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群馬県人権教育充実指針

更新日:2011年3月1日 印刷ページ表示

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はじめに

 県教育委員会では、平成14年1月に「群馬県人権教育の基本方針」を決定し、学校教育、社会教育等の5つの方針に基づき、平成18年度までの「群馬県人権教育推進計画(学校教育・社会教育)」を策定し、市町村教育委員会をはじめとして、関係機関との連携のもとに、人権教育を総合的かつ計画的に推進してきました。

 そして、平成19年に、これまでの取組の成果と課題を踏まえ、学校、社会教育関係団体及び市町村教育委員会の取組を支援するために、人権教育をどのように具体的に進めたらよいかという視点で、学校教育及び社会教育・家庭教育における取組の方向性を示した「群馬県人権教育充実指針」を策定しました。

 策定に当たっては、学識経験者、人権関係団体の代表、学校教育及び社会教育の関係者等で組織される「群馬県人権教育推進協議会」において御協議をいただきながら進めてきました。また、広く県民の皆様から御意見を伺いました。

 この10年間で、デートDV、児童虐待、インターネットによる誹謗や中傷、北朝鮮による拉致問題、性同一性障害への差別などが新聞紙面をにぎわせ、以前より人権に対する社会への関心が高まり、早急の対応が必要となった人権問題もあります。今まで以上に様々な人権問題について正しく理解し、人権感覚の高揚を図ることが必要であると考えます。

 そこで、今回の作成に当たっては、今日的な課題に対応できるように、それらの問題解決に向けた取組について改訂を行いました。

 今後も、人権が尊重される社会の実現に向けて、学校教育及び社会教育の場で本指針を活用いただき、本県の人権教育の更なる充実が図られることを期待しています。

平成28年3月

群馬県教育委員会

群馬県人権教育充実指針の策定について

1 策定の趣旨

 県教育委員会では、人権を相互に尊重し合う人権の共存の考え方を理念とし、人権という普遍的文化を構築するため、平成14年1月に「群馬県人権教育の基本方針」を決定し、本方針に基づく具体的な推進方策を、群馬県人権教育推進協議会において協議を行い、平成18年度までの「群馬県人権教育推進計画(学校教育・社会教育)」を策定しました。以来、計画・構築期(平成14年度~15年度)、確立・充実期(平成16年度~18年度)の推進期間を通じて、人権に関する諸施策を総合的かつ計画的に推進してきました。そして、平成18年度に「人権教育推進状況調査」等によりこれまでの取組の検証を行った結果、次のような成果と課題が明らかになりました。

人権教育推進状況調査は、学校及び市町村教育委員会を対象にした人権教育の推進状況についての調査(毎年実施)

成果

◎学校教育

  • 各学校で、人権教育主任(担当者)を設置し、人権教育に関する諸計画を作成するなど、人権教育に組織的、計画的に取り組まれている。
  • 人権に関する重要課題については、発達段階に応じて児童生徒に対し、授業等で指導が行われている。

◎社会教育・家庭教育

  • 各市町村において、人権教育を推進するための基本方針、推進組織、人権教育に関する学習機会の提供及び啓発活動について、整備・推進されている。
  • 人権に関する重要課題について、各市町村で地域の実情に合わせた取組が行われている。

課題

◎学校教育

  • 人権教育に視点を当てた授業実践や人権感覚育成のための指導が必ずしも十分でないなど、児童生徒に対する指導内容・指導方法等に課題がある。
  • 人権教育に関する校内研修が計画的に実施されていないなど、教職員の校内研修の取組に課題がある。

◎社会教育・家庭教育

  • 学習内容が人権問題の知識についての理解に偏りがちであったり、人権感覚の育成に関する学習方法が少なかったりするなど、学習内容・学習方法等に課題がある。
  • 各市町村で指導者の養成及び資質の向上に関する研修が継続的に実施されていないことや、研修により養成した指導者の活躍の場が必ずしも十分でないなど、指導者養成の取組について課題がある。
  • 昨今の社会状況から、家庭における人権感覚や人権意識をさらに高めるための家庭教育への支援が必要である。

 このように、「群馬県人権教育推進計画」に基づく取組の結果として、組織、計画面などは整備されてきましたが、指導(学習)内容、指導(学習)方法、職員研修、指導者養成などの具体的な取組について必ずしも十分でない面があることが明らかになりました。

