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群馬県非認知教育専門家委員会(第2回)議事概要

更新日:2024年1月9日 印刷ページ表示

1 期日

 令和5年10月25日(水曜日)午後4時から午後6時

2 場所

 県庁24階 教育委員会会議室(Web会議)

3 出席者

  1. 委員(8名中7名出席、1名代理出席)
     大島みずき委員、中室牧子委員、Patrick Newell委員、今井朝子委員、金子弘幸委員
     工藤勇一委員、葉一委員、田熊美保委員(OECD職員 八田聡史氏が代理出席)
  2. 事務局 平田郁美教育長 他 職員13名

4 内容

(1)開会

 開会

(2)あいさつ

 平田郁美教育長によるあいさつ

(3)議事

 ・群馬県教育振興基本計画草案及び本事業の指定校における育成したい児童生徒像の説明

 配付資料により事務局が説明した。

 ・先進事例に関する情報提供

 委員から意見をいただいた。

 ・群馬県として子どもたちに身に付けさせたい力の育成の視点から、SSESの構成要素を踏まえた非認知能力及びその育成に向けた意見交換

(4)報告

 ・海外連携について

 日本OECD共同研究の研究員である伊藤駿氏から、スコットランドの教育について説明いただいた。

(5)その他

 事務局から事務連絡を行った。

5 委員の主な意見

【群馬県教育振興基本計画草案及び本事業の指定校における育成したい児童生徒像の説明】

(委員A)
 資料2の目指す児童生徒像というのは来年度のSSESの調査結果を受けて、何か変更する可能性はあるのか。

(事務局)
 この目指す児童生徒像はOECDのSSESの結果を待たずに、今年度から非認知教育の育成を目的として取り組み、開始した事業である。そのため、目指す児童生徒の姿というのは変わらないが、そこに向けた取組等については、専門家委員会の中でも共有しながら、検討してもらう。

(委員A)
 目指す児童生徒像は群馬県全体のことと思うが、それぞれの学校によって違いがあると考える。ある学校ではこれが不足しているから別のものにするという考え方になるのか、それとも全体として決まっているのか。

(事務局)
 基本的な考え方として目指す児童生徒像は汎用性の高いものであるため、群馬県はこの形でいきたい。ただ、どのようにしてこの力をつけるかは、様々なやり方があると考えるため、それぞれの学校に考えて取り組んでもらう。

【先進事例に関する情報提供】
〇横浜創英中学・高等学校の9つのスキルについて(工藤委員は第1回欠席のため、非認知能力の育成に関連した御自身の取組等に関するコメントを含む)
(工藤委員)
 横浜創英中学・高等学校で校長をしており、現在、非認知のスキルを大事にした教育を行っている。その際には、なぜ非認知のスキルを育てる必要があるのかを教員が腹落ちすることが大切である。世の中が変化をする中で、対立を対話で解決する力が必要であり、日本の教育は主体性と当事者意識という最も大事なものを失っている。横浜創英では、自律、対話、創造を教育目標にしているが、これはOECDの考え方とも一致している。世の中の問題点を浮き彫りにし、それを解決する方法を、学んだ力を生かしながら生み出していく。新しいシステムや新しい技術を開発できる、その原点となるようなものを生み出していくことを行っている。これにより、子どもたち一人一人が自分の体験を具体的な言葉で言語化したり、また意味付けたり、価値付けたりすることができる。
 学校改革を行う際、忘れてはならないことは2つある。一つは、教育本来のあるべき姿、つまり、子どもたちの生まれながらに持っている主体性を削がない教育をすることである。そうした意味で幼児教育はもっとも重要であるが、日本の教育は社会性を重視するあまり、主体性を削いでしまっているように思う。もう一つは、トラブルが起きたときに、大人が関わりすぎてしまい、結果として当事者性を失わせていることである。教師は、問題解決をすることに注目しすぎて、子ども自身の問題解決能力を支援することができていない。今の学校教育ではこの支援ができていない。まずは適切な支援の方法を言語化することが必要であり、具体的には教員間でセリフレベルまで落として共有化されなければならない。現在、当校ではOJTの中でここに力を入れており、実際、中学を担当する教員間で順調に浸透してきている。
 非認知スキルのアセスメントをするのはすごく難しい。日本には、非認知スキルを評価する伝統や歴史が浅く、欧米のように何十年も前から非認知スキルについて注目してきたわけではない。そのため、教員たちに非認知スキルを見取る力が育っていない。当校も同様だ。そこで、当校で大事にしているのは、子どもがその後の人生で繰り返し再現できる力として非認知スキルが位置付けられているかということである。例えば、生徒達が決めた目標設定について、本当に適切な目標だったのかを教師が正しく助言することができなければ、非認知スキルを育てることはできない。目標設定については生徒たちにこんな助言をしている。
 目標を設定する際には、全員がOKとなるもの、誰も反対しない最上位の目標を決めることが大切であり、もし一部の生徒が反対する目標を設定してしまうと、その生徒たちは、そもそも目標を実現するための手段を考えることができない。つまり始まる前から組織は崩壊しているということだ。生徒自身がこうしたことを概念として理解し、自身の具体的な体験を通してやるべきことを言語化できるようになると、生徒のその後の行動に確かな変化が起こる。これこそが再現性のあるコンピテンシーであり、この力を具現化する助言こそが教師がやるべきアセスメントだと我々は考えている。

