町景観計画下仁田町景観条例)
屋外広告物法(下仁田町屋外広告物条例)
森林法

(参考)構成資産及び緩衝地帯の面積(単位:ヘクタール)
構成資産名 資産面積 緩衝地帯面積
富岡製糸場 5.5ヘクタール 151.1ヘクタール
田島弥平旧宅 0.4ヘクタール 60.8ヘクタール
高山社跡 0.8ヘクタール 54.1ヘクタール
荒船風穴 0.5ヘクタール 148.6ヘクタール

2 文化財の指定登録選定【文化財保護課】
我が国の文化財は豊かな自然環境のもとで長きにわたる先人の営みによって形作られてきました。文化財保護行政の目指すところは有形無形の様々な文化財とそれらが守り伝えられてきた事実をその環境とともに後世に伝えていくことにあります。国県市町村はそれらのうち特に重要なものを法的に保護しまたその質と価値を高めるための保存活用を行っています。これによって文化財の価値を正確にわかりやすく社会に還元することができ人々の地域に対する理解と関心の深化へとつながっていきます。
文化財は有形文化財無形文化財民俗文化財記念物文化的景観伝統的建造物群保存技術埋蔵文化財の8つに分類されますがそれぞれの中で重要なものや保護が必要なものが指定選定登録選択され法的な保存がなされ整備活用が図られています。
また昨今の過疎化少子高齢化などを背景に文化財の滅失や散逸等の防止が緊急の課題となりこれまで価値付けが明確でなかった未指定を含めた郷土の文化財をまちづくりに活かしつつ地域社会総がかりでその継承に取り組んでいく必要性が指摘されています。このため地域における文化財の計画的な保存活用の促進や地方文化財保護行政の推進力の強化を図ることを目的に「文化財保護法」が改正され2019(平成31)年4月から施行されました。
改正文化財保護法では県は文化財の保存活用に関する総合的な施策の大綱を策定できるとされ2020(令和2)年3月に「群馬県文化財保存活用大綱」を策定しました。市町村は県の大綱を勘案しながら文化財の保存活用に関する総合的な計画(文化財保存活用地域計画)を作成し国の認定を申請できることになりました。今後地方公共団体では文化財担当部局やまちづくり観光等関係部局が地域社会と連携しながら郷土に残る文化財を確実に継承し計画的な保存活用を推進していくことが求められています。

3 文化財パトロール【文化財保護課】
国県指定等文化財及び重要な埋蔵文化財包蔵地の維持管理に万全を期すため県で委嘱した文化財保護指導委員(2019[令和元]年度:31名)が定期的に巡視し保存状態を確認し県に報告しています。報告は県において指定文化財等の現状把握とともに保存修理事業計画立案の際の資料とします。