 そこで、学校、社会教育関係団体及び市町村教育委員会が、「群馬県人権教育の基本方針」に基づき、人権教育をどのように具体的に取り組んだらよいかという視点で、取組の方向性を示し、本県の人権教育の一層の改善、充実に資することを目的に「群馬県人権教育充実指針」を策定することにしました。

 さらに、平成22年度には「群馬県人権教育推進協議会」を組織し、それまでの取組状況を振り返って、今後、一層重視したい取組や新たな指導内容など、指針を補強するべき内容について協議し、その内容を今回の指針に盛り込みました。

2 本充実指針の性格

  • 策定の趣旨を踏まえ、学校、社会教育関係団体及び市町村教育委員会における人権教育の取組の方向性を指針として示しました。
  • この指針をもとに具体的な取組に向けて参考となるよう、解説や取組のポイントをあわせて掲載し、各種研修時の手引書として活用できるよう配慮しました。
  • 群馬県作成の「人権教育・啓発の推進に関する群馬県基本計画」(平成17年3月)と整合性を図り、重要課題を11項目としました。
  • 資料編では、各種計画等のモデル(事例)や関連資料を掲載しました。

 ※本指針では、学校には幼稚園、児童生徒には幼児を含めています。また、社会教育関係団体とは、「法人であると否とを問わず、公の支配に属しない団体で、社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするもの」です。

第1章 人権教育をめぐる状況

 人権保障への取組は、これまで国際的に様々な形でなされてきたにもかかわらず、世界各地では人種差別や地域紛争に伴う顕著な人権侵害、難民の発生など、依然として人権に関する深刻な問題があります。日本においても、女性、子どもたち、高齢者、障害のある人たち、同和問題、外国籍の人たち、HIV感染者等の人たち、ハンセン病元患者の人たち、犯罪被害者等、また、インターネット等による人権侵害など人権に関する様々な問題が存在しています。

1 国連及び国の動向

(1)国連の取組

 1948年(昭和23年)に、国際連合(以下「国連」という。)において「世界人権宣言」が採択されました。その前文の中では、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎である…」と述べられています。

 また、その第1条では、「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。」と宣言しています。これ以降、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)」、「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」(両者合わせて「国際人権規約」という。)や「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」、「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約(人種差別撤廃条約)」など多くの人権に関する条約が採択されるとともに、「国際婦人年」、「国際児童年」、「国際障害者年」、「国際高齢者年」など重要なテーマごとに国際年が定められ、人権が尊重される世界の実現をめざした取組が進められてきました。

 このような国連の人権に対する取組は次第に強化され、1994年(平成6年)に開催された国連総会において、1995年(平成7年)から2004年(平成16年)までの10年間を「人権教育のための国連10年」とする決議とその行動計画が採択されました。さらに、2004年(平成16年)に開催された国連総会において、2005年(平成17年)から「人権教育のための世界計画第1フェーズ」に取り組むことが決議されました。この計画は、初等中等教育をテーマにしたもので、2010年(平成22年)からは、主に高校教育をテーマとした「人権教育のための世界計画第2フェーズ」が、2015年(平成27年)からは、以前の2つのフェーズの実施を強化し、メディア専門家とジャーナリストへの人権研修をテーマとした「人権教育のための世界計画第3フェーズ」に取り組んでいます。

 このように、人権教育は国際社会が協力して取り組むべき基本的課題となっています。

(2)国の取組

 我が国は国際社会の一員として、「国際人権規約」をはじめ、「女子差別撤廃条約」、「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」など人権に関する多くの条約を締結してきました。「人権教育のための国連10年」の決議を受け、平成7年には内閣総理大臣を本部長とする「人権教育のための国連10年推進本部」が設置され、平成9年には「『人権教育のための国連10年』に関する国内行動計画」が策定されました。 

 平成12年には、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行され、人権教育・啓発の理念や、国、地方公共団体及び国民の責務が明らかになりました。この法律に基づき、平成14年には、人権教育・啓発を総合的かつ計画的に推進するため、「人権教育・啓発に関する基本計画」が閣議決定されました。

 この計画には、重要課題である「女性」「子ども」「高齢者」「障害者」「同和問題」「アイヌの人々」「外国人」「HIV感染者やハンセン病患者等」をめぐる様々な人権問題における取組が記されていますが、平成23年には、さらに「北朝鮮による拉致問題等」が加わりました。