(委員B)
 コンピテンシーベースのアプローチを取った時、その前に大事なのは、どの資質能力が必要かというところから入るのではなく、どういった生徒像が必要なのか、どういった生徒を育てていきたいのかというところから入っていくことが大事である。そのため、群馬県の教育振興基本計画の生徒像へのアプローチとなれば、群馬県において、どういう生徒を育てていきたいか、子どもたちをどのように育んでいきたいかということが、コンピテンシーについて議論する前提として大事である。また、各学校の自主性や自立性を生かすことも大事である。それぞれの学校において、見ている生徒の状況は、社会経済的な側面も含め相当違うため、広い意味での生徒像を共有しつつも、それぞれの学校においてどういう生徒を育てていきたいか、そのためにどういった教育手法をとっていくべきかというところも、自立性とのバランスを取りながら進めることが大事である。

〇BESSIの32のスキル及びCASELの5つの力の概念
(今井委員)
 スキルコンパスとは、BESSIという評価指標をベースに日本語化したアセスメントの方法である。群馬県の目標を実現していくにあたり、大きく3つの要素が必要であると感じる。まず、細かい評価ではなく、全体的なバランスを見るための評価方法である。現在どのようなことが子どもたちに必要なのかを見るために評価方法が必要である。2つ目に、ここを伸ばそうということが決まった時点で、その伸ばしたいスキルをどのようにして伸ばしていくかについての教示方法が必要になる。3つ目に、学んだスキルを定着させるため、実際にスキルを学んだ後に使いながら、使えるようにしていくという3つのステップが必要である。
 非認知能力は、世界中の人がとても重要だと思っているが、その計測の方法は難しくて合意ができていない。様々な研究者が評価をしようとスキルのグループ分けをしてネーミングをしようと努力しており、その全体像を見ると主に3つの能力に注目していると考えられる。1つ目は人との社会的な関係性を維持する力、2つ目が感情を制御する力、3つ目が目標や学習に向かう行動を制御する力である。
 分類の方法としてBESSIでは、1つ目が社会的関与のスキル、2つ目が協調性のスキル、3つ目がセルフマネジメントスキル、4つ目が心理的レジリエンススキル、5つ目がイノベーションスキルとなっている。OECDやCASELも5つに分けている。どれもそれぞれのスキルを定義した上で、より細かく具体的な説明がなされている。
 BESSIの質問項目は、様々な観点から、生徒の状態、先生の状態等を計測することができる。本人自身の意見だけでなく第三者が同じものを計測し、データとして合わせて両方から見るということができ、より本人の状態を正しく判断できるようにしてある。アセスメントを受けるのが、学生の場合、教員の場合、保護者の場合、一般の大人向けの場合等、様々な人が自分の力を知るための指標となっている。そのためにスキルコンパスという名前がついている。
 そして、こうした評価方法を使って、状態がわかったところで、教示方法を考えていく必要がある。EASELというハーバード大学の研究所では、どのようなプログラムがあるかのリストを作成し開示している。CASELでは、学年、目標などでプログラムを検索することができる。さらに練習の方法についても、色々なことが既に分かっており、明示的なSELの指導が日本でも始まっている。また、学習と統合していくことが必要とされたり、学校の中で、使える環境を作っていくことで生徒の積極的な参加、学校と教室の協力的な雰囲気ができるとされたりしている。教えたことと実際の大人の行動が乖離してると子どもも疑ってしまうため、大人のSELも大事である。大人も教えた通り同じような反応をしていかないといけない。連続的に統合された支援として、学校のどこにいても、どのクラスに行っても、同じことをやってくれるようになるとよい。さらにそれが家族のもとに帰ってもスキルが使える状況になったり、地域であっても同じ反応が返ってきたりすることが望ましい。このような点から、群馬県の場合は、県として実施しているため地域も含めてSELをやっていくということが可能なフレームワークである。
 協働の可能性として、ダニエル・J・シーゲル先生、子育ての本で日本でも非常に有名であるが、SELの父といえる方であり、ぜひ協力したいとのことである。その他、イリノイ大学長名誉教授のキンバリー先生、EASEL所長、CASELのVice Presidentも協力しようとしてくれている。

