本文
平成27年8月19日(水曜日)14時30分~16時00分
県庁24階 教育委員会会議室
小磯正康委員長、入澤充委員長職務代理者、福田正人委員、横田正夫委員、青木章子委員
吉野勉教育長、佐藤喜治教育次長、田村充教育次長(指導担当)、荒井進総務課長、三好賢治義務教育課長、山口政夫高校教育課長、内田善規総務課次長、齊藤猛総務課補佐(行政係長)、荻原孝英義務教育課生徒指導係長、齋藤利昭高校教育課補佐(生徒指導係長)、小林晴香主事
滋賀県大津市のいじめによる中学生の自殺事件を契機として、平成25年9月に、いじめ防止対策推進法が施行された。この法律では、いじめによる重大事態が発生した場合には、学校又は学校の設置者が条例に基づいて附属機関を設置し、事実関係の調査を行うこととされた。本県においては、桐生市で痛ましい事案があったことから、法の施行以前の、平成23年6月に、市町村立学校を調査対象に含めた群馬県公立学校いじめ問題等調査委員会を要領に基づいて設置していた。しかし、この法の趣旨を受け、県教育委員会として、県教育委員会管下にある県立学校のみを調査対象とした対策委員会を新たに設置し、委員の委嘱を行い、今回第1回目の会議とさせていただいた。県教育委員会としては、対策委員会が、重大事態の調査審議に追われるのではなく、情報共有の場として機能し、いじめ問題を本県からなくすことが責務であると考えている。本県では、これまで、群馬県いじめ防止基本方針を策定し、県としての取組の方向性を示すとともに、いじめ防止フォーラムやいじめ防止サミットなど、私立学校も含め、県内すべての学校における児童生徒による自主的ないじめ防止活動を支援することを通して、いじめを許さない気持ちや態度を育て、いじめを未然防止するための取組を進めてきている。委員の皆様には、本日の情報共有の場で、現状等を把握した上で意見交換していただくとともに、県の取組についても、御意見をいただきたい。
各委員及び事務局出席者が自己紹介を行った。
(委員)
いじめでこじれた場合、教員だけで対応することが困難なケースもあり、スクールソーシャルワーカーが専門的に関わることが大事になってくる。スクールソーシャルワーカーを増員する方針はあるか。
(義務教育課長)
いじめに限らず、子供の心の問題に関わる、また、その背景にある環境を改善するために、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、生徒指導担当嘱託員など、様々な者が学校の中にはいるが、それらの者がどのような役割分担をするのが子供の最善の利益にかなうのか、現在いろいろと試しているところである。その中で、スクールソーシャルワーカーの配置についても、どうすることが最も望ましいことなのかを検討してきたいと考えている。
(委員)
いじめ発見のきっかけについて、スクールカウンセラー等の相談員が発見している件数が意外と少ないが、この要因はどのようなところにあるか。
(義務教育課長)
スクールカウンセラーの勤務実態について、学校規模によるが、週1回、隔週又は3週間に1回程度の勤務であり、1日の勤務時間は6時間である。そうしたことを踏まえて、学校がスクールカウンセラーに期待するのは、いじめを発見するということよりも、発見した後、子供たちの心をどうケアするか、ということである。いじめ発見のきっかけとしての件数は少ないが、発見後の心のケアに関しては、スクールカウンセラーによるものが大変な数に上る。
(委員)
スクールカウンセラーによる心のケアの件数はどのくらいあるのか。
(義務教育課長)
いじめられた子供本人へのケア、それと同時に、いじめられた子供、いじめた子供を指導する教員の指導法についての助言をスクールカウンセラーが行っているケースについては、いじめ問題の相当数に上ると言って差し支えないと思う。
(委員)
診療の中で子供と話をすることがあるが、悩みが深刻な児童生徒ほど、スクールカウンセラーでさえ敷居が高いと感じ、相談できない状況のようである。
(委員)