 学校教育に関しては、文部科学省において、平成15年に「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議」が設置され、人権についての理解を深めるとともに、人権感覚を十分に身に付けることをめざして人権教育の指導方法等の在り方を中心に検討を行いました。そして、平成16年には、「人権教育の指導方法等の在り方について[第一次とりまとめ]」を公表し、人権教育とは何かということを分かりやすく示すとともに、学校教育における指導の改善・充実に向けた視点を示しました。

 また、平成18年には、指導方法等の工夫・改善のための理論的指針を示した[第二次とりまとめ]を公表し、平成20年には、[第二次とりまとめ]が示した理論の理解を深めるため、具体的な実践例等の資料を収集・掲載した、[第三次とりまとめ](「指導の在り方編と「実践編」の二編)を公表しました。

2 群馬県の取組

 県教育委員会では、平成14年1月に「群馬県人権教育の基本方針」を決定しました。この基本方針のもと、平成16年1月に「群馬県人権教育推進計画(学校教育・社会教育)」を策定し、人権一般の普遍的な視点からの取組、各人権課題に対する取組及び推進体制等について、総合的かつ計画的な推進を行ってきました。

 そして、平成19年3月に、学校教育及び社会教育・家庭教育における取組の方向性を示した「群馬県人権教育充実指針」を策定するとともに、平成22年には「人権教育の取組の充実について(通知)」を発出し、学校及び関係機関等における具体的な取組について示しました。

 平成24年3月には、人権重要課題11項目に対して、小学校及び中学校、高等学校における学習指導要領との関連を示した「人権教育推進資料」を作成し、授業で取り組むべき内容を明らかにしました。

 また、群馬県においては、平成12年に「人権教育のための国連10年群馬県行動計画」を策定し、人権を習慣・文化として日常生活に定着させ、すべての県民が一人一人の人権を尊重した考え・行動をとることができる社会の実現をめざし、各種人権教育・啓発事業を積極的に推進してきました。

 さらに、平成17年3月には、その成果と課題を踏まえ、「人権教育・啓発の推進に関する群馬県基本計画」を策定しました。

 この基本計画には、重要課題として盛り込んだ11項目の各人権課題における現状と課題、今後の取組が示されています。また、人権を単に知識として学ぶだけでなく、日常生活において態度や行動に表れるよう、家庭や地域社会、学校、企業・団体等における人権教育・啓発の現状と課題、今後の取組なども示されています。

 基本計画の進捗状況等については、毎年、人権問題にかかわる有識者や学識経験者を委員とした「群馬県人権教育・啓発推進懇談会」を開催し、この懇談会を通じた意見の把握と情報公開に努め、県民の意見を反映した人権教育の推進に努めています。

第2章 人権教育の基本的な在り方

 本章は、「人権教育」のとらえ方と学校教育及び社会教育・家庭教育における目標など、人権教育の基本的な在り方を示します。

1 人権教育について

(1)人権について

 人権について、様々なとらえ方がなされていますが、「人権教育・啓発に関する基本計画」は、「人間の尊厳に基づいて各人が持っている固有の権利であり、社会を構成するすべての人々が個人としての生存と自由を確保し、社会において幸福な生活を営むために欠かすことのできない権利」と示しています。

 人権を侵害することは、相手が誰であれ、決して許されることではありません。人権が侵害されたことにより、深刻な事態に陥ってしまうこともあります。すべての人は、他の人々の尊厳や価値を尊重し、それを侵害してはならないという義務と責任を負います。特に、生命の大切さについては、幼いうちから繰り返し指導していくことが重要です。

(2)人権尊重の理念について

 人権尊重の理念について、「人権教育・啓発に関する基本計画」は、「自分の人権のみならず他人の人権についても正しく理解し、その権利の行使に伴う責任を自覚して、人権を相互に尊重し合うこと、すなわち、人権共存の考え方として理解すべきである」と示しています。

 「群馬県人権教育の基本方針」では、この理念に基づいて、人権教育を日常的・体験的な活動を通して積極的に推進することとしています。

(3)人権教育について

 人権教育は、「人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動」(「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」第2条)を意味し、「国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう(中略)行わなければならない」(同第3条)とされています。