4 文化財の修理整備管理埋蔵文化財発掘調査等【文化財保護課】
文化財のうち名勝天然記念物は自然環境及び自然景観の保護に直結しています。県で指定する名勝天然記念物は動物繁殖地や植物など計100件です。また国の名勝天然記念物には26件が指定され名勝妙義山や楽山園特別天然記念物尾瀬六合チャツボミゴケ生物群集の鉄鉱生成地等内容は多岐にわたります。
天然記念物のうち動物の種として地域を定めず指定されているものは全国の国指定110件のうち県内に生息若しくは飼育されているものが10件県指定が7件あります。国指定の動物種のうち特に本県で生息が確認できる野生動物はカモシカやヤマネイヌワシなどです。県指定天然記念物はヒメギフチョウやミヤマシロチョウなどです。
これらの動物のうち特別天然記念物に指定されているカモシカは保護地域が設定されており保護地域及び周辺地域の生息状況生息環境調査を毎年実施しています。また保護地域周辺での食害を防止するため防獣柵の設置といった施策も用意されています。
史跡は国指定52件県指定88件重要文化財(建造物)は国指定26件(うち国宝1件)県指定54件国登録有形文化財(建造物)が336件所在しそれぞれ歴史景観が保たれています。また一部で史跡公園等に整備され学習及び憩いの場ともなっています。
自然環境と歴史的景観が共存している好例として山間地に養蚕農家群や仏堂や社殿がたたずむ中之条町の六合赤岩伝統的建造物群保存地区や妙義神社や榛名神社などがあります。近代の文化遺産についても国重要文化財の旧碓氷峠鉄道施設や国登録文化財のわたらせ渓谷鐵道関連施設等は山間地の自然景観の中に鉄道施設が溶け込み自然と近代化遺産が一体化しています。また国宝国史跡国重要文化財の旧富岡製糸場や国登録文化財の桐生市内の織物工場の建物などはそれぞれまちづくりの核となる歴史的景観を形成しています。
重要文化的景観は人々の生活又は生業地域の風土の中で形成された景観で我が国の国民の生活生業の理解のために不可欠のものです。日常の風景として見過ごされがちでしたが棚田や水郷など自然と人との調和の中で長い年月をかけて形成されてきた価値ある景観です。県内では板倉町が利根川渡良瀬川合流域の水場景観の保護に取り組んでおり2011(平成23)年9月には国の重要文化的景観に選定されました。県もこの取組を支援しています。
重要伝統的建造物群保存地区は町並みや農村集落など歴史的建造物が群として良好に保存された場所です。県内には中之条町と桐生市の2か所に所在します。
中之条町六合赤岩伝建地区は2006(平成18)年に北関東で初めて選定されました。養蚕農家集落とともに墓地お宮やお堂耕作地そして山林などで構成される広大なエリアを占めます。2019(令和元)年度も2007(平成19)年度から毎年実施されている重要な構成要素に対する修理修景事業等に補助を行いました。
桐生市桐生新町伝建地区は2012(平成24)年7月に選定されました。近世近代の桐生の繁栄を物語る数多くの町屋や蔵織都桐生を象徴するノコギリ屋根の織物工場など多彩な歴史的建造物の町並みが展開します。建造物の修理修景や環境整備に対して県も支援しています。
2019(令和元)年度は指定文化財を管理するため県指定文化財17件国指定文化財18件の保存修理等に対してまた防災設備保守点検等事業として個人法人が所有する7件の重要文化財(建造物)の防災保守点検等に対して補助金を交付しました。
埋蔵文化財については国県及び国県関係の法人が実施する開発に対し調整を行います。埋蔵文化財の所在や範囲を確認するために工事前に試掘調査を実施します。2019(令和元)年度は県内各地で50件実施しました。開発事業により埋蔵文化財の破壊が免れない場合は記録保存のための発掘調査を行うよう開発事業者と調整します。発掘調査は公益財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団が行います。

5 上野国分寺跡整備保護管理【文化財保護課】
上野国分寺跡は奈良時代に聖武天皇の命により国家鎮護の寺として建立された本県を代表する国指定史跡で1926(大正15)年10月に指定されました。
歴史的意義を有する上野国分寺跡が周囲の自然的環境と一体をなして歴史文化的景観を形成している地域を保存するため「史跡上野国分寺跡整備基本設計(1988[昭和63]年3月策定)」に基づき逐次整備を実施し七重塔と講堂の基壇や南辺築垣復元等を関係方面の協力を得て実施してきました。また2012(平成24)年度から整備事業を再開し将来的に復元整備を行うための基礎的情報を収集する目的で発掘調査を行い報告書を刊行し2018(平成30)年度には今後の整備の基本方針となる「保存活用計画」を策定しました。上野国分寺跡は本県の古代を語る上で欠くことができない県民共有の文化財として保護活用が図られています。
また住宅地における緑地帯として生活環境の向上や環境保全にも役立っています。見学者対応並びに日常管理は臨時職員3名が交代でガイダンス施設「上野国分寺館」に年末年始を除き常駐し見学者へのサービス向上と地元住民との交流を図っています。遺跡の環境整備事業として直営の除草に加え地元の国分寺遺跡愛好会に年3回程度除草作業を実施していただいています。

6 観音山古墳保護管理【文化財保護課】
史跡観音山古墳は群馬県を代表する大型前方後円墳の一つとして高く評価され教科書にも採り上げられたこともあります。遺跡と出土品の学術価値は極めて高く群馬県地域の歴史の特色を明らかにする上で欠くことのできないものとなっています。史跡は県立歴史博物館の展示内容と結びつきをもった活用がなされ大きな効果を上げてきました。出土品は2020(令和2)年3月国宝指定の答申を受け県立歴史博物館の中心的な展示品として活用されています。遺跡と博物館が近接していることから両者を一体化した積極的な活用が図られています。住宅地における公園として生活環境の向上や環境保全にも役立っています。
観音山古墳の見学者対応並びに日常の古墳管理は地元区長を代表とする史跡観音山古墳保存会に委託して解説員(史跡レンジャー)が年末年始を除き対応しています。