スクールカウンセラーの立場は、受ける立場だと思う。何かあったら対応するということであり、何か発見するということとは違うと思う。いかにいじめになりそうな問題をキャッチするかという課題もあるが、問題をキャッチした時に、それに対して個人がどのように働きかけるかも重要である。グループ等になっていじめの場面を想定し、いじめを受けた時に、勇気を出して一言言えるよう訓練を行うことで、いじめの未然防止の促進につながると考える。そうした実践を行う際に、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーが大きな力を持つと思う。
(委員)
いじめ発見のきっかけとして、アンケートが有効であったり、また、生活ノートでの発見が多かったという説明があったが、小学校、中学校において多かったのか。高等学校についてはどうか。
(高校教育課長)
高等学校においては、生活ノートはほとんど使われていない。
(委員)
岩手県の矢巾中学校の事例では、生活記録ノートでいじめられていることが訴えられていたが、教諭が有効な手立てを打てなかったと報道されている。いじめ問題への対応の際には、学校におけるチームワークが重要だと考える。群馬大学で、群馬県内の学校に悉皆調査を行ったことがあるが、学校で問題が起こった時に一番最初に相談するのは同僚、最終的な判断を仰ぐのは校長という結果であった。非常にうまいチームワークができていると思った。その実態は今も変わらないか。
(義務教育課長)
様々な問題に対応するため、チームワークを積極的に作る傾向はむしろ強くなっていると感じている。
(委員長)
いじめの認知件数と、いじめ発見のきっかけの件数が同数となっている。学校の教員が発見した場合、どういうものをいじめとして判断するのか。いじめの定義は、法律によれば非常に広くなるが、「こういうものはいじめとは言えないのではないか」など、現場の判断でふるいにかけられてしまう可能性もある。いじめを認知するに当たっての基準のようなものを各学校に示しているか。
(義務教育課長)
国がいじめの定義をしているが、その文言によらずとも、自分がいじめられていると訴えてきている子供をまずは守るという姿勢を徹底することは、各学校にかなり周知されていると思う。ただ、子供の発達段階によって、例えば小学校低学年では、誰がぶった、誰が何か言ったという訴えが日常的であり、その中で、いじめの状態になっているかどうかという判断が働くことはある。しかし基本は、子供から訴えがあった時点でいじめを認知し、その子供を守るという姿勢で取り組んでいる。
(委員長)
そういった対応方法は、現場に伝わっているか。
(教育次長(指導担当))
アンケート調査を行った時には、いじめと思われるようなことがあれば、どんなに軽微なことであっても、まずは、いじめという前提で取り組むようにしている学校がほとんどである。その中で、判断しづらい事案については、必ず本人との面談を行い、周りの子供たちからの情報を得てから判断する。担任一人だけでは判断できない場合がほとんどであるため、学年会や生徒指導委員会等で、子供たちからの情報を基に方策を考えていくということが行われている。
(委員)
いじめ防止子ども会議とは、具体的にどのような活動か。
(義務教育課長)
子供主体の活動は2つある。1つ目は、いじめ防止フォーラムである。小中高校生が参加し、そのうち高校生が中心となって活動する。具体的な流れは、まず始めに、ピア・サポート活動を行い、話し合いやすい雰囲気づくりを行う。その後、小グループに分かれ、それぞれの学校で取り組んでいるいじめ防止活動について報告したり、実際に各学校で抱えているいじめの問題を解決するために共通でできることを検討したり、ブレインストーミングなどを行ったりしながら話し合う。最終的には、自分たちのグループの提言という形で発表を行う。また、フォーラム終了後は、各学校で結果を報告し、その後の取組に活かしていく。以上が、フォーラムの流れである。
2つ目は、いじめ防止子ども会議である。これは、市町村単位で行うため、高校生は参加せず、小中学生のみの参加となる。1年間の取組をお互いに報告し合い、良いところを次年度に活かしていこうという取組である。
(委員)
いじめ防止フォーラムには、どのくらいの学校が集まってくるのか。
(義務教育課長)
地区によるが、高校は5~6校。中学校は、高校区内の約15~20校。小学校は、中学校区から代表の小学校に出席してもらい、中学校と同数である。
(委員)
学年ごとの代表者が集まるのか。
(義務教育課長)