(Newell委員)
 私達が現在評価しているスキルは32あり、非常に広範囲から絞り込むことができる。OECDではたった15のスキルしかないが、BESSIは、OECDのアセスメントの改訂版のようなもので、はるかに広範囲である。そのため、フォーカスしたいものによって異なる部分を選ぶことができる。また、群馬県と協力したいと考えている4つの組織がある。CASELは非常に幅広く全国的な活動をしているが、地区全体の活動においても非常に優れており、群馬県と似たような活動がある。そして、ハーバード大学は異なるプログラムの関連を評価することに優れている。キンバリー先生はSELのクイーンと言える存在で、長い間、コロンビア政府など、世界中の様々な政府と協力してきた。また、キンバリー先生のもとで学んだ日本の小西先生も協力したいと考えている。
 以前にも述べた通り、私はSELに20年以上にわたり関わっており日本にどのように適応させるか非常に興味深い。日本でも様々なプログラムを見て、それがどのように適応されているかを観察してきたため、日本の学校がSELプログラムをどのように統合しようとしているか、または統合していないかに関する主なチャレンジも見てきた。

〇IBの10の学習者像
(金子委員)
 IBプログラムの中のラーナープロファイルについて話したい。これをよく見ると、全体が非認知スキルと非常にリンクしてる。学習者像としてIBの場合は、ユニバーサルな学習者像であり、基本的にはライフロングラーナーとして生涯を通じて学習する人を育てる。そこには非認知スキルも必要になってくるため、これらが全部網羅されていると考える。この学習者像を見たときに、日本では校訓というのがあるが、これは意味合いが広い。そのため、もう少しはっきり明確なものを示さないとカリキュラムとしては生かしていけない。本校にも校訓はあるが、それに対して学習者像、我々が育てるのはこういう生徒たちだということで分類がされている。これらを全部スキルとして学び、そして将来を通じて学べる人材を育てていく。これがIBの理念である。
 IB教育は全世界で約5500校の認定校があるが、実際には全ての国、文化、宗教に関わりなく、人としての心の教育を目指すということで作られたプログラムである。教育の目標というのは、人格の完成と言われるが、それを目指すからには、目標や明確な道筋が必要である。そこでラーナープロファイルというのが出てきた。OECDの社会情動的スキルを見たときに、このラーナープロファイルと区分け違うが、内容は非常にオーバーラップしている。ラーナープロファイルを実際にどう実践するかについて、IBではATLスキルというさらに具現化したものがある。OECDのスキルに対してATLスキルを対比すると非常にリンクしてると感じた。このATLスキルをもう少し細かく見ると、クラスターの中にさらにスキルがある。非常に細かく分類されているが、これらを認識することで、生徒たちに今何が必要なのかということを我々は認識できる。そして、これがリフレクションの方法の一つになる。例えば、探究を行為として、まずやってみる。そして、学校全体で常にやっていくとそれが生徒に習慣化する。習慣化してくると生徒には探究マインド、あるいは探究スピリットというものが定着する。そうすると探究というものが生徒にとっては非常に自然なものになっていく。これは苦しいものではなくて非常に面白いものとして生徒に入っていくのである。探究スピリットが生徒に入ったときに、初めて本当の自立的な学習者になると我々は考える。
 結論として、ラーナープロファイルは学習者像であると同時に、これから生徒が人として向上していく一つの道筋であり、その尺度である。自分がよりバランスが取れるようになれば向上している証になる。それを自分が確認していくためのものではないかと思っている。