第3項 地産地消の推進

1 地産地消を県民運動として推進【ぐんまブランド推進課】
農業団体消費者団体等の関係機関団体と連携した施策を展開するとともに県民行事として定着している「収穫感謝祭」をはじめとする関連イベントを通じて食と農への理解促進を図っています。
また地場産農産物の販売や料理を提供する「ぐんま地産地消推進店」の取組の情報発信など地場産農畜産物の利用促進や理解促進を図るとともに量販店売場において県産農畜産物統一ロゴマーク「GUNMA QUALITY」を掲示し県民が県産農畜産物に容易に到達できるよう売場環境の整備を図っています。

2 地場産農産物の利用促進【ぐんまブランド推進課】
「ぐんま地産地消推進店」「ぐんま地産地消協力企業団体」認定登録数の増加に努めるとともに農産物直売所相互の連携により消費者が一年を通して新鮮で安全安心な農畜産物を手に入れられる体制づくりを支援しながらそれらの情報発信に努めています。
さらに県産農畜産物情報サイト「ぐんまアグリネット」や冊子「ぐんま食材セレクション100」を活用して実需者に向け旬の食材や特色ある農産物入手方法等の情報を発信しマッチングを図るとともに学校給食での県産農畜産物の利用を促進しています。

3 食と農に対する理解の醸成【ぐんまブランド推進課】
農業が地域に果たす役割や生産される農産物への理解促進消費拡大の取組を推進し県産農産物の需要拡大を図るため新聞やホームページ等を活用して情報提供することにより食と農に対する理解を醸成しています。

4 観光資源としての「食」の活用促進【ぐんまブランド推進課】
本県農畜産物のブランド化消費拡大を目的に観光資源としての「食」の活用促進を図っています。県内企業と連携してぐんま地産地消推進店を紹介する小冊子「群馬のいい味この味」を発行し観光案内施設などで来県者に配布しているほか全ての食材を県産でまかなえる「すき焼き」や豊かな県産農産物を活用した料理を提供している県内旅館飲食店の情報をメディアに提供し情報番組等の取材誘致を図っています。その他観光果樹園グリーンツーリズムに関する情報発信を「ぐんまアグリネット」を通じて行っています。
「ぐんまアグリネット」ホームページ<外部リンク>
httss://www.aic.pref.gunma.jp/

第5節 里山平地林里の水辺の再生

主な指標と最新実績

ため池の保全整備数 2地区

第1項 里山平地林里の水辺の整備

1 ぐんま緑の県民基金市町村提案型事業(荒廃した里山平地林の整備)【森林保全課】
かつてきのこや山菜薪や炭肥料にする落ち葉や生活用具の材料となる木材や竹など日々の生活に必要な様々なものを私たちは身近な里山から得ていました。
また里山は二次的自然として特有の動植物の生息地となることで生物多様性を保全する機能を担っていました。
しかし近代化が進み電気やガスが普及し食材や道具類はいつでも簡単に手に入る時代となった今たとえ人家裏の雑木林や里山であっても非常に遠い存在となっています。
人の手が入らなくなった里山はヤブや竹シノが繁茂しさらに人を寄せ付けなくなります。
このような荒廃した里山はイノシシなどの野生動物の隠れ場となり近隣の畑や果樹園における農作物被害を拡大させています。
またヤブだらけの里山はごみが投棄されやすくさらに見通しが悪いと防犯の面から好ましくありません。里山の保全は生物多様性だけでなく地域の安全安心な生活環境を維持するうえからも重要な課題です。
野生鳥獣の被害が発生する地域やごみの不法投棄や見通しが悪く防犯上の問題がある地域では2014(平成26)年度から始まった「ぐんま緑の県民基金市町村提案型事業」の「荒廃した里山平地林の整備」事業を活用し地域住民と市町村が連携し身近な里山や竹林の整備に取り組んでいます。

