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児童生徒等の健康診断は学校教育法及び学校保健安全法の規定に基づき行われ、教育活動を行う上で児童生徒等の健康状態を把握し必要な措置を講じるという重要な役割を果たしています。
平成27年に「児童生徒等の健康診断マニュアル」(日本学校保健会)、平成29年に「就学時の健康診断マニュアル」(日本学校保健会)が改訂され、令和元年には、視覚の発達に大変重要な時期である幼少時より眼の健康管理をしっかり行うために、園医をはじめ保健師、保育士に向けた「園医のための眼科健診マニュアル」(日本眼科医会)が発行されました。
現場での円滑な運営を図るため、この度、県健康診断検討委員会では「児童生徒の視力測定」「眼の疾病及び異常の有無の検査」「色覚検査」について、群馬県版「幼児・児童生徒の眼科健康診断の手引き」を作成しました。
眼科健康診断の結果から健康課題を把握し、学校医や園医のみならず、養護教諭や学級担任等が連携して、園児、児童生徒が学校・園生活により良く適応していけるように支援していくことが求められます。弱視治療では、幼児でも眼鏡の常用が必要となることがあります。
子ども達が自らの健康問題を認識し、眼の健康に留意した生活を送るためにはどう行動すべきかを指導することが重要であり、健康リテ・ラシーを身につけることができるよう、学校保健委員会等を活用して学校全体の結果を集計・分析して課題を明らかにし、学校と家庭、地域社会全体で、健康づくりに取り組むことも大変有効です。
幼児・児童生徒の眼科健診の手引き〈令和3年11月改訂〉(PDF:2.71MB)
視力は出生後より発達しますが、屈折異常や斜視などの種々の要因によって発達が阻害されると弱視になります。弱視とは器質的病変が無く、視力の低下した状態であり、眼鏡やコンタクトレンズによっても矯正視力が不良です。視力が完成する6歳頃までに弱視を治療しなければ、生涯に渡って矯正視力は改善しません。このため弱視は早期発見、早期治療が原則であり、視力が発達する幼児、児童の視力検査は重要です。
近年、近視発症の低年齢化や、中等度近視や強度近視の児童生徒の増加が問題となっています。学校における視力検査は、学習に支障のない見え方(以下視力)というであるかどうかの検査です。視力は学習にも影響を与えるものであり、重要な検査です。スクリーニングであるため、0.3、0.7、1.0の3視標によって判定します。
健診での視力検査は、日常の学校生活での見え方を知ることを目的としているため、眼鏡やコンタクトレンズを常用している者については、裸眼での視力検査を省略することができますが、視力検査の際は、裸眼視力も測定することが望まれます。特に、高度管理医療機器であるコンタクトレンズは、正しく使用しないと多くの眼障害を引き起こすことから、眼科での定期検査が極めて重要であり、長時間装用や、眼障害を生じた際の不適切な装用を防ぐためにも、適正な眼鏡を準備することが大切です。
ただし、学校でコンタクトレンズを外すと、外した後に目のかすみが生じたり、取り外しによるレンズの破損や汚染が生じたりすることがあるので、裸眼での視力検査を行う際には、なるべく眼鏡で登校するよう指導するなど、検査方法を眼科学校医と相談しましょう。
幼児では保護者の協力が必要であるため、視力検査を行うにあたって、保護者への説明、事前の問診票への記入、視力検査練習などが検査の補助となります。幼児の視力検査(定期健康診断、就学時健康診断)においては、様式1、様式2、別紙1を活用します。
※【様式1】視力検査を行うにあたって保護者の方へ (Word:20KB)
【別紙1】子どもの弱視見逃しに気をつけて!.pdf (PDF:927KB)
〈視力表視力表〉
幼児、小学校低学年では並列(字づまり)視力表では読みわけ困難のために視力が出にくいので、国際基準に準拠したランドルト環を使用した5メートル用単独(字ひとつ)視力表の0.3、0.7、1.0の視標を使用します。ただし、5メートルの視力検査場所を確保することが困難な場合は、3メートル用の単独視標を用いても構いません。
破損、変色、しわのある視標は使用しないようにし、視標の白地視標背地が汚れたり黄ばんだりした時は新しいものと交換してください。視力表から5メートル離れた床上に白色テープなどで印を付けておきましょう。
小学校3年生以上では、並列視力表を用いても構いません。
〈照明〉
