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動物レッドリスト(2012年改訂版)
群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編の改訂について
1 背景・目的
野生生物を取り巻く環境は、年毎の気候の差異や他の生物の繁殖状況、開発や管理放棄など人による土地利用の変化、急激な過剰採取、外来生物の侵入、保護活動による回復など様々な要因から影響を受けており、野生生物の生息・生育状況は常に変動しています。
絶滅のおそれのある野生生物を保護するためには、その実態を知ることが不可欠です。常に変動する野生生物の生息・生育状況を常時確認することは難しいとしても、定期的な調査によって状況を確認し傾向を把握しておく必要があります。また、新たな生息地・生育地が発見されたり、新たな知見により学術的な取り扱いが変更されることもあります。このような変化に対応するため、レッドリストやレッドデータブックは適宜見直す必要があります。
群馬県では、2002年に発刊したレッドデータブック動物編について、その後の変化への対応や、より現況に即した内容に見直すため、2008年(平成20年度)に改訂準備に着手し、2012年(平成24年度)に初めての改訂を行いました。
2 結果
(1)今回評価対象とした種数とその内訳、前回評価との対比
今回の評価(2012年) | 計 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
絶滅 | 野生絶滅 | 絶滅危惧1類 | 絶滅危惧2類 | 準絶滅危惧 | 情報不足 | 掲載なし | |||
前回の評価 (2002年) |
絶滅 | 6 | 4 | 3 | 6 | 19 | |||
絶滅危惧1類 | 2 | 56 | 15 | 13 | 24 | 14 | 124 | ||
絶滅危惧2類 | 10 | 33 | 31 | 6 | 27 | 107 | |||
準絶滅危惧 | 4 | 13 | 53 | 24 | 40 | 134 | |||
注目 | 6 | 8 | 13 | 60 | 50 | 137 | |||
地域個体群 | 3 | 2 | 5 | ||||||
掲載なし | 1 | 5 | 21 | 23 | 92 | 142 | |||
計 | 9 | 85 | 90 | 136 | 209 | 139 | 668 |
今回の改定版(2012年)で評価対象となった種の総数は529種で、前回(2002年)の526種からわずかに増加する結果となりました。類ごとにみると全ての類で増減があり、わずかに増減した類が多い中、大きく増加した鳥類では61種から86種になり、反対に大きく減少したクモ類は20種から10種に、甲殻類は8種から5種に、ヒドロムシ・ウズムシ・コケムシ類は9種から5種と、半減またはそれに近い類もあり、類によって掲載種数の変化に差がありました。しかしながら、掲載種数の変化が大きかった類の動物が、生息環境の悪化や様々な要因による影響が顕著で、絶滅の危険性に大きな変化が生じているということではありません。掲載種数があまり変わらない場合でも、個々に見れば多くの種で評価は変化しています。前回と今回では用いた評価基準が異なるため単純な対比はできませんが、前回と同程度の評価となった種よりも、異なる評価となった種の方が多く、中には、前回掲載されなかった種が今回絶滅のおそれの高い絶滅危惧1類に評価され新たに加わったケースもあれば、前回絶滅危惧1類に評価されていた種が、その後の調査や情報によって絶滅の危険性を評価するだけの情報が不足していることがわかってきたため情報不足に見直されたケースもありました。絶滅危惧種の生息状況は変化しているとともに、人がまだ気付いていない状況や事態が生じている可能性もあります。種によって異なる生息環境や必要な条件、影響を及ぼすような要因の存在やその状況、変化などを注視し、継続的な調査と保護対策を講じてゆく必要があります。
注:ランクの正式名称は「絶滅危惧(ローマ数字の)1、2類」ですが、ウェブページの閲覧環境によってはローマ数字の表示ができないため、ここでは便宜上1及び2を使用します。
(2)今回の改訂版で評価対象とした529種の一覧(動物レッドリスト2012年改訂版)
3 評価区分及び基本概念
「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編(2012年改訂版)」における評価については、次の区分を用いました。これは、環境省のレッドデータブック及びレッドリストで用いられていた「レッドリストカテゴリー(環境省,2007)」を準用したものです。
また、絶滅危惧1類の評価について、脊椎動物(哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類)では1A類と1B類に分け、より詳細に評価することも環境省の評価方法(2006または2007年)を準用しました。