 本県では、「群馬県人権教育の基本方針」において、人権教育を「基本的人権尊重の精神が正しく身に付き、人権という普遍的文化を構築するための教育活動」であるとしています。

2 学校教育における目標

(1)学校教育における人権教育の目標

 これまでも各学校等において人権教育は推進されていますが、「知的理解にとどまり、人権感覚が十分に身に付いていなかった」との指摘もあり、調査研究会議のとりまとめでは、学校教育における人権教育の目標を、児童生徒がその発達段階に応じ、人権の意義・内容や重要性について理解するとともに、「自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること」ができるようになり、それが、様々な場面等で具体的な態度や行動に現れるようにすることと、示しています。

 人権教育を進めるに当たっては、単に知的理解を深めるだけではなく、自分の大切さや他の人の大切さに気付かせる指導とともに他の人への思いやりや生命を尊重することなどを指導することが重要です。

調査研究会議は、平成15年に文部科学省に設置された人権教育の指導方法等に関する調査研究会議

(2)校種別の目標

 人権教育の目標を発達段階を踏まえ、校種別に示すと次のようになります。

校種別の目標

幼稚園等

遊びの中で身近な人々や自然とのかかわりを通して、生命の大切さや友だちとの違いやよさに気付くとともに、自分を大切にし、他の人のことを思いやれるような態度を身に付ける。

小学校

人権の大切さについて理解するとともに、生命の尊さや、自分の大切さや他の人の大切さに気付き、よりよい人間関係を築こうとする能力や態度を身に付ける。

中学校

(中等教育学校前期課程)

人権に関する基礎的内容や生命を尊重することについて理解を深めるとともに、自分の大切さや他の人の大切さを認め合いながら、身近な人権問題を解決しようとする能力や態度を身に付ける。

高等学校

(中等教育学校後期課程)

人権の概念や様々な人権課題について理解を深め、生命に対する畏敬の念を養うとともに、他者と共生を図りながら、人権尊重社会を実現しようとする能力や態度を身に付ける。

特別支援学校

障害の状態や発達段階に応じ、身体や生命を大切にし、自他のよさを認めるとともに、互いに協力し合って共に生きる社会を実現しようとする態度を身に付ける。

3 社会教育・家庭教育における目標

(1)社会教育における人権教育の目標

 「人権教育・啓発に関する基本計画」では、社会教育における人権教育は、生涯学習の視点に立ち、幼児から高齢者に至るそれぞれのライフサイクルに応じた様々な学習機会を通して、人権尊重の意識を高めることとしています。そして、人権教育を推進するに当たり、人権問題を知識として学ぶだけでなく、日常生活において態度や行動に現れるような人権感覚を育成することが求められるとしています。

 人権教育の推進では、他部局、社会教育関係団体、ボランティア団体、NPO法人、企業等の果たす役割が大きく、それぞれの分野及び立場において必要に応じて有機的に連携を保つことが重要です。

 このことを踏まえて、社会教育における人権教育の目標を次のとおりとします。

 他部局、社会教育関係団体、ボランティア団体、NPO法人、企業等と連携・協働しながら、幼児から高齢者に至るまで一人一人が人権の意義や重要性についての正しい知識を持ち、豊かな人権感覚を身に付け、人権尊重の精神が日常生活の中で生かされる地域社会づくりをめざす。

(2)家庭教育における人権教育の目標

 人権尊重の精神を生活の中に生かしていくためには、すべての教育の出発点である家庭教育が重要な役割を担うことになってきます。「人権教育・啓発に関する基本計画」において、家庭教育では、親自身が、偏見を持たず差別をしないことなどを日常生活を通じて自らの姿をもって子どもに示していくことが重要であると指摘しています。

 このことを踏まえて、家庭教育における人権教育の目標を次のとおりとします。

 様々な学習機会を通して親の人権感覚の育成や人権意識の高揚を図り、親が家庭の中で人権に配慮した態度や行動をとることにより、子どもの健全な人間形成に結び付いていくように努める。

第3章 人権教育の充実に向けて

 本章は、本県の人権教育の充実に向けて、学校、社会教育関係団体及び市町村教育委員会の人権教育の取組の方向性を指針として示します。本充実指針の中核となるところです。

 はじめに、学校教育及び社会教育・家庭教育全般にわたる取組について、それぞれの指針を示した後、それに関する解説や取り組む上でのポイント等を掲載しました。次に、個別の重要課題に対する取組について、それぞれの指針を示し、あわせて主な取組例を掲載しました。