〇各事例に関する意見等について
(委員C)
 今日のそれぞれの発表を群馬の指定校で実践した時に、例えば、特定の学校だからできるよねと思わせてしまったら駄目だろうということを強く思っている。先の話にもあったが、子どもたちにリアルを体験させる前段階には先生にリアルを体験してもらうことが必要であり、自分事として考える子どもになってほしい場合は、まず自分事として考える経験を先生方にさせないといけないと考える。このような机上における話し合いだけでは、上手くいかなくなるような気がした。指定校の学校の先生が、トップダウンで言われたからしょうがなくやってるよというものではなく、実際に前のめりで変えていこうとするものにするためにはどのような仕掛けを考えているのかが聞きたい。

(事務局)
 従来のモデル校は教育委員会や国がこういうことをやるので、各学校でこれをやってみてくださいと決まった形でやっていた。しかし、今回はまず、「子どもたちが自分で決めて自分で動く、つまり主体性を身につける教育のために、群馬県はやっていきたい」という趣旨を伝え、一緒に取り組んでくれる学校を募った。やり方も、それぞれの学校に任せることとした。そこで手を挙げ集まったのが、現在の高校2校と4つの市町村である。やること自体についても、学校の中で考え決めているところがこれまでのモデル校と大きく異なる。今日の話を受けて、先生方の主体性や学校に任せて動かすというのがすごく大事だということを改めて理解した。

(委員D)
 トップダウンによるアプローチは目標の達成が非常に難しい。しかし、ほとんどのプログラムは教師が生徒に教えるために作られている。しかし、日本では教師のストレスやウェルビーイングに大きな問題がある。我々はあまり教師のウェルビーイングにエネルギーを注いでいない。だから、もし新しい取組を始めて教師と生徒のウェルビーイングに焦点を当てたら、トップダウンのアプローチではなく共感の感覚が増えるだろう。
 教師のウェルビーイングのために非常に重要なポイントの一つは、自分たちのウェルビーイングを考慮することである。それを実践し、一度それができるようになれば、生徒と一緒になって取り組むことができるようになる。このことが本当に重要な欠けている要素だと思う。ほとんどのプログラムは教師が生徒に教えることに焦点を当てているが、教師のためではない。トップダウンのアプローチを減らしていけば、より共感し合い、協力的になっていくだろう。

【群馬県として子どもたちに身に付けさせたい力の育成の視点から、SSESの構成要素を踏まえた非認知能力及びその育成に向けた意見交換】
(時間の都合により、各委員からの意見は後日、メールで事務局へ提出し、委員に共有することとした。)

6 当日の配布資料

次第(PDF:401KB)

委員名簿(PDF:94KB)

資料1 第4期群馬県教育振興基本計画(群馬県教育ビジョン)の素案(PDF:783KB)

資料1-1(参考)OECDラーニングコンパス(PDF:605KB)

資料1-2(参考)群馬県新総合計画の概要(抜粋)(PDF:2.18MB)

資料2 非認知能力育成に向けた指定校による実践研究(PDF:237KB)

資料3 横浜創英中学・高等学校の9つのスキル(PDF:3.24MB)

資料4 BESSIの32のスキル及びCASELの5つの力の概念(PDF:9.19MB)

資料5 IBの10の学習者像(PDF:1.45MB)

資料6 海外連携について(PDF:877KB)

資料6-1 スコットランド・群馬共同研究スキーム(案)(PDF:167KB)

資料7(参考)SSESの対象スキルの説明(PDF:222KB)

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