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公文書開示審査会答申第164号
「平成25年度国立がん研究センター職員が群馬県から依頼を受けて実施した講演会等の情報全てのうち、別表の書類。(薬務課に係る部分)」の公文書不存在決定に対する異議申立てに係る答申書
群馬県公文書開示審査会第二部会
第1 審査会の結論
群馬県知事が行った決定は妥当であり、取り消す必要はない。
第2 諮問事案の概要
1 公文書開示請求
異議申立人(以下「申立人」という。)は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第11条の規定に基づき、群馬県知事(以下「実施機関」という。)に対し、平成26年9月27日付けで、「平成25年度に国立がん研究センター職員が群馬県から贈与を受けて実施した講演等の情報全て。少なくとも、同年2月2日に講演等が行われたと確認している。たとえば、起案、議事録、会議報告書、アンケート、チラシ広告及びインターネット上の告知の印刷・設置・配布、講師の選定、礼金の有無や金額、旅費、講演・講座の依頼文、レジュメ、写真、映像、音声、発表の原稿、参加者数、キャンセル数、申込数、職員側の出席者、上記の添付文書、上記の関連文書等々、とにかく全て。なお、非開示・部分開示・不存在・存否応答拒否の部分については、全てその通知が必要です。請求した情報を全部であれ一部であれ廃棄した場合には、当該情報は破棄したということを示す情報も全て開示請求の対象に含めます。そして、当該情報の保存期間および保存期間の変更および保存期間に関する分類等を示す情報も、全て開示請求の対象に含めます。」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 実施機関の決定
実施機関は、平成26年10月14日、本件請求に係る公文書のうち、下記公文書(以下「本件公文書」という。)について存在しないことを確認し、公文書不存在決定(以下「本件処分」という。)を行い、不存在の理由を次のとおり付して、申立人に通知した。
なお、本件公文書以外の本件請求に係る公文書について、別途、公文書開示決定及び公文書部分開示決定を行った。
本件公文書
- 議事録、会議報告書、アンケート、チラシ広告、インターネット上の告知の印刷・設置・配布、映像、音声、発表の原稿、廃棄したということを示す情報。
不存在の理由
- 請求のあった公文書については、文書を作成していないため、文書は保有して いない。
- 請求のあった公文書については、昨年度作成した文書であり、いずれも保存期 間が3年であるため、文書の廃棄は行われていない。
3 異議申立て
申立人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づき、平成26年10月17日付けで本件処分を不服として実施機関に対し異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
4 諮問
実施機関は条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して平成26年11月21日付けで本件異議申立事案の諮問(以下「本件事案」という。)を行った。
第3 争点(本件公文書の公文書不存在決定について)
本件公文書を不存在とした実施機関の決定は妥当であるか。
第4 争点に対する当事者の主張
1 申立人の主張要旨
- 申立人に対する本件処分を取り消して、請求した情報のうち、廃棄したことを示す情報を除いた情報を全部開示するとの決定を求める。
- 不存在部分は、全く作成も取得もともにしていないとは考えられず、実施機関が気付いていない情報がまだ他にもあるのではないか。
2 実施機関の主張要旨
- 実施機関は、本件請求を「平成25年度に国立がん研究センター職員が群馬県から依頼を受けて実施した講演等の情報全て」と解釈し、平成26年2月2日に開催した「がん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用推進のための講習会」(以下「本件講習会」という。)関係書類を本件請求に係る公文書として特定した。
- 実施機関が開催した本件講習会の関係書類、計20件の公文書を特定した上で本件請求と突合したところ、本件公文書である9件の公文書が存在しなかったため不存在決定とした。
- 議事録及び会議報告書については会議ではないため、作成していない。アンケート、映像及び音声についても作成又は取得していない。インターネット上の告知の印刷・設置・配布については、本件講習会は医療関係者を対象とした講習会であるため、一般向けとなるインターネット上の告知は行っていない。チラシ広告については、医療関係者向けの開催案内は別途開示しているが、実施機関では一般向けのチラシであると判断したが、当該文書は作成していない。講師の発表の原稿については、講師の発表スライドをまとめた講演要旨集を別途開示しているが、実施機関では発表の原稿を講師が発表する内容を詳細に記載した原稿であると判断したが、当該文書は取得していない。
第5 審査会の判断
1 争点(本件公文書の公文書不存在決定について)
(1)「公文書を保有していない」という類型には、1そもそも作成又は取得していない、2作成又は取得したが保存期間満了により廃棄済み、及び3開示請求の対象となる「公文書」ではないという3つの場合があるが、実施機関は、1のそもそも作成又は取得していないと主張しているので、本件公文書が実施機関における事務処理において作成又は取得されるものであるか否かを検討する。
なお、申立人は、本件請求において「廃棄したということを示す情報」の開示を求めていたものの、本件異議申立てにおいて「廃棄したということを示す情報」を異議申立ての対象から除くとしていることから、当審査会においては審査しない。
(2)本件公文書が作成又は取得されたかの検討について
- 議事録、会議報告書及び音声
実施機関は、本件講習会が会議ではないことから議事録及び会議報告書を作成せず、録音もしなかった旨主張する。
