『児童生徒の視力測定の手引き』について
平成24年10月11日に児童生徒の健康診断マニュアルが改訂されました。その改訂を受けて、群馬県の児童生徒の視力検査の方法について「健康診断検討委員会」で検討し、弱視の早期発見と早期治療を主眼に、幼児・小学校低学年(1・2年生)の問診票や視力の測定方法を変更しました。群馬県としての視力測定の方法を以下に示します。
視力の測定
検査の目的と意義
視力は出生後より発達しますが、屈折異常や斜視などの種々の要因によって発達が阻害されると弱視になります。弱視とは器質的病変が無く、視力の低下した状態であり、眼鏡やコンタクトレンズによっても矯正視力が不良です。視力が完成する6歳頃までに弱視を治療しなければ、生涯に渡って矯正視力は改善しません。このため弱視は早期発見、早期治療が原則であり、視力が発達する幼児、児童の視力検査は重要です。
学校における視力検査は、学習に支障のない見え方(以下視力という)であるかどうかの検査です。視力は学習にも影響を与えるものであり、重要な検査です。
視力検査の際、裸眼視力を測定することが望ましいが、コンタクトレンズ等を常用している者については、裸眼視力の検査を省略することができます。これは日常の学校生活での見え方を知ることを目的としているからです。学校における視力検査は、視力スクリーニングであるため、0.3、0.7、1.0の3指標によって判定します。
事前調査
幼児では保護者の協力が必要であるために、視力測定を行うにあたって保護者の方への説明、事前の問診票への記入、視力測定練習などが検査の補助となります。幼児の視力測定(定期健康診断・就学時健康診断)においては、別紙1、2を活用します。
検査の実際
1.幼児(就学児も含む)と小学校低学年(1・2年生)の視力測定
準備
視力表:
国際基準に準拠したランドルト環を使用した視力表の0.3、0.7、1.0の指標を使用します。幼児、小学校低学年では並列(字づまり)視力表では読みわけ困難のために視力が出にくいので、単独(字ひとつ)視力表を使用します(図1参照)。破損、変色、しわのある視標は使用しないようにし、視標の白地(視標背地)が汚れたり黄ばんだりした時は新しいものと交換してください。視力表(視標)は5メートル用とします。
視力表から5メートル離れた床上に白色テープなどで印を付けておきましょう。
照明:
明るい室内で行い、視標の白い部分の明るさは、まぶしすぎて、あるいは暗すぎて見えにくくならないように配慮します。視標面の照度は500~1,000ルクスとします。
遮眼器:
幼児・小学校低学年(1・2年生)では測定用検眼枠と専用の遮閉板(黒板)を使用します。検眼枠のフレームサイズは50~52mmが望ましい。
眼鏡使用者の片眼遮閉用には、ティッシュペーパーなどを眼鏡の内側に入れます。
ティッシュペーパーなどは、使い捨てとし、再使用しないようにします。
充血、眼脂があり、結膜炎などの疑いのある場合には検査は中止し、眼科受診を勧めます。
検査場所:
あまり狭くない部屋でカーテンを使用し、直射日光が入らないように注意します。目移りするような掲示物は片付け、騒音や雑音の入らない落ち着いた雰囲気で検査できるようにしましょう。扉は閉めて、同じ部屋に被検者以外の幼児、児童を入れないことが望ましい。やむをえず、幼児・児童を複数入室させる場合には、被検者が検査に集中できるように配慮します。また、視力表の視標は、背後の窓などで逆光にならないようにします。
検査の方法
幼児、小学校低学年では、検査に対する不安や不慣れのために正確な検査結果が得られないこともあるので、事前に学級の保健指導等で練習することも考えられます。0.1の視標を用い、円の切れ目の方向を指示することができるように指導しておくことも有効です。幼児では1週間前より家庭でランドルト環の単独(字ひとつ)視標で練習をするとよいでしょう。
- 視標から眼までの距離は5メートルとし、立たせるか椅子にかけさせます。
