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大雨による災害の発生に備え、住民の手で自主避難のルールを定めた「防災マップ」を作成した、安中市上後閑地区の吉澤区長に伺いました。
吉澤恒雄さん
「上後閑地区を含む後閑地区では、昭和10年の台風による大規模な土砂災害で37人が亡くなりました。その後も土石流や崖崩れを何度も経験しています。
3年前の台風では、地区内で崖崩れが発生し、道路が寸断されました。幸いけがをした人はいなく、集落が孤立することもありませんでしたが、肝を冷やしました。
人的な被害が出る前に何か対策をしなければと考えていたところ、昨年、県の事業を利用した『防災マップ』づくりの提案が市からありました。地区のみんなが賛成してくれたので、取り組むことを決めました」
「マップづくりのため、地区で3回集まり、過去に災害が起きたり災害の予兆現象が見られたりした場所、避難場所などの情報を出し合い、自主避難のルールを定めました。
話し合いでは、自分の経験に基づく情報だけでなく、各家庭で語り継がれていた災害や予兆現象の記憶も多く寄せられました。おかげで次の世代に残せるマップができました。
また6月には、自主避難のルールや避難経路を確認するため、完成したマップを使って訓練を行いました。
今後は、地域のみんなで定期的に訓練を行う他、マップの内容についても見直すことができる体制を整えたいですね」
地域で協力して作った「防災マップ」
水害が起こりやすい低地における消防団の活動や災害への備えについて、館林消防団の野村団長に伺いました。
野村政美さん
「館林地区は、以前から水害の多かった地域です。館林市内の防災訓練では、消防団が住民に簡易土のうの作り方を教えることもあります。
昨年10月の台風21号では、新堀川が増水し、堤防から漏水しました。放置すると堤防が決壊する可能性があるため、消防署と協力して『月の輪工法』という水防工法を用いて約20カ所の応急措置を行いました。
作業しづらい場所もありましたが、毎年、館林地区の消防団が集まり、技術の習得や向上に努めているので、臨機応変に対応できました」
「3年前、鬼怒川上流の日光市などで記録的な大雨が降り、下流の茨城県で堤防が決壊しました。もし豪雨をもたらした雨雲が数十km西の渡良瀬川上流で発生していたら、下流の館林地区で大きな浸水被害が発生していたかもしれません。
災害はいつどこで起こるか分かりません。大切なことは、災害が起きてしまったときに、被害を最小限に抑えることです。
地域の防災を担う消防団は、災害時に全力で対処しますが、皆さんにも『自分たちの地域は自分たちで守る』という意識を持って災害に備えてもらいたいです」
訓練で「月の輪工法」の手順を確認する