その学校の最上級生が参加することが多い。また、生徒会、児童会等、リーダー格の児童生徒に集まってもらっている。
(委員)
生徒会や児童会の子供が参加するとのことであるが、いつもその人たちだけの会になってしまい、それ以上の展開が望めないのではないか。本当に心の底からいじめをなくそうと思っている児童生徒はたくさんいると思う。そういう子を推薦してあげなければ、いじめはなくなっていかないと思うが、そういったところを変えることはできないか。
(義務教育課長)
大前提として、フォーラムに参加する各学校では、いじめをなくしていこうという活動に児童生徒全員が参加することを目指している。参加する子供たちには、その代表として来てもらっている。他校の良い取組を聞いて自校に持ち帰り、他の児童生徒も含めた全員でより良い実践をしてもらうことを目指しているのがフォーラムである。このやり方については、今後も工夫改善していきたいと考えている。
(委員)
教員に対して、いじめ問題に係る研修を定期的に行っているか。
(義務教育課長)
一番大きいところでは、毎年、年度当初に、小中学校の生徒指導担当教員を集めており、そこで、いじめ問題に係る対応については、法によるものであることを周知徹底するための研修を行っている。また、各学校のいじめ防止対応方針を持参してもらい、情報交換を行うとともに、自校に欠けている対策がないかを確認する取組も行っている。そういった取組を通して、改めて、いじめ問題への対応は、法によるものであること、また、安全配慮義務や調査報告義務も問われる非常に重要な問題であることを認識してもらっている。
(高校教育課長)
全体的な話で言えば、本県では、総合教育センターにおいて、教職員については、経験年数に応じた研修、あるいは職階に応じた研修を実施している。そういった研修の中で、いじめ問題に係る対応は、大きなテーマとして扱っている。
(委員)
資料2-3「組織的対応の展開」にあるような段階ごとの研修は行っているか。
(高校教育課長)
資料に記載しているような段階ごとに分けての研修ということではないが、どのような状況の中でいじめが発生するのか、教員としてどのようにいじめを把握していくのか、いじめが発生した時の組織的な対応の在り方、被害生徒・加害生徒に対する関わり方など、いじめ問題への対応全般について、具体的な研修を行っている。
(委員)
先日、国立教育政策研究所が発表した冊子「いじめに備える基礎知識」の中では、いじめの早期発見にアンケートは有効か、というような疑問が投げかけられているが、本日の報告を受け、本県では、いじめの発見に生活ノートなども活用されていると知り、安心した。また、この冊子では、普段から児童生徒を観察することが必要だとも述べられているが、教員が一人当たり受け持つ児童生徒数が多すぎるという懸念があり、それを解消していけば、より早くいじめを発見できるし、防止もできるのではないかと思っている。文部科学省の調査では、小中学校の教員の勤務時間が長いという結果となっており、県教委が何か対応してくれるといいかなと思っている。
(委員)
まず始めに、いじめが後々及ぼす影響について紹介する。子供の頃いじめを受けた者が、大人になってどのような精神的な問題を抱えるかについて検討した論文データが、一昨年発表された。それによると、いじめを受けた者は、受けていない者に比べ、大人になって鬱病になる可能性が4.8倍、自殺を考える・死にたいと思う・自殺を図るなどの可能性が男性で18.5倍、引きこもりになる可能性が女性で26.7倍である。このように、いじめを受けたことが、いじめが終わった後、大人になってからも大きな影響を及ぼすことがこの調査結果から分かる。また、いじめと虐待の影響を比較した場合、一つの調査では、虐待に比べていじめの方が1.6倍影響が大きく、もう一つの調査では、3.8倍影響が大きいという結果となっている。
次に、中学生向けの保健体育の副読本「悩みは我慢するしかないのかな?」を作ったので、紹介する。いじめ対策のため頑張る子は、実は健康的な子であり、本当にいじめで困っている子はなかなか前面に出て来られないという傾向がある。そういった、本当にいじめで困っている子に届けるため、作ったものである。漫画を使っているが、著作権を放棄しており、サイトから自由にダウンロードできるようになっている。実際に授業で使っている学校もあり、先生向けの解説書も作っている。NHKの全国ニュースや読売新聞、日経新聞で取り上げられたこともある。是非、各学校で自由に活用してもらいたい。