2 ため池等の周辺整備【農村整備課】
ため池は豪雨や地震等の自然災害により崩壊した場合農地に被害を与えるだけでなく下流の住宅や道路などの公共施設等にも大きな被害を与えることが想定されます。
このため県では2017(平成29)年度から県単独事業として「防災重点ため池」に位置付けられたため池の豪雨耐震対策工事及び老朽化等の理由により自然災害等で崩壊の危険性があるため池の整備を行い下流地域の安全安心の確保を図り景観や生態系に応じた整備を実施しています。
2019(令和元)年度は4地区でため池の堤体改修や保護洪水吐取水施設の改修を実施し2地区の対策工事が完了しました。また更なる整備に向けて2地区の調査と計画作成を行いました。

3 多々良沼公園における自然再生活動の推進【都市計画課】
多々良沼及び城沼周辺において沼に流入する河川の水質等の改善や絶滅種の復活及び減少しつつある希少種の復活を目指し失われてしまった自然の再生保全に向けて2010(平成22)年4月に地域住民NPO学識経験者地方公共団体関係行政機関など多様な主体により「多々良沼城沼自然再生協議会」を設立しました。
2011(平成23)年5月には協議会の目標となる全体構想を策定し「水質」「生態系」「親水性」の目標を掲げました。2014(平成26)年1月には目標達成に向けそれぞれの主体が取り組みやすいよう協議会としての実施計画を策定しその後は実施計画に基づきそれぞれの目標に沿った様々な事業を展開しています。
多々良沼においては例年ヨシ焼きを実施しています。枯れたヨシを焼くことは春に多くの植物に対して芽生えの機会を与え豊かな湿地環境の保全に繋がります。2019(令和元)年度のヨシ焼きは新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため実施することができませんでしたがヨシ焼きに先立って実施するヨシ刈りについては「多々良沼自然公園を愛する会」及び多々良沼公園の指定管理者により一部実施することができました。
ほかには植物水質等のモニタリング調査を例年どおり実施し外来種駆除にも取り組みました。
これからも一人でも多くの参加者とともに自然再生に向けた取組を積極的に進めて参ります。

「多々良沼城沼自然再生協議会」ホームページ
​https://www.pref.gunma.jp/page/19666.html

第6節 特定地域の公害防止対策

第1項 碓氷川柳瀬川流域

1 概要【環境保全課】
(1)経過
富山県で発生したイタイイタイ病(*注1)について1968(昭和43)年5月に厚生省(当時)の考え方が発表されカドミウム(*注2)による環境汚染問題が全国的に注目されました。本県でも碓氷川柳瀬川流域が調査研究の対象地域とされました。
同年県と国が共同で碓氷川柳瀬川流域にある東邦亜鉛(株)安中製錬所の排出水同流域の河川水や川底の泥砂井戸水水稲及び土壌等のカドミウム汚染に関する調査を行いました。この結果から厚生省は1969(昭和44)年3月「カドミウムによる環境汚染に関する厚生省の見解と今後の対応」を発表し碓氷川柳瀬川流域を「要観察地域」に指定しました。それ以来東邦亜鉛(株)安中製錬所の発生源調査及び発生源対策同製錬所周辺の環境保全対策住民保健対策農作物対策等を行っています。
(2)発生源対策
カドミウム硫黄酸化物等の鉱害防止施設設置による改善対策の結果現在では排出濃度は排出基準(*注3)を大幅に下回っています。

(3)損害賠償請求と公害防止協定(*注4)の締結
住民が会社に対して行った損害賠償請求については1986(昭和61)年9月に裁判での和解が成立し両者の間で公害防止協定が締結されました。
その後協定に基づき原告団及び弁護団等による製錬所への立入調査が行われ1991(平成3)年4月には会社と旧原告団等との間で協定書に定めた事項の完了について確認書が取り交わされました。併せて新たな公害防止協定が締結され現在も3年ごとに継続して協定が締結されています。

2 環境調査【環境保全課】
東邦亜鉛(株)安中製錬所周辺の大気汚染及び水質汚濁の状況を知るため環境調査を行いました。

(1)大気調査
ア 浮遊粒子状物質(SPM)中のカドミウム
表2-4-7-1に示す4地点で毎月試料を採取しカドミウムの濃度を測定しています。各地点における空気1平方メートル中のカドミウムの量は表2-4-7-2のとおりです。また過去10年間の調査の結果は図2-4-7-1及び図2-4-7-2のとおりです。SPM濃度は減少がみられカドミウム濃度は横ばいです。過去5年間の年平均値と比較しても大きな変化は見られませんでした。

