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“谷田川北部地区”では、経営体育成基盤整備事業により農地や農業用排水施設を一体的に整備し、農地の大区画化や担い手農家への農地集約を図りました。
今回、本地域の担い手として活躍している農業者と土地改良区の取り組みについて紹介します。
担い手農家の野村氏と藤倉氏
事業前は、稲作を主体とした営農を行っていましたが、1区画当たり10アール程度の比較的小規模な水田が分散していたため、効率的な農作業ができませんでした。
本地域は湿地帯であったため、湿田が多く、各水田の地力などに差があり、収穫した米の品質に差が生じてしまうことから、生育管理が大変でした。
また、裏作として、麦や野菜などの栽培には不適な状況でした。
事業前の農地(湿田)
稲作に使用する水は、川からの取水と井戸による地下水のくみ上げで賄っていました。
川からの取水は各水田までU字溝水路で導いた後、その水路を堰き止めて水を引き入れていました。
このため、細かな配水調整や安定的な用水供給が困難であったので、大量の水を使う代掻き期には、上流域と下流域の農家でたびたび水争いが起こっていました。
分散していた小規模区画の水田を1か所にまとめ、1ヘクタールの大区画となったことにより、代掻き、田植え、稲刈り、草刈りなどの作業効率が向上しました。
また、作業時間は、事業前の半分程度に短縮しました。
区画面積グラフ
事業後の田植え
これまで水田ごとに差のあった米の品質は均一となり、収量も増加しました。また、以前は湿田であった農地が、暗渠排水の整備により乾田化され、麦や野菜などの栽培が可能になりました。
用水路は、以前の開水路形式からパイプライン形式に整備を行いました。パイプライン形式の採用により、平等な水量配分が可能となりました。
農地の大区画化による作業時間の短縮や、パイプラインの導入による用水管理の合理化が図れたことから、複合経営として取り組んでいるキュウリの栽培に時間を費やすことができるようになりました。
また、水田の汎用化や時間が確保されたことにより、ゴーヤやナス、ホウレンソウなど、新たな野菜の栽培に取り組み始めています。
事業実施により、新たな農業経営に取り組める環境が整ったことから、農業への可能性が更に開けたように感じています。
そして、その可能性を感じてくれた息子夫婦が、後を継ぐ決心をしてくれました。
野村氏と息子さん夫婦
大区画ほ場の代掻き
大区画ほ場の稲刈り
裏作の麦
ナスの露地栽培