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災害から命を守るために取るべき行動について、群馬大学大学院理工学府の金井教授に伺いました。
金井昌信(かない まさのぶ)さん
「防災とは、災害から生命や財産を守る対策全般のことで、避難もその一つです。避難所を開設することは行政の役割ですが、避難は住民自らの判断で行います。適切に避難することができれば、災害による犠牲者を減らせるはずですが、多くの人は避難の必要性を理解していながらそれでも逃げていないのです。
避難行動には人間の心の働きが大きく影響しています。一般的に『自分は大丈夫』と思いがちで、『周りの人も逃げていない』『以前も大丈夫だった』など理由を付けて、自分が逃げないことを正当化しようとする心理も働きます。
まだ何も起きていない段階で、避難を決心するのは難しいことですが、実際に災害が起きたとしたら、自ら行動しなければ命を失ってしまいます。命以上に大切なものなどないのですから、たとえ避難が空振りに終わっても、被害がなくて良かったと考えてほしいです。
もし避難を決断したら、ぜひご近所にも声を掛けてください。勇気を出して逃げることは、自分の命を守るだけでなく、逃げようか迷っている誰かの背中を押してあげることにもなります」
「防災教育として、小・中学校で話をすると、子どもたちは避難について素直に受け止めてくれます。子どものうちから避難の大切さを学ぶことはとても効果的です。しかし避難が必要になる状況では、子どもは家族と一緒にいる可能性が高く、大人が避難の判断をすることが想定されます。命を守るためにも、家族で一緒に避難の大切さについて考えてみてください。
災害の備えとして、まずは自分の住んでいる地域の災害リスクをよく知っておくことが必要です。各市町村では災害の危険性を知らせるハザードマップを作成・配布していますので、避難所を確認したり、実際の避難ルートを確かめたりしてください。
また避難行動は警戒レベルに応じて変わります。警戒レベル3の段階であれば、余裕を持って安全な場所に移動することができます。高齢者や避難に助けが必要な人も十分落ち着いて避難できるでしょう。
災害が発生してしまった警戒レベル5の状況下では、自宅の2階や近所の高い建物のような、少しでも安全と思われる場所に緊急的に避難するなど、命を守ることを最優先に考えた行動が大切です」