実施機関の主張する条例第4条第1項第3号は、実施機関に「その他実施機関が定める事項」の公表を義務付けており、その「定める事項」の内容の一つとして、情報公開の総合的な推進に関する事務取扱要綱(以下「公開要綱」という。)第2条第3項第4号において、「地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項に基づき設置されている附属機関(以下「附属機関」という。)の会議結果の概要」を公表することが定められている。また、条例第8条において実施機関は、附属機関及び要綱又は要領に基づき設置された附属機関に類するもの(以下「類するもの」という。)の会議の公開に努めるものと定められ、さらに、意思決定の透明性の確保を目的として、審議会等の会議の公開に関する指針及びその運用において、附属機関の議事録又は会議結果の概要を公表するものとされ、類するものについても、公表に努めるものとされている。
この点について、地方自治法第138条の4第3項は「地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員会、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる」と規定しているところ、本件講習会は、実施機関が主催した、医療関係者を対象とした講習であって、法律又は条例に基づき設置される自治紛争処理委員会、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関のいずれにも当たらず、要綱又は要領に基づき設置されたものでもないことから、附属機関及び類するものに当たらない。さらに、本件講習会は、今後継続して審議又は検討を行い、何らかの意思決定を予定した会議ともいえないことから、条例第4条第1項第3号の内容を規定する公開要綱第2条第3項第4号及び条例第8条の会議に該当しない。
そうであれば、本件講習会については、条例上、議事録又は会議結果の概要の公表が義務づけられているものとはいえず、努力義務も課されていないことから、実施機関が議事録又は会議結果の概要を作成していないことに何ら不自然、不合理な点はない。また、議事録又は会議結果の概要の作成が義務づけられておらず、努力義務も課されていないことから、それらを作成するための音声を取得していないことについても、何ら不自然、不合理な点はない。
したがって、事務処理において議事録、会議報告書及びそれらを作成するために取得される音声を保有していないとする実施機関の上記主張に特段の不合理な点があるとはいえない。 - アンケート及び映像
実施機関は、アンケート及び映像は作成又は取得していないと主張する。
この点について、講習会等において、今後の参考とするため参加者に対しアンケートを実施することは多々あるが、そもそもアンケートを実施するか否かは主催者の裁量に属するところであり、本件講習会に関してアンケートを作成しなかった理由についての実施機関の説明に不合理な点は認められない。また、実施機関は、映像と別に記録用の写真を取得していることから、事務処理上、重ねて記録用の映像を取得する必要はなかったと考えられる。
したがって、事務処理においてアンケート及び映像を保有していないことに不都合な点は認められないことから、実施機関の上記主張に特段の不合理な点があるとはいえない。 - 案内チラシ及びインターネット上の告知
実施機関は、本件講習会の対象者は医療関係者であるから、一般県民に周知するための案内チラシ及びインターネット上の告知は作成していない旨主張する。
この点について、本件講習会の出席者名簿を確認したところ、確かに医師、看護師、薬剤師等の医療関係者が出席しており、一般県民が出席している事実は認められなかった。
したがって、事務処理において案内チラシ及びインターネット上の告知を保有していないことに不都合な点は認められないことから、実施機関の上記主張に特段の不合理な点があるとはいえない。 - 講師の発表原稿
実施機関は、講師自らの発表原稿については取得していない旨主張する。
この点について、講習会等を開催する場合、実施機関が講師から講演資料を取得し受講者に配布することで足り、講師自身の発表原稿を受講者に配布する必要は無いことから、当該原稿を取得していないとする実施機関の説明に不合理な点は認められない。
したがって、事務処理において講師の発表原稿を保有していないことに不都合な点は認められないことから、実施機関の上記主張に特段の不合理な点があるとはいえない。
(3)審査会の調査について
申立人は、本件公文書が「全く作成も取得もともにしていないとは考えられず、実施機関が気付いていない情報がまだ他にもあるのではないか」と主張しているため、当審査会は、実施機関に対して条例第30条第4項に基づく調査を実施し、本件公文書を作成、取得又は保有の有無を確認するため、薬務課において公文書の確認を行ったが、本件公文書として改めて特定すべき公文書の存在は認められなかった。
(4)以上のことから、本件公文書を不存在とした実施機関の判断に、特段の不合理な点は認められない。
2 結論
以上のことから、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
年月日 | 内容 |
---|---|
平成26年11月21日 | 諮問 |
平成27年 1月13日 | 実施機関からの理由説明書を受領 |
平成27年 3月 9日 | 異議申立人から意見書を受領 |
平成27年 6月 3日 (第45回 第二部会) |
審議(本件事案の概要説明) |
平成27年 7月16日 (第46回 第二部会) |
審議(実施機関の口頭説明) |
平成27年 8月31日 (第47回 第二部会) |
審議 |
平成27年10月26日 (第48回 第二部会) |
審議 |
平成27年11月27日 (第49回 第二部会) |
審議 |
平成28年 1月28日 (第50回 第二部会) |
審議 |
平成28年 3月22日 (第51回 第二部会) |
審議 |
平成28年 3月28日 | 答申 |