(*注1)イタイイタイ病:富山県神通川流域に発生した腎病変と骨軟化症などを合併する病気です。身体中の骨がゆがんだりひびが入ったりして患者が「痛い痛い」と訴えることからイタイイタイ病と命名されています。この病気は神通川上流の三井金属鉱業(株)神岡鉱業所が排出したカドミウムが原因となって腎障害骨軟化症をきたしこれにカルシウムの不足などが加わり発症すると考えられています。
(*注2)カドミウム:やや青みを帯びた銀白色の金属で亜鉛鉱物に伴って少量産出します。主な発生源は亜鉛冶金工場カドミウム製錬工場などです。
(*注3)排出基準:「大気汚染防止法」においてばい煙発生施設の排出口から大気中に排出されるばい煙の許容限度をいいます。
(*注4)公害防止協定(環境保全協定):地方公共団体と企業住民団体と企業などの間で公害防止(環境保全)のために必要な措置を取り決める協定のことを言います。公害規制法を補い地域の特殊性に応じた有効な公害対策を弾力的に実施できるため法律や条例の規制と並ぶ有力な公害防止(環境保全)上の手段として利用されています。

イ 降下ばいじん
東邦亜鉛(株)安中製錬所のばい煙発生施設等から排出されるばいじんによる汚染状態を把握するため発生源近くの4地点にダストジャーを設置し自然にあるいは雨によって降下してくるばいじんの総量及びばいじん中のカドミウム量を調査しています。比較のために太田市でも同様に測定しています。

(2)水質底質調査
水質調査は烏川碓氷川柳瀬川の利水地点等の8地点及び東邦亜鉛(株)安中製錬所排水口2地点の計10地点において実施し碓氷川の昭和橋並びに柳瀬川の柳瀬橋及び下の淀橋では毎月その他の地点では年2回実施しました。
2019(令和元)年度の水質調査結果では全ての地点で排水基準及び河川の環境基準に適合していました。

3 住民健康調査【保健予防課】
要観察地域等の住民を対象とした健康調査を2000(平成12)年度まで延べ11,027人について実施しましたが健康被害が疑われる人はいませんでした。

4 土壌汚染防止対策【技術支援課】
(1)農用地土壌汚染対策地域の指定
碓氷川柳瀬川流域については「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」に基づき1972(昭和47)年4月にカドミウムに係る農用地土壌汚染対策地域として118ヘクタールの農用地を指定しました。
以降1973(昭和48)年2月に11.66ヘクタール1974(昭和49)年3月に4.42ヘクタールを追加し合計で134.08ヘクタールが対策地域となりました。

(2)農用地土壌汚染対策計画の策定
指定地域の汚染の防止及び有害物質の除去については農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に基づき1972(昭和47)年8月対策計画を定め1976(昭和51)年3月及び1978(昭和53)年6月に追加指定した農用地を含めた計画に変更しました。

(3)碓氷川流域公害防除特別土地改良事業の実施
1972(昭和47)年から1975(昭和50)年まで農用地土壌汚染対策計画に基づき公害防除特別土地改良事業を実施しました。
有害物質は10~20センチメートルの排土及び客土により除去し事業面積は85.1ヘクタールとなりました。
なお事業費は769百万円となりこのうち75%を「公害防止事業事業者負担法」に基づき事業者(汚染原因者)が負担しました。

(4)事業効果の確認
県では公害防除工事の効果を確認するために指定地域内の農用地の土壌中の有害物質について継続して調査を行っています。
また関係市や生産者団体ではコメ中の有害物質について継続して調査を行っており安全性を確認しています。

(5)農用地土壌汚染対策地域の指定の解除
有害物質の除去や工場や住宅等農用地以外に土地利用が変更される等指定の要件を満たさなくなった場合は指定地域の解除を行うことができます。
こうした農用地について1983(昭和58)年3月に105.20ヘクタールの農用地土壌汚染対策地域の指定を解除しました。
指定の解除により2016(平成28)年度末の指定面積は28.88ヘクタールとなっています。