 児童生徒や学習者の実態や地域の実情に応じて、学校教育と社会教育・家庭教育とが相互に連携を図りつつ、あらゆる機会と場を通じて取り組むことが重要です。

1 学校教育における取組の指針

 学校教育において人権教育を進めるに当たっては、人権についての知的理解を深めるとともに、児童生徒が人権感覚を十分に身に付けるための指導を一層充実することが必要です。そのため、各学校においては以下の点に留意して人権教育を推進することが重要です。

  • 教育要領、学習指導要領に基づき、各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間(幼稚園は各領域)のそれぞれの特質に応じ、教育活動全体を通じて推進し、人権が尊重される学校・学級づくりを行う。
  • 校長のリーダーシップや教職員相互の共通理解のもと、学校全体として人権教育に組織的、計画的に取り組む。
  • 教職員は児童生徒一人一人の大切さを強く自覚し、一人の人間として接する。
  • いじめや暴力をはじめ他の人を傷つけるような問題が起きた時には、これらの行為を看過することなく、学校全体として適切かつ毅然とした指導を行う。
  • 家庭、地域社会及び関係機関等と積極的に連携する。

 ここでは、各学校における人権教育の取組を、下記の4つの観点から指針を示します。

  1. 組織・計画に関すること
  2. 児童生徒の指導・支援に関すること
  3. 教職員の研修に関すること
  4. 保護者の啓発、地域及び関係機関等との連携に関すること

(1)組織・計画に関すること

〈指針1〉人権教育の推進体制を充実する。

  • 人権教育を推進する体制は、校長のリーダーシップのもと、人権教育主任(担当者)、学年主任をはじめ、生徒指導部、進路指導部等が随時参加する機能的な構成にすることが重要です。
  • 人権教育主任(担当者)は、人権教育の全体計画、年間指導計画及び研修計画(研修プログラム)に関する企画立案、人権教育に関する研究部の統括など学校全体の指導的役割を果たすことが求められます。また、人権侵害(いじめ、児童虐待等)が生じた際の迅速な対応や相談活動を行うことも大切です。

〈指針2〉人権教育の全体計画・年間指導計画を改善・充実する。

 人権教育の全体計画は、教育活動全体で人権教育を行うことを示すためのものです。そのため、人権教育という視点から全教育活動を見直し、工夫・改善を図ることが重要です。

<参考>全体計画のチェックポイント

◎次の項目について、自校の全体計画を見直しましょう。

  • 人権教育の意義やねらいを全教職員が共通理解し、作成に当たっている。
  • 児童生徒の実態、家庭・地域及び教職員の願いを実態調査等から把握している。
  • 社会の課題や要請、関連法規、教育行政施策等を踏まえている。
  • 学校教育目標を達成するための人権教育目標が設定されている。
  • 児童生徒の発達段階に即した関係学年別目標が設定され、めざす児童生徒の姿が具体的に示されている。
  • 目標達成のため、各教科等においては、その特質に応じて、人権教育とのかかわりを考慮した方針及び特色ある教育活動の計画等が示されている。
  • 人権に関する重要課題への取組が、学校や地域の実情に応じたものとして示されている。
  • 家庭・地域及び関係機関(社会教育関係団体、人権擁護機関等)との連携について、具体的な内容・方法等が示されている。
  • 各目標などにおいて、肯定的な表現で記されている。
  • 年度ごとに、全体計画の見直しを行っている。

 人権教育の年間指導計画は、全体計画に基づき、児童生徒の発達段階に即して、各教科、領域、総合的な学習の時間等の関連を考慮しながら、各学年にわたる指導が計画的に行われるように作成することが重要です。

