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平成29年度精度管理結果
1.目的
本精度管理は、水道事業者及び登録検査機関における水質検査の正確さや検査結果の信頼性を確保することを目的に、複数の検査機関が同一の共通試料を測定し、その結果を基に、個人差、品質管理、誤差要因などの解析を行うために「群馬県水道水質管理計画」に基づいて実施するものである。
平成29年度は、対象項目を有機物(全有機炭素(TOC)の量)として実施した。
2.参加機関
参加機関は、水道事業者4機関、水道用水供給事業者5機関、水道法第20条に基づく登録検査機関17機関の計26機関であった。
番号 | 区分 | 機関名 |
---|---|---|
1 | 水道事業者 | 前橋市水道局 |
2 | 水道事業者 | 桐生市水道局水質センター |
3 | 水道事業者 | 富岡市水道局 |
4 | 水道事業者 | 安中市上下水道部浄水課 |
5 | 水道用水供給事業者 | 群馬県水質検査センター |
6 | 水道用水供給事業者 | 群馬県県央第一水道事務所 |
7 | 水道用水供給事業者 | 群馬県県央第二水道事務所 |
8 | 水道用水供給事業者 | 群馬県新田山田水道事務所 |
9 | 水道用水供給事業者 | 群馬県東部地域水道事務所 |
10 | 登録検査機関 | (一社)群馬県薬剤師会 環境衛生試験センター |
11 | 登録検査機関 | (一社)上田薬剤師会 |
12 | 登録検査機関 | (一財)新潟県環境衛生研究所 |
13 | 登録検査機関 | (一社)新潟県環境衛生中央研究所 |
14 | 登録検査機関 | 内藤環境管理(株) |
15 | 登録検査機関 | (株)江東微生物研究所 |
16 | 登録検査機関 | 平成理研(株) |
17 | 登録検査機関 | (株)群馬分析センター |
18 | 登録検査機関 | オーヤラックスクリーンサービス(株) |
19 | 登録検査機関 | いであ(株) |
20 | 登録検査機関 | (株)那須環境技術センター |
21 | 登録検査機関 | (株)総研 |
22 | 登録検査機関 | アクアス(株) |
23 | 登録検査機関 | (株)新環境分析センター |
24 | 登録検査機関 | (株)環境技研 |
25 | 登録検査機関 | (株)保健科学東日本 |
26 | 登録検査機関 | (株)総合環境分析 |
3.実施方法
群馬県衛生環境研究所の協力を得て、平成29年11月13日に試料配付を実施した。なお、希望する検査機関には、郵送で平成29年11月10日に発送した。
配付試料の調製、配付容器への分注は関東化学株式会社が実施した。
フタル酸水素カリウム(規格:容量分析用標準物質、Cat.No.32311-96、純度:99.99%)を216.9mgとり、超純水3リットルに溶解させた。この溶液を50mL程度配布容器へ分注し、配付試料とした。
配付試料を10倍希釈した溶液を測定試料とし、測定試料について分析を行うこととした。分析は測定試料を任意の倍率に希釈後、日常の当該項目分析担当者が通常と同様の分析条件で5回の併行測定を行うこととした。
4.測定結果について
各機関の5回の併行測定の平均値(以下「分析結果」という。)の分布を図1、回収率及び変動係数を図2に示した。各機関の分析結果は3.22~3.73mg/リットルであり、中央値及び平均値は共に3.41mg/リットルであった。設定濃度に対する回収率は94.8~109.6%、平均100.4%であった。機関内変動係数は0.14~1.5%であり、全て10%以内であった。
Zスコア(*注)については、「合格(|Z|≦2)」25機関、「疑わしい(2<|Z|<3)」1機関であった。
(*注)Zスコア:Z=(x-μ)/σ
- x:個別のデータ
- μ:母集団の平均値
- σ:母集団の標準偏差
Zスコアによる評価の基準
- |Z|≦2:測定結果は合格
- 2<|Z|<3:測定結果は疑わしい
- 3≦|Z|:測定結果は不合格
図1.分析結果の分布
図2.各検査機関の回収率及び変動係数
5.分析
5-1. 分析経験
分析担当者の分析経験は、2~108ヶ月と幅広く、中央値は55ヶ月、平均値は約44ヶ月であった。また、分析のべ検体数も、25~254,000検体と大きな差があり、中央値は2700検体、平均値は約28000検体であった。
5-2. 測定方法
分析機器は、燃焼式酸化法が23機関、湿式酸化法が3機関であった。燃焼式酸化法の機器を使用している機関の分析値(平均値±標準偏差)は3.42±0.11 mg/L、湿式酸化法の機器を使用している機関の分析値(平均値±標準偏差)は3.35±0.0061 mg/Lであった。
5-3. 分析日
分析開始日は、配布後1日以内が18機関、2~3日後が6機関、4日後~2週間以内が2機関であった。なお、水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法(平成15年厚生労働省告示第261号)においては、試料は採取後速やかに試験し、速やかに試験できない場合は冷暗所に保存し、72時間以内に試験することとしている。
6.まとめ
有機物(全有機炭素(TOC)の量)について精度管理試験を実施したところ、設定濃度に対する回収率は94.8~109.6%で、平均は100.4%であった。機関内および機関間の変動係数は全て10%以内であり、分析値のばらつきは小さかった。Zスコアから、「合格」となった機関は25機関、「疑わしい」となった機関は1機関、「不合格」はなかった。
なお、本年度の結果については、全ての参加機関で回収率が±10%の範囲に収まっており、分析値のばらつきが非常に少なく、精度はほぼ確保できていたと考えられる。
検査結果の詳細についてはこちらをご覧下さい。