(6)未解除地域への対応
農用地土壌汚染対策計画の策定から40年あまりが経過しており農用地の利用状況は計画策定時と大きく変わっています。
このため県では未解除となっている農用地の土壌等調査や土地所有者等の意向の確認を継続して行いこの結果に基づき対策計画の見直しを行っています。

第2項 渡良瀬川流域

1 概要【環境保全課】
(1)経過
渡良瀬川流域では明治時代以来足尾鉱山や足尾製錬所などからの排出水や鉱泥等によって田畑は汚染されてきました。戦後になると農家の石灰散布による酸性中和の努力や鉱山施設の改善土地改良事業などによって被害が軽減する傾向にありました。
しかし1958(昭和33)年5月に源五郎沢堆積場が崩れ金属の精錬かす等が流出し再び水稲や麦などの作物に大変な被害が発生しました。この被害に対し鉱毒根絶の運動が再燃し同年8月には「渡良瀬川鉱毒根絶期成同盟会」が結成されました。
県は1952(昭和27)年から銅(*注5)対策として各種の調査などを行ってきましたが1970(昭和45)年に収穫された米がカドミウムに汚染されていたため1971(昭和46)年度にカドミウムの発生源を探す調査をしました。その結果1972(昭和47)年4月に「流域水田土壌のカドミウムによる汚染源についてはその原因が古河鉱業(株)の鉱山施設に由来するものであると結論せざるを得ない。」ことを発表しました。

(2)公害防止協定の締結
県は栃木県桐生市及び太田市とともに1976(昭和51)年7月30日古河鉱業(株)(現在:古河機械金属(株))との間に公害防止協定を結びさらに1978(昭和53)年6月15日協定に基づく協定細目を結びました。

(3)損害賠償請求
汚染された田畑への被害等については被害の大きかった太田市毛里田地区の住民が「公害紛争処理法」に基づき公害等調整委員会に古河鉱業(株)への損害賠償等を求める調停を申請し1974(昭和49)年5月に被害補償金15億5千万円で調停が成立しました。この調停に続いて古河鉱業(株)と直接交渉をしていた「桐生地区鉱毒対策委員会」は1975(昭和50)年11月に解決書を締結し被害補償金2億3千5百万円で合意し同様に「太田市韮川地区鉱害根絶期成同盟会」も1976(昭和51)年12月に解決書を締結し被害補償金等1億1千万円で合意しました。さらに毛里田地区被害住民のうち申請もれになっていた住民が公害等調整委員会に損害賠償を求める調停を申請し1977(昭和52)年12月に390万円で和解しました。

2 環境調査【環境保全課】
(1)河川通年調査
渡良瀬川では本県に関係する環境基準点(4地点)で通年調査が行われています。県ではこのうち最も上流に位置する高津戸地点において毎月の水質の調査をしています。

(2)降雨時調査
2019(令和元)年5月21日寒冷前線の通過10月13日台風第19号に伴い足尾地域に大量の降雨があり渡良瀬川が増水しました。県では桐生市及び太田市とともに鉱山施設や周辺河川の水質調査を実施しました。また渡良瀬川上流部(沢入発電所取水堰)に設置した自動採水器(オートサンプラー)により1時間に1回の採水及び水質調査を行い降雨時調査を補完しました。結果概要は表2-4-7-4のとおりです。
その結果鉱山施設からは公害防止協定に基づき定められた公害防止協定値を超える排出水はありませんでした。
古河機械金属(株)に対しては渡良瀬川の水質保全のため引き続き公害防止協定の遵守を要請しました。
過去5年の降雨時調査の実施総数は12回(2015[平成27]年度:2回2016[平成28]年度:2回2017[平成29]年度:3回2018[平成30]年度:3回2019[令和元]年度:2回)です。

(*注5)銅(Cu):赤味を帯びた金属で湿った空気中で腐食して塩基性炭酸銅を生じ硝酸その他の酸化性酸に溶解します。体内に蓄積する毒物ではなく生体内で各種の酵素の作用に関与し生理代謝機能に不可欠な金属で成人は1日に2~3ミリグラム必要とされています。極めて高濃度な銅粉によって気道刺激がおこり発汗歯ぐきの着色が起こることが報告されています。