<参考>年間指導計画のチェックポイント

◎次の項目について、自校の年間指導計画を見直しましょう。

  • 6(3)年間で育てたい能力・態度を見据え、系統的な計画となっている。その際、重要課題の項目とともに人権集中学習などの具体的な取組も位置付けている。
  • 全体計画に記述されている各教科等の指導のねらいを受け、人権教育とのかかわりから洗い出す観点(「育てたい能力・態度」、「重要課題」など)を明らかにし、指導内容を明記している。
  • 各教科では、学習内容や指導方法等から人権教育の目標と結びつく教育活動を洗い出している。その際、人権に関する直接的な学習内容を含む単元等、また、法の下の平等や個人の尊重、生命尊重に関する学習内容を含む単元等を設定している。
  • 道徳では、内容項目として、生命尊重、公正・公平等、人間尊重の精神とかかわりの深い項目を設定している。
  • 特別活動において、学級活動では、生活上の諸問題の解決や望ましい人間関係の育成に重点を置いている。また、児童会(生徒会)活動、学校行事で、学校生活の充実と発展に寄与する体験的な活動を設定している。
  • 総合的な学習の時間では、そのねらいを踏まえ、横断的・総合的な課題、児童生徒の興味・関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた課題などについて、人権教育との関連から学習活動を設定している。
  • 生徒指導、家庭・地域との連携について、関連のある部分を明記している。
  • 年度ごとに、年間指導計画の見直しを行っている。

〈指針3〉人権教育の取組の点検・評価を行う。

 人権教育の取組について、学期や年度末などに教職員による点検・評価及び保護者等による学校評価を工夫して行い、次年度の計画や改善に結びつけることが重要です。

(2)児童生徒の指導・支援に関すること

〈指針4〉人権教育の基盤である常時指導を充実する。

 常時指導は、日常的な指導として、学級経営や生徒指導等を通して行われるもので、児童生徒の望ましい人間関係や学級の雰囲気づくりに大きな影響を与えるものです。この指導は人権教育の基盤をなすものです。

 常時指導においては、児童生徒一人一人のよさが認められ、共に生きているという実感がもてるよう指導することが大切です。

〈指針5〉「人権教育で育てたい能力・態度」を明確にした授業を実践する。

「人権教育で育てたい能力・態度」は次の5つです。

  • 感性…自尊感情を高め、共に生きる喜びや差別に対する憤りに共感する。
  • 知性…人権の概念や様々な人権課題を理解する。
  • 技能…感性や得られた知識を態度化するためのスキルを身に付ける。
  • 判断力…偏見・差別の不当性を科学的・合理的に見きわめ、公正・公平に判断する。
  • 実践力…主体的に人権にかかわる課題を解決し、人権尊重社会を実現しようとする。

自尊感情とは「セルフ・エスティーム」の日本語訳。自分自身をかけがえのない存在と認め、欠点も含めて自分自身を認め、好きになる感情。

〈指針6〉人権週間、人権集中学習等における学習内容を充実する。

 「人権デー」(12月10日)を最終日とする「人権週間」の期間に、人権問題についての作文、「人権の花運動」等の取組を通した発表会、人権標語・人権ポスターづくり、人権擁護委員をゲストティーチャーとして活用した授業など、人権について集中的に学習することが重要です。また、この機会に児童生徒の悩みアンケートなどを行うことも大切です。

 ○人権教育中学生・高校生学習教材「共に生きる」(県教育委員会Webページに掲載)は、人権感覚を育成する上で効果的な参加体験型学習の手法を取り入れ、「気付き」、「学び合い」、「振り返る」といった活動をしながら、人権感覚の育成を図ることを目的とした教材です。中学校・高校では、人権週間などに合わせて本教材を活用した授業(特別活動等)を、学年の共通指導案を作成の上、計画的に実施することが重要です。

〈指針7〉体験的な活動を取り入れるなど指導方法を工夫する。

 豊かな人間性・社会性をはぐくむため、多様な体験的な活動を取り入れるなどの指導方法の工夫を行う必要があります。

 例えば、様々な人々との交流活動や模擬体験活動などにより、人間関係を築く能力やコミュニケーション能力、他の人の立場に立って考えられるような想像力を培うなど、児童生徒の実態等に応じて、創意工夫を凝らして取り組むことが重要です。

 また、体験的な活動などの取組を計画的に位置付け、系統的に指導することによりその成果を日常の中に生かしていくことが重要です。

<参考>参加体験型学習の進め方

(1)アイスブレーキング

 ファシリテーターは、これから始まる参加体験型学習のねらいを説明し、アイスブレーキングを行います。アイスブレーキングは、学習者の緊張感をほぐし、主体的に参加できる雰囲気づくりに必要な活動です。

