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令和7年9月16日(火曜日)
県庁24階 教育委員会会議室
平田郁美教育長、河添和子教育長職務代理者、日置英彰委員、小島秀薫委員、中澤由梨委員、宮坂あつこ委員
高橋正也教育次長、古市功教育次長(指導担当)、西村琢巳総合教育センター所長、小林謙五総務課長、角田毅弘管理課長、酒井隆福利課長、角田義行学校人事課長、佐野美幸義務教育課長、高橋章高校教育課長、池田克弘特別支援教育課長、山田知利健康体育課長、鈴木智行総務課学びのイノベーション戦略室長、箱田陽子生涯学習課社会教育主監、高井俊一総務課次長、砂盃香織生涯学習課次長、代田英敏総務課補佐(行政係長)、高田和樹総務課主幹
午後1時00分、平田教育長、教育委員会会議の開会を宣す。
傍聴人は3名、取材者は3名であることを報告。
平田教育長が今回の会議の会議録署名人に中澤委員を指名。
議案審議に先立ち、平田教育長から、第36号議案から第38号議案は県議会への報告する案件であるため、第39号議案から第40号議案は教育委員会表彰に関する案件であるため、第41号議案は教職員の人事に関する案件であるため、第42号議案は個人情報に配慮する案件であるため、審議は非公開で行いたい旨の発議があり、全員賛成で議決した。
教育委員会の主要行事日程及び次回定例会議の日程について、総務課長が説明。
(平田教育長)
私から一言申し上げる。
今年の夏は記録的な酷暑であり、例年にない暑さの中で2学期が始まった。
熱中症の心配や、この時期特有の児童生徒の心身の不調など、心配される点が多くある。
そうした中、各学校では様々な配慮を行い、きめ細かに対応してくださっている。
先生方には心から感謝している。
今後も群馬県教育委員会として、各学校を全力で支え、子ども達と先生方が安心して充実した2学期を過ごせるよう努めていきたい。
中体連や高体連の大会についても、猛暑の中での開催となり、心配された。
しかし、エアコンのある体育館の活用や、屋外競技の開始時間の前倒し、また途中に給水タイムを設けたり、陸上競技における中長距離走の予選を無くし一発勝負への変更など、様々な工夫がなされた。
各競技において丁寧な熱中症対策等が講じられ、大きな問題なく実施できたことに感謝している。
次に、前橋商業高校水球部のインターハイ優勝および国民スポーツ大会準優勝について報告する。
先月開催されたインターハイでは、17年ぶり11回目の優勝を果たした。
前橋商業高校水球部の皆さんが教育委員会を訪れ、優勝の報告をしてくれた。
厳しい戦いを勝ち抜いた選手たちの活躍は素晴らしく、自信を持って自分の言葉で語る姿に感動した。
その際、国民スポーツ大会でも優勝を目指すと語っていたが、惜しくも優勝は逃したものの、見事準優勝という素晴らしい成績を収めた。
前橋商業高校水球部の話に限らず、各高校の生徒達がそれぞれに頑張っている姿は非常に嬉しく、子ども・若者の存在がいつの時代も明るい未来を感じさせるものであると改めて実感した。
今後のさらなる活躍を心から期待している。
続いて、前回の定例会以降の主な出席行事について報告する。
9月12日に、県議会文教警察常任委員会による沼田高校の視察に参加した。
今回の視察は、前回の県議会定例会において新たに文教警察常任委員に就任された委員の皆様方が、新しく開校した沼田高校の教育内容や施設整備状況について調査することを目的として実施された。
視察では、学校の取り組みや施設、研究の授業など、校内のあらゆる所で取り組んでいる生徒達の様子を委員の皆様方にご覧いただいた。
また、生徒と委員の皆様との意見交換も行われ、生徒たちは実に生き生きとし、教育委員の皆さんと訪問した時よりもさらにパワーアップした姿から豊かな学びの様子が伝わり、非常に嬉しく感じた。
委員の皆様にもその雰囲気を味わっていただき、理解を深める良い機会となった。
次に、各委員の出席状況について報告する。
8月28日から29日にかけて山梨県で開催された令和7年度1都9県教育委員会教育委員協議会に、河添委員が出席された。
会議では、専門高校の魅力向上等について、各都県の教育委員の皆様方と協議が行われたと伺っている。
この件については、後ほど河添委員からご報告いただければと思う。
私からは以上である。
次に、各教育委員から意見や報告をお願いする。
(河添委員)
それでは、教育長からご紹介いただいた件について報告する。
8月28日・29日に、1都9県教育委員会教育委員協議会の視察に参加し、山梨県へ赴いた。
協議会のテーマは「専門高校の魅力向上について」であった。
全体会では、文部科学省の高等学校担当参事官より、専門高校の魅力化に関する説明がリモートで行われた。