3 土壌汚染防止対策【技術支援課】
(1)農用地土壌汚染対策地域の指定
渡良瀬川流域については「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」に基づき1972(昭和47)年5月にカドミウムに係る農用地土壌汚染対策地域として37.62ヘクタールの農用地を指定しました。
以降1974(昭和49)年3月にカドミウム対策地域として指定した37.62ヘクタールを含めて銅に係る対策地域として359.80ヘクタール1999(平成11)年2月に1.52ヘクタール2003(平成15)年8月に1.17ヘクタール2004(平成16)年12月に0.29ヘクタールを銅に係る対策地域として追加指定し合計で362.78ヘクタールが対策地域となりました。

(2)農用地土壌汚染対策計画の決定
指定地域の汚染の防止及び有害物質の除去については「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」に基づき1980(昭和55)年10月に対策計画を定めその後1999(平成11)年3月及び2005(平成17)年3月に追加指定した農用地を含めた計画に変更しました。

(3)渡良瀬川流域地区公害防除事業の実施
1982(昭和57)年から1999(平成11)年まで及び2005(平成17)年に農用地土壌汚染対策計画に基づき公害防除特別土地改良事業を実施しました。
有害物質は銅対策地域で5~16センチメートルカドミウム対策地域では20センチメートルの排土客土等により除去し事業面積は298.86ヘクタールとなりました。
なお事業費は5,438百万円となりこのうち51%を「公害防止事業費事業者負担法」に基づき事業者(汚染原因者)が負担しました。

(4)事業効果の確認
県では公害防除工事の効果を確認するために指定地域内の農用地の土壌及びコメ中の有害物質について継続して調査を行っています。
また関係市町や農業者団体で構成される渡良瀬川鉱毒根絶期成同盟会では渡良瀬川の水質調査や足尾銅山周辺事業地における鉱害防止事業の実施状況等の調査を行い再び汚染されることのないよう監視活動を行っています。

(5)農用地土壌汚染対策地域の指定の解除
有害物質の除去や工場や住宅等農用地以外に土地利用が変更される等指定の要件を満たさなくなった場合は指定地域の解除を行うことができます。
こうした農用地について1986(昭和61)年3月に57.55ヘクタール1990(平成2)年1月に83.71ヘクタール1994(平成6)年1月に167.78ヘクタール2017(平成29)年12月に42.02ヘクタール2019(令和元)年12月に6.23ヘクタールの農用地土壌汚染対策地域の指定を解除しました。
指定の解除により2019(令和元)年度末の指定面積は5.49ヘクタールとなっています。

4 公害防止協定【環境保全課】
(1)公害防止協議会
公害防止協定(1976[昭和51]年7月30日締結)及び公害防止協定細目(1978[昭和53]年6月15日締結)に基づき各当事者(三者:栃木県群馬県古河機械金属(株)四者:群馬県桐生市太田市古河機械金属(株))で構成しています。
2019(令和元)年度は8月に定例の公害防止協議会(三者及び四者)を開催しました。

(2)立入調査の実施
古河機械金属(株)が行っている鉱害防止事業の実施状況や鉱廃水許容限度の遵守状況を監視するため群馬県桐生市太田市による立入調査を実施しました。
ア 平水時水質調査
7回調査を行い河川や坑廃水の水質に異常がないことを確認しました。
イ 鉱害防止事業進捗状況調査
立入調査を2回行い使用済堆積場の緑化の進捗や坑廃水処理施設の管理状況を確認しました。

(3)山元対策
足尾鉱山には13の堆積場があり現在使用中の堆積場は簀子橋堆積場だけです。使用済の堆積場については古河機械金属(株)が鉱害防止事業等を行ってきた結果渡良瀬川の水質は平水時では問題がみられなくなりました。
一方で降雨時には渡良瀬川の流量が大きく増加するのに併せ一時的ですが渡良瀬川の重金属濃度が環境基準値を超過することがあります。このため同社に対して堆積場の管理の徹底や更なる鉱害防止事業の実施を要請しています。
2011(平成23)年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響で再び源五郎沢堆積場が崩落する事故が起きました。これを踏まえて同社に対して再発を防止する恒久対策事業を完工するよう要請を行いました。同社は2015(平成27)年7月30日までに恒久対策工事を完了させ関東東北産業保安監督部へ特定施設の使用開始届を提出しました。

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