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水道水の水質試験精度管理
1 精度管理とは
水道水の安全を守るためには、水道事業者等が行う水質検査の正確さや検査結果の信頼性を確保する必要があります。そのため、群馬県では、「群馬県水道水質管理計画」に基づき、食品・生活衛生課と衛生環境研究所が協力し、県内の水道事業者等の水質検査機関や水道法第20条第3項に基づき国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた水質検査機関(以下「登録検査機関」という。)を対象とした精度管理事業を行っています。
本制度管理事業では、各検査機関が実施した共通試料の測定結果を基に、測定値の精度、精確さ、誤差等を一定の手法で算出・評価し、誤差等を小さくする手段を検査業務にフィードバックします。測定結果は、Zスコアにより評価し、Zスコア3以上の機関については、原因及びその対策について報告書の提出を求めます。
- 【Zスコア】
- 検査結果のバラツキを見るための指標。報告値と各検査機関の報告値の平均値との差が、その標準偏差の何倍に当たるかで評価します。Zスコアの絶対値が2以下の場合は「満足」、2を超え3未満の場合は「疑わしい」、3以上の場合は「不満足」とされています。
2 令和6年度精度管理結果
1.対象項目
亜鉛及びその化合物、銅及びその化合物
2.参加機関
参加機関は、水道事業者5機関、水道用水供給事業者1機関、水道法第20条に基づく登録検査機関13機関の計19機関であった。
参加者分類 | 機関名 |
---|---|
水道事業者 | 前橋市水道局 |
水道事業者 | 桐生市水道局 |
水道事業者 | 富岡市公営企業 |
水道事業者 | 安中市上下水道部 |
水道事業者 | 群馬東部水道企業団 |
水道用水供給事業者 | 群馬県企業局水質管理センター |
登録検査機関 | 一般財団法人群馬県薬剤師会環境衛生試験センター |
登録検査機関 | 株式会社江東微生物研究所 |
登録検査機関 | 平成理研株式会社 |
登録検査機関 | 株式会社群馬分析センター |
登録検査機関 | 株式会社環境技研 |
登録検査機関 | 一般社団法人上田薬剤師会 |
登録検査機関 | 一般財団法人新潟県環境衛生研究所 |
登録検査機関 | 一般社団法人新潟県環境衛生中央研究所 |
登録検査機関 | 内藤環境管理株式会社 |
登録検査機関 | オーヤラックスクリーンサービス株式会社 |
登録検査機関 | 株式会社総合環境分析 |
登録検査機関 | 株式会社科学技術開発センター |
登録検査機関 | 株式会社新環境分析センター |
3.実施方法
3-1.分析方法
群馬県衛生環境研究所の協力を得て、令和6年11月25日に試料配付を行った。
配付試料の調製及び容器への分注は、群馬県衛生環境研究所で実施した。
試料の調製には、亜鉛標準液(Zn 1000、化学分析用(JCSS)、Cat.No.48096-2B)、銅標準液(Cu 1000、化学分析用(JCSS)、Cat.No.08046-2B)及び硝酸1.38(有害金属測定用、Cat.No.7697-37-2)を使用した。配布試料は、溶液中濃度が亜鉛0.6 mg/L、銅0.8 mg/L、硝酸1 v/v%となるように超純水で混合し、ポリプロピレン製容器に分注したものとした。
測定試料は、各参加機関で配布試料を希釈したものとし、希釈倍率については検量線の濃度範囲を考慮して各参加機関が判断することとした。
3-2.評価方法
測定結果の解析は、各機関5回の測定結果の平均値を用いて、Smirnov-Grubbsの棄却検定を行い、棄却された機関の値を除外した後、中央値からのずれ、Zスコア、室内変動係数を算出した。本事業では、環境省の水道水質精度管理調査(令和5年度厚生労働省水道水質検査精度管理のための統一試料調査結果)を参考に、評価基準は以下の(1)~(3)とした。
(1)Smirnov-Grubbsの棄却検定で棄却されないこと。
(2)中央値からのずれが±10%以内、または検査機関のZスコアが|z|<3であること。
(3)室内変動係数が10%以下であること。
4.測定結果について
亜鉛及びその化合物
各機関5回の測定結果の平均値を用いて解析を行ったところ、19機関中1機関の測定結果が他の機関の測定結果から大きく外れた値となり、Smirnov-Grubbsの棄却検定で棄却された。棄却された1機関を除いた18機関で再解析を行ったところ、平均値は0.623mg/L、中央値は0.624mg/L、標準偏差は0.0202mg/Lであった。全18機関の中央値からのずれ、Zスコア、室内変動係数は基準範囲内であった。
銅及びその化合物
各機関5回の測定結果の平均値を用いて解析を行ったところ、19機関中1機関の測定結果が他の機関の測定結果から大きく外れた値となり、Smirnov-Grubbsの棄却検定で棄却された。棄却された1機関を除いた18機関で再解析を行ったところ、平均値は0.810mg/L、中央値は0.806mg/L、標準偏差は0.0239mg/Lであった。全18機関の中央値からのずれ、Zスコア、室内変動係数は基準範囲内であった。
5.分析
5-1.分析経験
分析担当者の経験年数は、最小の1年未満が2機関、最長の18年が1機関、中央値は4年であった。分析実績は最小が20検体、最大が52,000検体、中央値が1,400検体と幅広かったが、測定結果との相関は見られなかった。
5-2.測定方法
配付試料を受け取ってから測定を行うまでの保存期間は、1日以内が6機関、2日が4機関、3日~14日が8機関、15日以上が1機関であった。
水質基準に関する省令の規定に基づき環境大臣が定める方法(平成15年厚生労働省告示第261号)では、「速やかに試験できない場合は、冷暗所に保存し、2週間以内に試験する」とあるが、19機関中、1機関(保存期間18日)が2週間を超過して試験をしていた。測定結果から、長期保存による影響は確認されなかった。
分析機器については、19機関中、17機関が誘導結合プラズマー質量分析装置を用いており、2機関がフレームレスー原子吸光光度計を用いていた。
※mg/L(ミリグラムパーリットル)
(参考)過年度の精度管理結果
過年度の精度管理実施項目
過年度の精度管理実施項目一覧はこちらからご覧いただけます。
過年度の精度管理結果報告書
過去5年間の精度管理結果報告書はこちらからご覧いただけます。
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