 ファシリテーターとは、「促す人、促進する人」を意味し、話し合いの場の進行役であるとともに、一人一人の思いを引き出す役割があります。

(2)アクティビティ

 アクティビティとは、学習活動のことです。学習者が意欲をもって取り組むことのできる活動を設定し、効果的な組み合わせを考えます。

(3)話し合い

 アクティビティでの気付きなどをグループで話し合います。互いの気付きや考えを表現し、共有しながら学習内容を深めます。

(4)発表

 グループごとに発表します。ファシリテーターはそれらを整理したり、発表内容に対する意見を求めたりします。

(5)振り返り(まとめ)

 学習者は、全体を通して分かったこと、理解が深まったこと、発見したことなどを発表します。最後に、ファシリテーターは、本学習で大切なことを再度説明したり、新しい課題を指摘したりします。

(3)教職員の研修に関すること

〈指針8〉教職員が自ら人権尊重の態度を身に付ける。

 児童生徒一人一人の大切さを強く自覚し、一人の人間として接するという教職員の姿勢そのものが、人権教育の重要な部分であると言えます。

 教職員自らの言動が児童生徒の人権を侵害することのないよう、常に意識をして指導するとともに、教職員同士の間においても互いを尊重する態度を大切にすることが重要です。

 こうした教職員の人権尊重の態度は、児童生徒に安心感を与えるものです。常に教育活動や日常の生活場面において、言動に潜む決めつけや偏見に気付き、一人一人を大切にしているかについて、点検することが重要です。

<参考>人権尊重の態度を基盤として児童生徒への指導上のポイント

○一人一人の児童生徒を深く理解する。

 児童生徒が充実した学校生活を送るためには、まず、「自分のことが好き」と思う気持ち(自尊感情)をはぐくみ、学級の一員であるという所属感をもたせ、誰からも認められているという充実感を味わわせるようにすることが必要です。

 児童生徒理解に当たっては、行動などの現象や結果だけで判断したり決めつけたりするのではなく、その背景や原因を正しくとらえ、児童生徒の立場になって、その内面や課題を十分に把握するように努めます。その手だてとして、児童生徒と話し合うことを大切にしたり、日記や生活ノートの交換をしたりすることも考えられます。

○尊重し合う人間関係を育てる。

 児童生徒が相互によさを認め合い、励まし合い、支え合う人間関係は、学級の基盤です。学級の人間関係の実態を的確に把握し、望ましい人間関係を育てる学級経営に努めることが重要です。

 それには、他の人の立場に立って、その人に必要なことやその人の考えや気持ちなどが分かるような想像力や共感的に理解する力を育て、誰もが尊重される学級をつくることが大切です。その手だてとして、教職員や同級生と交流する機会を設けたり、児童生徒が生活の中で経験したことや感じたこと、将来の夢などを日記、生活ノートなどに書いたりする機会をつくることも考えられます。

○教室・言語環境を整える。

 教室は児童生徒の生活の場です。教室環境には、目に見える物的なものと人的なものの他に、言語や雰囲気などがあります。特に、言語環境は、あらゆる人間関係の基盤です。児童生徒や教師の何気ない言葉が、時には相手の心を傷つけ、生活への意欲を失わせてしまうことがあります。また、教職員の言動が児童生徒に無意識のうちに偏見や差別の芽を植え付けてしまうこともあります。

 それには、教職員自らが望ましい言語活動に心がけ、学級全体の言語環境を整えることが重要です。

〈指針9〉研修計画(研修プログラム)を作成し、研修の充実を図る。

 研修計画(研修プログラム)は、各学校における人権教育を推進するために、研修の目標、内容、方法等についてまとめたものです。作成に当たっては、教育委員会の指針や指導の重点などを踏まえるとともに、児童生徒の実態や取組の進捗状況を的確に把握することが重要です。なお、年度途中や年度末など、適宜、実施内容等について評価し、改善・充実のための方策を明らかにし、次年度への計画につなげることが大切です。

<参考>校内研修の内容

 校内研修については、次のような研修内容が考えられますが、各学校の児童生徒の実態に応じた工夫が必要です。

○人権に関する法令等の理解

 世界人権宣言をはじめ人権に関する諸条約や法令等を理解する研修を行う。

○人権に関する重要課題の理解

 本充実指針で示された、女性、子どもたち、高齢者、障害のある人たち、同和問題、外国籍の人たち、HIV感染者等の人たち、ハンセン病元患者の人たち、犯罪被害者等、インターネット等による人権侵害、その他の人権問題について、理解と認識を深めることを目的とした研修を行う。