明るい室内で行い、視標の白い部分の明るさは、まぶしすぎて、あるいは暗すぎて見えにくくならないように配慮します。視標面の照度は500~1.000ルクスとします。
〈遮眼器〉
幼児、小学校低学年では検眼枠(フレームサイズは 50~52ミリメートルが望ましい)と専用の遮閉板(黒板)または、健診用遮閉メガネを使用します。
小学校3年生以上では、遮眼子を用いても構いませんが、眼球を圧迫しないで確実に遮閉するよう注意します。手のひらでの遮閉は不可とします。
眼鏡使用者の片眼遮閉用には、クリップ式眼鏡用遮閉板またはティッシュペーパーなどを眼鏡の内側に入れます。ティッシュペーパーなどは、使い捨てとし、再使用しないようにします。
遮閉用の器具は直接眼に触れることもあり、感染予防のため清潔に留意し、感染のおそれがある場合には適宜アルコールなどで消毒します。
充血、眼脂があり、結膜炎などの疑いのある場合には検査は中止し、眼科受診を勧めます。
〈指示棒〉
並列視力表に手指などが触れて汚れたり傷つけたりしないよう視標をさすための棒です。
〈検査場所〉
あまり狭くない部屋でカーテンを使用し、直射日光が入らないように注意します。目移りするような掲示物は片付け、騒音や雑音の入らない落ち着いた雰囲気で検査できるようにしましょう。扉は閉めて、同じ部屋に被検者以外の幼児、児童を入れないことが望ましいのですが、やむをえず、幼児、児童を複数入室させる場合には、被検者が検査に集中できるように配慮します。また、視力表の視標は、背後の窓などで逆光にならないようにします。
幼児、小学校低学年では、検査に対する不安や不慣れのために正確な検査結果が得られないことがあります。事前に保健指導等で、円の切れ目の方向を指示できるようにしておくことも有効です。幼児では1週間前より家庭でも練習用単独視標で練習をすると良いでしょう。
※検眼枠に遮閉板を挿入する箇所が複数ある場合は、眼に最も近い場所に挿入します。
〈眼科への受診を勧める幼児・児童生徒〉
1.幼児では問診票で該当する項目が一つでもあった者
2.幼児では左右どちらか片方でも、年長児では1.0未満、年少・年中児は0.7未満である者
3.児童生徒では視力検査で左右どちらか片方でも1.0未満である者
4.視力検査中、次のようなことが認められた者
(1) 片眼をかくすと異常に嫌がる者
(2) 検査中、眼を細めたり、顔を傾けたり、顔を曲げてのぞきながら検査をした者
(3) 検査中、眼が揺れている者
すでに眼科での治療を受けている者に関しては、主治医への通院を続けるよう指示します。
眼科受診のおすすめ兼受診報告書に視力検査の結果を記載して、健診後すみやかに保護者へ通知し、眼科受診を勧めてください。眼科受診の結果から健康課題を把握し、別紙1~4などを使って、保健管理や保健教育に活用します。
※【別紙1】子どもの弱視見逃しに気をつけて!.pdf (PDF:927KB)
【別紙2】正しいタブレットの使い方.pdf (PDF:808KB)
【別紙3】正しいパソコンの使い方.pdf (PDF:791KB)
【別紙4】このような使い方をしていませんか?.pdf (PDF:868KB)
感染性眼疾患に注意し、また、その他の眼瞼、睫毛、結膜、角膜など外眼部の疾病・異常の有無及び眼位の異常の有無を検査します。
視診にて外眼部及び前眼部に異常所見がある者、斜視や眼球運動異常がある者は精密検査が必要となります。
検査の結果、学校医が必要と認めた者について眼科受診を勧めます。感染性疾患については、直ちに受診するよう勧めます。
色覚検査は定期健康診断の項目に含まれていませんが、児童生徒等が自身の色覚の特性を知らないまま学校生活や進学・就職等で不利益を受けることがないように、必要に応じ個別に検査を行います。児童生徒が自身の色覚の特性を知るとともに、すべての教職員が色覚異常を正しく理解し、色のバリアフリーなど環境を整えることが大切です。
色覚検査の実施には、児童生徒や保護者の事前の同意が求められます。その際、保護者に対して「色覚検査希望調査票」を活用して、色覚検査の意義について説明した上で、希望者を対象とした色覚検査を行います。なお、対象学年は、小学校低学年と中学1年を推奨していますが、任意検査であるため実施時期や実施学年は各地域の状況を鑑み、学校医と相談の上、適切に実施してください。
〈検査室・環境〉