施設の現状についてや、DXハイスクール事業、マイスターハイスクール、専門高校に関する支援策、特色ある取り組み、またコミュニティ・スクールの仕組みの活用、高等学校改革の今後の方向性などについて説明があった。
この内容については、後ほど資料等を通じて皆さんと共有したいと考えている。
2日目には、農業系の専門学科を持つ笛吹高校の視察に参加した。
資料もいただいたが、RPGの世界観を感じさせる高校案内が印象的であった。
この高校は、普通科、食品科学科、果樹園芸科、総合学科を有し、文部科学省の指定研究開発校でもある。
笛吹高校は普通科と農業学科等専門学科を併設しており、元の農業学科の敷地が離れているので、生徒はバスで果樹園などに通いながら学習を積んでいる。
このような取り組みは、他都県の事例としても非常に参考になると感じた。
高校の無償化の影響は、今後様々な場面に及ぶと思われるが、今回の協議会では、専門高校の価値の高さを共有し、今後の方向性について考え合う貴重な機会となった。
私自身もこの4年間で、県内の特色ある高校を数多く見学してきた。
普通科はもちろん、専門学科や総合学科を持つ高校は、どこも非常に魅力的であると感じていた。
特に探究学習については、必然的で、専門性が深く、地域に広がりがあるという点や、アイデアや行動力、実践力、自分への自信につながる点など、子どもたちの成長にとって非常に良い環境が整っていると実感していた。
また、専門学科のある高校は、地域からの期待や地域とのつながりも大きな魅力であり、価値であると感じていた。
専門高校の魅力向上については、こうした探究学習の高い取組や実践ができるところにあると感じている。
また、文部科学省の説明や協議会の中でも、専門高校の良さが中学生や保護者に十分に伝えられていないのではないかという指摘があった。
専門学科の内容や魅力を知る機会が、まだ少ないのかもしれないという意見もあった。
事前に担当課から説明いただいた群馬県の状況からは、群馬県では、丁寧に分かりやすく、子どもたちや保護者の目に触れるよう工夫されていることが分かり、非常に進んでいると感じた。
それと同時に受け取る側である中学生や保護者が、その情報を受け取れる素地がまだ十分に整っていない可能性もあると感じた。
例えば、義務教育段階のキャリア教育の中で、より多くの機会を設ける必要があるのではないかという話題も出た。
学びとは、広く学びながら自分の可能性を広げ、自分のやりたい分野を見つけ、それにより専門性を深め極めながら、さらに学んでいける。進路やキャリア教育は、今後ますます重要な役割を担っていくと感じ、皆で協議を深めてきた。
また、啓発や広報等の周知も大切であるが、教育長も常々お話しされているように、各校のホームページだけでなく、意識的に新聞やテレビなどを通じて、高校生たちの活躍が新聞記事やテレビで取り上げられており、そうした情報が子どもたちの将来を見極める上での良い材料になるのではないかと思った。
各種大会に参加したり、企画したりすることや、それがテレビ等で放送されることは、子どもたちの意欲を高める良い機会になる。
最近、「税」に関するクイズ番組をテレビで見たが、こうしたことも良いと感じた。良さや楽しさを発信していくことは群馬県の良さの一つである。協議会に参加し、改めてその素晴らしさを感じた。
今回の協議会では、他県との交流出来る機会もあり、働き方改革や教育施策に関する具体的な情報や資料を得ることができ、大変有意義な機会となった。
早速本日、皆さんとその内容を共有できたことも、非常に嬉しい経験となり、多くの学びを得ることができた。
(平田教育長)
続いて、関係所属長から報告をお願いする。
質問はすべての報告が終了した後、一括して行う。
総務課学びのイノベーション戦略室長、資料1 (PDF:314KB)により報告。
生涯学習課次長、資料2 (PDF:127KB)により報告。
(平田教育長)
ただいまの報告について、委員から意見や質問があるか。
(河添委員)
非認知能力の評価・育成事業に関わる海外渡航報告について、非常に興味深く拝聴した。
両国の先生方の間で、課題が似ているという点、特に、教員同士の対話不足や、それに伴う時間の不足が共通の課題として挙げられていた。
私は、スコットランドではそうした課題はあまりないのではないかと思っていたが、実際にはそうした状況があると聞き、意外に感じた。
もし、どのような点がより具体的な課題として挙げられていたのかを分かれば教えていただきたい。
(総務課学びのイノベーション戦略室長)
やはり教員の多忙化については、どの国でも共通する課題であると感じている。
我々も渡航前には、スコットランドの教育現場について、学級の児童生徒数が少ないのではないかとイメージしていたが、実際には30人前後であり、日本と大きな違いはなかった。
その点からも、先生方が抱える業務量に大きな差はないのではないかと感じた。