絶滅 Extinct(EX)
我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
野生絶滅 Extinct in the Wild(EW)
飼育・栽培下でのみ存続している種
絶滅危惧 THREATENED
絶滅危惧1類(CR+EN)
絶滅に瀕している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの。
絶滅危惧1A類 Critically Endangered(CR)
ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。
絶滅危惧1B類 Endangered(EN)
1A類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
絶滅危惧2類 Vulnerable(VU)
絶滅の危険が増大している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧1類」のランクに移行することが確実と考えられるもの。
注:ランクの正式名称は「絶滅危惧(ローマ数字の)1A、1B、2類」ですが、ウェブページの閲覧環境によってはローマ数字の表示ができないため、ここでは便宜上1及び2を使用します。
準絶滅危惧 Near Threatened(NT)
存続基盤が脆弱な種:現時点での絶滅危険度は小さいが、生育条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの。
情報不足 Data Deficient(DD)
評価するだけの情報が不足している種
4 調査
「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物」(レッドデータブック)動物編の改訂のための調査及び評価検討については、群馬県自然環境調査研究会に委託して実施しました。
群馬県自然環境調査研究会では、動物部門の会員が次のスケジュールで業務を行いました。また、片山 満秋、金井 賢一郎、小林 栄一、斎藤 晋、宍田 幸男、峰村 宏の6名が編集を担当しました。
動物部門会員名簿
分野 | 氏名 | |
---|---|---|
哺乳類 | 姉崎 智子、夏目 道生 | |
鳥類 | 卯木 達朗、柴田 栄、深井 宣男、谷畑 藤男 | |
爬虫類 | 森口 一 | |
両生類 | 金井 賢一郎、富岡 克寛、廣瀬 文男 | |
魚類 | 相澤 裕幸、斉藤 裕也、関根 和伯、松井 裕之 | |
昆虫類 | (トンボ) | 荒井 堅一、大森 武昭、岡崎 太郎 |
(バッタ) | 四十万 智博 | |
(コウチュウ) | 片山 雅資、須田 亨、山中 幹夫 | |
(ハチ) | 齋藤 靖明 | |
(ハエ) | 金杉 隆雄 | |
(トビケラ他) | 栗田 秀男、斎藤 晋、茶珍 護、土屋 清喜、峰村 宏、宮原 義夫 | |
(チョウ) | 小池 正之、小林 栄一 | |
クモ類 | 林 俊夫 | |
甲殻類 | 井田 宏一 | |
陸・淡水産貝類 | 清水 良治 | |
コケムシ類・ウズムシ類・ヒドロムシ類 | 片山 満秋 | |
土壌線虫類 | 宍田 幸男 |
作業スケジュール
2008(平成20)年度:改訂に要する作業行程、調査対象種、スケジュール等の検討
2009(平成21)~2010(平成22)年度:文献や標本による調査に加え、現地調査により情報を補足・確認
2011(平成23)~2012(平成24)年度:調査結果のとりまとめ及び種毎の評価及び原稿執筆、補足調査を実施
参考:群馬県自然環境調査研究会について
県内の大学教授や高等学校教諭等を中心に1974(昭和49)年に設立された団体で、植物・動物・地形地質の各分野の学識経験者で構成されています。これまでに、環境省から「自然環境保全基礎調査」を、群馬県から「絶滅のおそれのある野生生物(植物編・動物編)」の発行及び今回の改訂のための調査や評価のほか、「良好な自然環境を有する地域学術調査」や「奥利根地域学術調査」、「外来生物調査」といった各種自然環境調査業務を受託実施し、大きな研究成果をおさめています。
会長:斎藤 晋 群馬県立女子大学名誉教授(※注)
会員数:62名(植物部門15名、動物部門36名、地形・地質部門11名)(※注)
(※注)2012(平成24)年4月現在
5 レッドデータブックの入手方法
「群馬県の絶滅のおそれのある野生生物 動物編(2012年改訂版)」の冊子は、県庁2階県民センターまたは県内各行政県税事務所で購入していただくことができます。「いま買える県の資料一覧」へ
また、報告書のファイルが、群馬県立自然史博物館ホームページからPDF形式でダウンロードできます。群馬県立自然史博物館(レッドデータブック)<外部リンク>