プライバシーの保護を十分配慮し、十分な明るさがある自然光の下で行います。ただし、直射日光を避け、北側の窓からの採光で午前10時から午後3時の間がよいでしょう。自然光で十分な照度が得られない場合は、昼光色の蛍光灯を使用します。正しい姿勢がとれる高さの、机と椅子を準備します。
〈石原色覚検査表2(※注)コンサイス版(14表)について〉
5年以上経過した古いものでは検査結果に違いが見られることもあり、買い替えが望まれます。検査に使用する検査表は数字表(第1表から第8表)および環状表(第14表から第11表)の12表を用います。第9表、第10表(型判別の表)は使用しません。
(各表を検査表本体から取り外し、順序を変えたり、環状表の方向を変えたりしても良い)
(※注)正式名はローマ数字使用
眼と色覚検査表の距離は、およそ75センチメートルにしてください。近すぎると誤読することがあります。検査表と視線が垂直になるようにします。眼鏡等を所持する者には装用させ、検査表の提示時間は3秒以内とし、次の表に移るようにしてください。時間内の訂正は可とします。
検査の途中、誤読や回答できない場合でも「これが読めないの?」「しっかりと答えなさい」など児童生徒に恥ずかしい気持ちを持たせないよう気を付けましょう。
・第1表から第8表まで(数字表)
第1表から始めます。第1表は誰でも読める表となっていますが、第1表以降は色覚異常では誤読や読めないことが多いため、「もし数字が書いてあったら読んでね。数字のない表なら『ない』と見えたまま答えればよいよ」と助言するなど安心させてあげてください。
・第14表から第11表について(環状表)
環状表では、切れ目のある(色が繋がっていない)位置を答えさせます。色覚検査表の一番末尾の第14表から始めてください。
まず第14表を見せます。第14表は色覚異常の有無にかかわらず正読できます。
「輪に切れ目、または色が繋がっていない場所がありますか?あれば切れ目、または色が繋がっていない場所を教えてください」と説明します。続けて第13表→第12表→第11表と進めてください。環状表の切れ目を回答させる時、検査表を触らないように注意してください。小学校低学年では、下記の例のように、場所を説明することが難しいことも多く、筆を用いて、筆先で切れ目を示すようにしても良いでしょう。
<色覚異常で多く見られる回答例>
第13表では「切れ目(色が繋がっていない場所)が9時の位置」(または切れ目がない)
第12表では「切れ目(色が繋がっていない場所)が6時の位置」(または切れ目がない)
第11表では「どこも切れ目がない」
第13表、第12表では「2か所が切れている(色が繋がっていない)」と回答することもあります。その場合は、よりはっきりと見える方を回答させてください。また「色が変わっているだけで切れていない」と答える場合などは「色が変わっている場所を教えてください。」、「どちらかといえば色が繋がっていないように見えるのはどこですか?」などと、聞き直すと良いでしょう。
使用する検査表に記載の判定法を遵守してください。石原色覚検査表2(※注)コンサイス版では第1表から第8表及び第14表から第11表の計12表のうち、誤読が2表以上であれば「色覚異常の疑い」とします。学校での色覚検査はスクリーニングであり、診断はできません。「異常」と判定された場合でもあくまで「色覚異常の疑い」として扱ってください。また、検査に不慣れな場合や判定が難しい児童生徒等に対しては、学校医と相談するなどして、後日に再検査を実施するのも良いでしょう。色覚異常がなくても、検査の不慣れや心因性視覚障害などでも誤答することがあります。
(※注)正式名はローマ数字使用
色覚異常の疑いのある場合は、検査結果の通知に関してもプライバシーを十分に配慮し、精査のため眼科医療機関への受診を勧めます。異常の疑いがある子どもにのみ検査結果を配布すると、だれが色覚異常なのかが他の児童生徒にわかってしまいますので、全員に、封筒などに入れて検査結果を配布します。
精密検査の結果を学校に報告するかは保護者の判断となりますが、報告があった場合は、情報の取り扱いに十分配慮し、学校生活や進学就職指導に活用します。
【様式1】視力検査を行うにあたって保護者の方へ (Word:21KB)
【様式3】視力検査・眼科健診結果のお知らせ (Word:27KB)
【様式5】色覚検査結果のお知らせ兼受診報告書 (Word:20KB)
【別紙1】子どもの弱視見逃しに気をつけて!(PDF:927KB)
【別紙4】このような使い方をしていませんか?(PDF:868KB)