また、先生方には個別に教材研究の時間が設けられていると伺ったが、空き時間が教員間で揃っていないため、情報共有や児童生徒の様子についての対話が不足しているという課題があるようだった。
特に非認知能力の育成においては、子ども一人ひとりの細かな変化を見取る必要があるため、教員同士の対面での情報交換や共有の時間が十分に確保されていないことが、非認知能力の見取りの難しさにつながっていると感じた。
(河添委員)
小学校における自己のコントロールや、規律ある学校生活について、スコットランドの方々が非常に関心を持たれていたというお話があった。
これは、スコットランドでそうした点が課題や問題になっているということか。
(総務課学びのイノベーション戦略室長)
そういった直接的な課題ではないと思うが、やはり個人主義の強い欧米の教育文化の中で、日本の小学校における1日の生活の様子を朝から放課後までを紹介した際、朝の会の進め方や休み時間の過ごし方、清掃活動など、日々の学校生活の中で児童が自己コントロールを発揮し、高い規律ある集団生活を送っている点をスコットランドの先生方は評価してくださったのではないか。
(河添委員)
日本の教育には、不易の部分があり、他国からもその価値が認められていることを、スコットランド訪問の報告から改めて実感した。
ありがたく思うと同時に、どのような点に課題があるのかを考えながら、報告を聞かせていただいた。
(日置委員)
今回の視察に関連して、大学の視察があったとのことでお伺いしたい。
教員養成大学の視察ということで、私自身も現在、教員養成同大学の教員をしているが、「教師としての自信を養う指導」という点に関心がある。
真面目な学生ほど、教職について深く考える中で、「自分が本当に子どもたちの人生を背負ってよいのだろうか」と悩み、自信を失ってしまう学生がいる。
こうした学生に対して、どのような指導が行われているのか、もし具体的な取り組みが分かれば教えていただきたい。
(総務課学びのイノベーション戦略室長)
スコットランドのダンディー大学を訪問したのだが、大学の先生の中では、特別な支援を要する児童生徒の割合が非常に多いという点が、課題とされていた。
教員を目指す大学生達が、そうした特別な支援を要する児童生徒の見取りがうまくいかないことによって、自信をなくしてしまうケースがあるという話を伺った。
その対応としては、長期間にわたる学校実習の中で、児童生徒の様子を見取るためのノートを作成し、朝から帰りの会までの子どもの姿を客観的に記録する。その記録を共有し協議することで、子どもを見取る目を養うという取り組みが進められているとのことであった。
(日置委員)
学生アンケートによると、要配慮の児童生徒への支援に自信がないという声がある。
その点については、日本でも同様の課題があると感じており、学校でも今後考えていく必要があると改めて感じた。
(中澤委員)
非認知能力の海外渡航報告に関して、大変興味深く感じた。
先ほど、日本の小学校の事例をスコットランドの先生方が非常に興味深く見てくださったという話があった。
朝に集合し、1日を規律正しく、みんな同じように過ごしていくという、日本の学校生活の規範、規律的な的な面は、他国から見ると興味深く映るのではないかと思う。
一方で、テイビュー小学校の、一人ひとりが学校で学ぶべきことに取り組み、それぞれの非認知能力を伸ばし、育んでいくという、個別最適化された教育については、日本でも参考にしたい点だと思う。
その点について、今回の視察の中でどのようなことが見られたのか、参考になったのかについて、もう少し詳しく教えていただきたい。
(総務課学びのイノベーション戦略室長)
個別最適な教育に関しては、やはり「子どもの見取り」が非常に重要であると感じた。
非認知能力は数値で測ることが難しいため、子どもの成長を発達段階に応じてどのように見取っていくかが、スコットランドの先生方も、苦労されている点である。
そうした見取りのためにどのように時間を確保するか、また教員同士が情報を共有する場面をどう設けるかが、今後の課題であると感じている。
そのような中で、スコットランドでは、時間を捻出するため努力をしている点が参考になったところである。
また、学校内で「見取りの視点」を共有していた。
発達段階に応じて、「この学年、この年齢の子どもたちは、ここまでの力を目標にする」といった目標が設定されており、具体的な取り組みについては各教員に任されている部分が多いという点が、日本との違いとして感じた。
それが可能なのは、学校全体で「目指す子どもの姿」が共有されているからである。今後「群馬モデル」の構築に向けて、目指す子どもの姿を共有できるような指針を策定するにあたり、そうした視点を盛り込んでいくことができればと考えている。
(中澤委員)
集団行動を取れているかどうかではなく、その子の発達に応じて見取るということになるのか。
(平田教育長)
