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8 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした社会づくりについて
オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本はもとより世界の人々に夢と希望を与え、平和を象徴するスポーツの祭典であり、現在、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、オールジャパン体制で準備が進められている。
人口減少や国際競争の激化に直面する我が国が、国際レベルの競争力を保ち、グローバル社会の中で中長期的な成長を確保するためには、大会開催というまたとない機会を弾みにグローバル化への対応を一段と進め、世界の成長を取り込む必要がある。
一方、かつて、東京オリンピックをまたいだ時代には、国の主導のもと、労働力や物を首都圏に集約させ、投資し、高速道路、港湾、住宅、下水道、商業ビルなどのハード整備を中心に日本全体に広がる大きな成長を生み出してきた。
半世紀を経て、今回の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の時期には、日本は少子高齢化社会の只中にあり、かつて整備されたこれらの社会資本は老朽化の一途にある。国は地方の創生を打ち出す中、社会資本全体としてどう整備していくのか考えていかねばならない。
2度目の大会を迎え、国は、高度経済成長期から今日までを振り返り、新たにこの国をどのような方向に導くのか、次世代に対して何を残していくか、その方針・ビジョンを示すべき時であり、今この機会に、以下の事案について要望を行うものである。
1 首都圏空港の機能強化
国際航空の拠点である成田・羽田空港については、75万回化する発着枠を最大限に活用するとともに、施設面の改善や人員の増加など出入国審査手続の更なる円滑化・迅速化を図ること。
また、今後も拡大が見込まれるLCCやビジネスジェットの需要に対応するために、首都圏周辺の飛行場の活用等も含め、首都圏空港機能の更なる強化に向け検討を進めること。
2 道路ネットワークの整備の加速
都心部の慢性的な交通混雑の緩和や、災害時における迂回機能を確保するために道路ネットワークの早期整備は不可欠である。
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催を控え、大会開催期間中の「人」と「もの」のスムーズな流れを確保するためにも、首都圏中央連絡自動車道や東京外かく環状道路等の高速道路ネットワークの整備を加速すること。
また、我が国の玄関口である成田国際空港と東京都心間の交通円滑化に向け、これらを結ぶ首都圏中央連絡自動車道の大栄・横芝間や北千葉道路等の道路整備を加速するとともに、京葉道路等の渋滞対策についても早期に実施すること。
あわせて、これらの高速道路がネットワークとしての機能を十分に発揮できるよう、環状道路の整備に合わせて2016年に一体的で利用しやすい料金体系を導入すること。
3 鉄道網の整備促進
都心と成田・羽田両空港間の鉄道アクセスの改善に向け、国の責任において国家プロジェクトとして「都心直結線」の検討を進めること。
また、競技会場が沿線に集中するJR京葉線と東京臨海高速鉄道りんかい線との相互直通運転の実現など、都市鉄道のネットワーク性の向上を図ること。
さらに、大会開催後の未来を見据え、長期的視点に立って成田・羽田両空港に同一空港並みの利便性を実現させるため、国策として両空港間を結ぶリニアモーターカーの検討を開始すること。
4 訪日外国人旅行者等の受入環境の整備
外国人旅行者に安心して快適に旅行・滞在してもらえるよう、観光地や観光施設をはじめ、鉄道や駅などの公共交通機関や公共施設、コンビニや飲食店などの商業施設、道路等における案内表示の多言語化を図るとともに無料公衆無線LAN環境の整備を促進すること。
また、多言語通訳・翻訳アプリ技術等の研究開発を強化したり、医療通訳が配置された医療機関や救急体制の充実など、外国人旅行者が移動・滞在しやすい環境の整備を図ること。
さらに、日本ならではの温かい「おもてなし」を充実させ、誰もが安心して旅行を楽しむことができるように、外国人観光案内所の増加や語学ボランティアガイド等の養成を充実させるとともに、バリアフリー化の促進を図ること。
5 日本の魅力・食文化の発信強化
「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2014」の推進による効果的な訪日プロモーションを実施するとともに日本各地の多彩な魅力のプロモーションを強化すること。
また、和食や日本産酒類、農林水産物など日本食文化・日本食材の魅力の発信について強化を図ること。
6 治安対策、防災対策の更なる強化
世界から高い評価を受けている安全で安心な日本の治安は、まさに日本の誇りである。世界最高水準の治安を維持し、「世界一安全な日本」を実現するため、警察活動における人的・物的基盤を強化するとともに、テロ対策やサイバー攻撃対策を強化すること。
また、街頭防犯カメラの設置を促進するなど犯罪の起こりにくい環境づくりを進め、一層の治安の確保を図ること。
さらに、国内外からの多数の来訪者の安全確保のため、地震・津波等の災害時における対応の強化を図ること。
7 感染症対策の強化
海外との交流が進むほど、世界各国から日本に国内発生のない感染症が持ち込まれる危険性が高まることから、検疫による水際対策の強化を図ること。