- 眼の高さと視標の高さはほぼ等しく、視標は垂直に提示して視線と視標面は直角になるようにします。
- 検査員は二人一組が望ましい。検査員Aは5メートル離れた位置で視標を提示し、検査員Bは被検者の近くにつきます。
- 検査員Aは縦のみ、横のみの正解では、乱視を見逃すことがあるので、縦横のバランスが偏らないように視標を提示します。検査員Bは、被検者が検査中に眼を細めていないか、顔を傾けていないか、眼鏡がはずれていないか、横からのぞきこんで見ていないかを確認します。また、飽きてしまうと視標を見ないことがあるので、検査員Bは声をかけ測定に集中するように促します。
最初に検眼枠の左眼に遮閉板を入れ、右眼から検査をします。眼を細めないで視標のランドルト環の切れ目を答えさせます。左眼についても同様に行います。
※検眼枠に遮閉板を挿入する箇所が複数ある場合は、眼に最も近い場所に挿入します。 - はじめに0.3視標から開始するのを原則とします。上下左右のうち4方向を任意に見させ、視標の提示時間は約5秒間、4方向のうち3方向を正しく判別できれば「正しい判別」と判定します。判定できれば、次に0.7の視標にうつります。4方向のうち2方向以下の場合は「判別できない」と判定します。0.7の視標も同様に4方向のうち3方向を判別できれば「正しい判別」とします。判定できれば、次に1.0の視標で実施します。同様に1.0の視標で「正しい判別」ができれば右眼の検査は終了し、右眼の判定をAとします(表1参照)。左眼も同様に検査を実施します。
- 字ひとつ視標の方向を変えるときは、裏返してくるりと回しながら変えていきます。判別はランドルト環の切れ目が上下左右にあるもののみとします。斜め方向での判別は不要です。
- 眼鏡やコンタクトレンズ等を常用している者については、検査に問題ある場合や本人が希望しない場合は、裸眼視力の検査は省略することができます。
- 眼鏡をときどき使用している者については、裸眼視力の検査が終わった後、眼鏡使用時の視力を検査します。
- 眼鏡を使用したまま検査をする場合は、眼鏡レンズをよく拭いて、汚れをとっておきます。
- コンタクトレンズ装用者の裸眼視力が必要な場合は、眼科医の指導、指示に従います。
判定基準
1.眼科への受診を勧める幼児、児童
1)幼児では問診票で該当する項目が一つでもあった者
2) 幼児では視力検査で左右どちらか片方でも、年長児では1.0未満、年少・年中児は0.7未満である者
3) 児童では視力検査で左右どちらか片方でも1.0未満である者
4) 視力測定中、次のようなことが認められた者
(1) 片眼をかくすと異常に嫌がる者
(2) 検査中どうしても眼を細めたり、顔を傾けたり、顔を曲げてのぞきながら検査をした者
(3) 検査中眼が揺れている者
2.すでに眼科での治療を受けている者に関しては、主治医への通院を続けるよう指示します。
視力検査結果と受診報告書
保護者への眼科受診のおすすめと受診報告書の様式を示しました。(様式1.様式2)
眼科受診のおすすめは、検診後すみやかに通知してください。
2.小学校3年生以上の視力測定
準備
視力表:
国際基準に準拠したランドルト環を使用した視力表の0.3、0.7、1.0の指標を使用します。単独(字ひとつ)視力表や学校用並列(字づまり)視力表を使用します。破損、変色、しわのある視標は使用しないようにし、視標の白地(視標背地)が汚れたり黄ばんだりした時は新しいものと交換してください。視力表(視標)は5メートル用とします。
視力表から5メートル離れた床上に白色テープなどで印を付けておきましょう。
照明:
明るい室内で行い、視標の白い部分の明るさは、まぶしすぎて、あるいは暗すぎて見えにくくならないように配慮します。視標面の照度は500~1,000ルクスとします。
遮眼器:
片眼ずつ検査する時に、眼を圧迫しないで確実に覆うためには、検眼枠用の遮閉板(黒板)の使用が望ましいが、遮眼子などでもよいとします。手のひらでの遮閉は不可とします。
眼鏡使用者の片眼遮閉用には、眼鏡用遮閉板のほかに、ティッシュペーパーなどを使用します。
遮蔽用の器具は直接眼に触れることもあり、感染予防のため清潔に留意し、感染の恐れがある場合は適時アルコールなどで消毒する。ティッシュペーパーなどは、使い捨てとし、再使用しないようにします。
充血、眼脂があり、結膜炎などの疑いのある場合には検査は中止し、眼科受診を勧めます。
指示棒:
並列(字づまり)視力表の視標をさすための棒で、視力表に手指などが触れて汚れたり傷つけたりすることのないように使用します。
検査場所:
あまり狭くない部屋でカーテンを使用し、直射日光が入らないように注意します。目移りするような掲示物は片付け、騒音や雑音の入らない落ち着いた雰囲気で検査できるようにしましょう。扉は閉めて、同じ部屋に被検者以外の児童を入れないことが望ましい。視力表の視標は、背後の窓などで逆光にならないように配慮します。
検査の方法
- 視標から眼までの距離は5メートルとし、立たせるか椅子にかけさせます。
- 眼の高さと視標の高さはほぼ等しく、視標は垂直に提示して視線と視標面は直角になるようにします。
- 検査員は5メートル離れた位置で視標を提示します。
検査員は縦のみ、横のみの正解では、乱視を見逃すことがあるので、縦横のバランスが偏らないように視標を提示します。被検者が検査中に眼を細めていないか、顔を傾けていないか、眼鏡がはずれていないか、横からのぞきこんで見ていないかを確認します。
検査中に他の子どもたちが被検者の視野に入るなど、干渉が入らないように配慮します。 - 最初に左眼を遮眼器等(遮閉板、黒板、遮眼子)で圧迫しないように、のぞき見していないかを注意しながら遮蔽します。右眼から眼を細めないで視標のランドルト環の切れ目を答えさせます。左眼についても同様に行います。
- はじめに1.0の視標から開始します。上下左右のうち3方向を任意に見させ、視標の提示時間は約5秒間、3方向のうち2方向を正しく判別できれば「正しく判別」と判定します。判定できれば右眼の検査は終了し、右眼の判定をAとします。判定できなければ、次に0.7の視標にうつります。3方向のうち2方向判別できれば右眼の判定をBとします。3方向のうち1方向以下の場合は「判別できない」と判定し、0.3の視標に移ります。0.3の視標も同様に3方向のうち2方向を判別できれば「正しく判別」としCとします。判別できない場合はDとなります。(表2参照)左眼も同様に検査を実施します。
- 小学校3年生以上では、単独(字ひとつ)視力表もしくは並列(字づまり)視力表を使用します。
- 眼鏡やコンタクトレンズ等を常用している者については、検査に問題ある場合や本人が希望しない場合は、裸眼視力の検査は省略することができます。
- 眼鏡をときどき使用している者については、裸眼視力の検査が終わった後、眼鏡使用時の視力を検査します。
- 眼鏡を使用したまま検査をする場合は、眼鏡レンズをよく拭いて、汚れをとっておきます。
- コンタクトレンズ装用者の裸眼視力が必要な場合は、眼科医の指導、指示に従います。
判定基準
1.眼科への受診を勧める児童・生徒
1)視力検査で左右どちらか片方でも1.0未満である者
2)視力測定中、次のようなことが認められた者
(1)片眼をかくすと異常に嫌がる者
(2)検査中どうしても眼を細めたり、顔を傾けたり、顔を曲げて覗きながら検査をした者
(3)検査中眼が揺れている者
2.すでに眼科での治療を受けている者に関しては、主治医への通院を続けるよう指示します。
視力検査結果と受診報告書
保護者への眼科受診のおすすめと受診報告書の様式を示しました。(様式1.様式2)
眼科受診のおすすめは、検診後すみやかに通知してください。
別紙1 視力測定の説明、問診票、視力測定の練習(幼児)
別紙2 視力検査の練習法