「個別最適」とあるので、「この子はこういったことが得意だからもっと伸ばそう」と子ども一人ひとりの個別の目標を立てるのか、それとも「これを目指してみんなで進もう」というような、全体としての目標に向かう形なのか。
「個別最適化」という言葉からは、どうしても一人ひとりがそれぞれの目標に向かって取り組むというイメージが強くなるが、そのあたりはどうだったのか。
(総務課学びのイノベーション戦略室長)
すべてを捉えきれたわけではないが、イメージとしては、やはり個人個人の取り組みが重視されていたように感じている。
(教育次長(指導担当))
スコットランドではなく、インクルーシブ教育に関するスウェーデン視察での所感になるが、前提として学習や知識、スキルといったものが、人生や生活の中で「個人のもの」として捉えられているということを非常に感じた。
中澤委員がおっしゃっていたように、「全体主義的な指導」の日本の教育には、逆に新鮮さを感じていただいたように思う。
一方で、スコットランドでもそうだったが、ヨーロッパの教育文化には、「学びは一人ひとりが自分で身につけるものだ」という文化や考え方が前提として強く根付いている。
(中澤委員)
これは、教育の本質に関わる部分であるが、「その『学びは自分で責任を持つものである』という考えを身につけるためにはどうしたらよいのか」ということが、テーマであり、課題と感じる。
子どもひとり一人が「自分の学びの主体となる」ということかと思う。
(教育次長(指導担当))
言い方を変えると、「先生のために良い子で授業を聞いている」というような受動的ではないということである。
(平田教育長)
スウェーデンの視察については、後日改めてご報告させていただく予定である。
スコットランドの視察には総合教育センターの所長も同行したが、何かあるか。
(総合教育センター所長)
今、「集団」という話が出ていたが、例えば給食に行く際には、きちんと手をつないで集団で行動する。そうした点は、日本の小学校の1日の生活を紹介したことが、参考になるのではないかと感じた。
ただし、個別の学びの内容については、日本以上にかなり精選されており、先生方は、一人ひとりの子どもの学びを見取るために多くの時間をかけている。
学ぶ内容をある程度絞り込んでいる一方で、すごく進んでいる子もおり、そういったことも出来る。
内容を精選するという考え方も、方法の一つであると感じた。
(河添委員)
今お話を伺っていて、非常に重要なことだと感じた。
今後の群馬の教育を推進していく上で、スコットランドが日本から学ぼうとしていること、そして日本がスコットランドから学ぶこと、例えば、学習内容が精選されていることや、自由度の高いカリキュラムが作成されているかもしれないことなども明確にしながら、今後進めていただきたい。
また、常々感じているのは、非認知能力を育成する上での認知能力とのバランスの重要性である。
日本の教育では、学級という集団の中で個と社会性を丁寧に育むことを大切にしてきた。人との調整力といった、「学級の営み」を大切に生かしていくことが、今後も重要である。
その中で、非認知能力であるとか、「個」に着目した指導をどのように取り入れていけるかが課題である。
ただ、非認知能力だけを育てればよい、あるいは認知能力だけができていればよいという、二項対立的な考え方ではなく、バランスを取ることが必要である。
学校の役割とは何かを考えていくこと。最も望ましいのは、先生方や子どもたち自身がその価値を理解し、自分ごととして学びに向かえることである。
そして、非認知能力と認知能力をつなぐのは、私は群馬が掲げている「エージェンシー」だと考えている。
このエージェンシーを軸に、両方の力が伸びていくような教育を、スコットランドとともに育んでいけることを願っている。
(平田教育長)
大変貴重なご意見、ご質問をいただき、議論を深めることができた。
心より感謝申し上げる。
以上で教育長事務報告を終了する。
学校人事課長、第34号議案原案 (PDF:33KB)について説明
異議なく、原案のとおり決定
特別支援教育課長、第35号議案原案 (PDF:100KB)について説明
異議なく、原案のとおり決定
ここで、平田教育長から、これからの審議は非公開で行う旨の発言があり、傍聴人及び取材者は退室した。
総務課長、第36号議案原案について説明
異議なく、原案のとおり承認
管理課長、第37号議案原案について説明
異議なく、原案のとおり承認
高校教育課長、第37号議案原案について説明
異議なく、原案のとおり承認
生涯学習課次長、第39号議案原案について説明
異議なく、原案のとおり決定
健康体育課長、第40号議案原案について説明
異議なく、原案のとおり決定
学校人事課長、第41号議案原案について説明
異議なく、原案のとおり決定
教育委員会記者会見資料について、総務課長が説明。
午後2時06分、平田教育長、教育委員会会議の閉会を宣す。