また、思春期学という本を出したので紹介する。これまで、中高生を中心とする思春期についての研究は、学問として成立しない・検討が難しい状況であったが、これを研究することにより、いじめも含め、子供の悩みについて子供の視点から理解できればと思っている。
私は、群馬県自殺対策連絡協議会の会長も務めている。全国的に自殺は減ってきているが、若い人の自殺は減っていない。自殺をした子供が相談電話のカードをたくさん持っていたのに、どこにも電話していなかったという事例があったが、公的な相談機関やスクールカウンセラーは、子供にとっては、敷居が高い。子供が気軽に立ち寄れるコンビニに、簡単にアクセスできるようなカードを置くなど、子供がハードルを感じず、悩んだ時に、死にたいと思った時に、アクセスできるような工夫をしていく必要がある。最近では、コンビニが街のセーフティステーションとして位置付けられているようだが、暴力被害から逃れるということだけでなく、心の問題についてのセーフティステーションも担ってもらえればと思う。また、群馬県精神保健福祉協会の会長も務めているが、従来、協会は、医療福祉に携わる者が多かったが、今後は、教育、産業関係者も視野に入れていくことを考えている。精神保健福祉協会と教育の協働ができればいいなと考えている。
(委員長)
いじめを受けたことが、大人になってから重大な問題に結び付く可能性が高くなるということであるが、逆に、いじめをした側が、非行、犯罪に関わるケースが多いと聞いたこともある。
(委員)
いじめの加害者と被害者を両方経験した者の方が、より影響が大きい。
(委員)
いじめの影響について、性差が出るのはなぜか。
(委員)
男性は自殺既遂が多く、女性は自殺未遂が多い。女性が引きこもりや、ちょっと悩んだりということになりやすいのに対して、男性は、よくよく悩んで決定的なことをしてしまうという男女の心理の違いが影響しているのかもしれない。
(委員)
スクールカウンセラー、ソーシャルワーカーそれぞれに役割があり、それぞれの役割に合った活動が、すべていじめ問題につながっていくようなネットワークづくりができるといいと思う。また、臨床心理士やスクールカウンセラーの敷居が高いのは、かなり大きな問題である。敷居を下げていく工夫が必要である。子供たちにとって、行きやすい空間・場・人がある(いる)ということに加え、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーなど、どういう人がいついるのかが常に分かるのが理想であり、そういった情報を露出するための支援があるといいのかなと感じる。
(委員)
保健室は行きやすいのに、スクールカウンセラーの所には行きづらいというのは不思議だなと思う。家庭教育委員会では、いじめの加害者の親の立場についても勉強している。被害者の親は子供を守るというのが大前提であるが、加害者の親の立場としては、どうしたらよいかを考えている。まずは、コミュニケーション能力の不足が課題と考えて取り組んでいる。
子供は、学校が知らないいじめ問題を親に話すことがあり、学校のこと、家庭のことと分けるのではなく、学校、保護者がより連携していけば、いじめを未然に防げるのではないかと思う。保護者としては、学校との連携をどのように取っていけばいいかを具体的に教えてもらいたいと思っている。
(委員長)
法律ができて、国、自治体、学校でいじめ問題対策に熱心に取り組んでいると感じている。問題のない子供だけが学校の代表として出てきて話し合うことは、それをやること自体に意味があるのかもしれないが、一方で、どんな効果があるのかという疑問もある。運営する側の自己満足で終わらず、未然防止、早期発見など効果に結び付いた活動を行ってもらいたいと感じる。また、周りから見ればいじめられているが、本人が、いじめられている関係でいることで仲間として維持できるため学校の先生に言わないというパターンの時に深刻な被害が出たりする。一見分かりにくいが問題のある所に切り込めるよう、先生方には目を光らせてもらいたい。
以下の添付ファイルで御確認ください。