○人権教育に視点を当てた授業実践

 「人権教育で育てたい能力・態度」を明確にし「人権教育とのかかわり・人権教育の視点」を明記した指導案づくりや授業実践を通して、人権教育の指導内容や指導方法についての研修を行う。

○参加体験型学習の実技研修

 実際にファシリテーターや児童生徒役を体験するなど実技を通して、児童生徒の人権感覚育成に有効な参加体験型学習の研修を行う。

○各種研究協議会等の報告

 学校を代表して参加した研究協議会等での研修内容を資料を添えて報告し、自校の人権教育の改善に役立たせる研修を行う。

(4)保護者の啓発、地域及び関係機関等との連携に関すること

〈指針10〉人権教育資料の配布や学校・学年通信、Webページ等による情報提供を通じて保護者の啓発に努める。

 保護者対象の人権教育資料を配布する際に、保護者会・懇談会等を利用し内容を説明する機会を設けるとともに、アンケートを実施するなどして保護者の人権意識の高揚に努めることが重要です。

 また、人権教育の取組の様子を学校・学年通信、Webページ等を通じて情報提供を行い、学校の取組への理解を広めることも重要です。なお、情報提供の際には、個人情報やプライバシーの取扱には細心の注意が必要です。

〈指針11〉地域及び関係機関等との連携に努める。

 人権教育の効果を高めるためには、家庭・学校・地域が共に児童生徒を育てていくという視点に立ち、学校は地域との連携を進めていくことが重要です。

 また、学校の内外を通じての多様な学習活動では、学校外の諸施設、機関等の協力を得ることが必要です。

<参考>地域との協力等を得るための取組

  • 授業等において、地域の人材を生かした取組を工夫する。
  • 人権教育の取組の様子や成果を、学校通信等を通して普段から地域社会の住民に伝え、学校の取組への理解を広めるとともに、そのことを通して、人権を尊重しようとする意識を地域社会にも浸透させる。

<参考>関係機関等との連携の取組

○福祉体験

 県の社会福祉協議会やボランティア団体、地域の福祉施設の協力を得て講演会・模擬福祉体験等を行う。

○ボランティア活動

 夏季・冬季休業期間等を利用して、福祉施設での手伝い、幼稚園でのお泊り保育の手伝い、駅周辺クリーンアップ作戦などの活動を行う。

○生き方にふれる

 命の大切さ、人権などをテーマに地域の人々や団体などから話を聞く。

2 社会教育・家庭教育における取組の指針

 社会教育における人権教育の取組では、様々な学習機会を通して、人権問題を直感的にとらえる感性や日常生活において態度や行動に現れるような豊かな人権感覚を育成することが必要です。そのため、社会教育関係団体及び市町村教育委員会においては、以下の点に留意して、社会教育活動のあらゆる機会を通して、人権教育の充実を図っていくことが重要です。

  • 地域の実情を踏まえ、多くの人が学習に参加できるよう、人権感覚の育成、人権意識の高揚に関する学習等、様々な学習機会の提供に努める。
  • 人権尊重の精神の普及や人権問題の解決に向け、指導者の養成や資質の向上に関する学習機会を充実し、指導者の活動の場の拡充に努める。
  • 各重要課題に応じた取組を充実するため、他部局や社会教育関係団体、ボランティア団体、NPO法人、企業等とも連携・協働していく。

 家庭教育における人権教育の取組では、保護者に対して、子どもの教育や人格形成において最終的な責任を負う役割があることを認識してもらうことが必要です。また、人権教育の基盤である豊かな情操や思いやり、生命を大切にする心、善悪の判断などを育成し、子どもたちの人権感覚や人権意識を高めていくことが必要です。そのため、社会教育関係団体及び市町村教育委員会においては、以下の点に留意して、あらゆる機会を通して人権教育の充実を図っていくことが重要です。

  • 人権感覚、人権意識を高めるために、他部局や関係機関との連携・協働を図りながら、親に対して家庭教育について考える学習機会を提供するとともに、子育てに関する情報の提供を行う。
  • 父親の家庭教育への積極的な参加を支援する。
  • 子育てや家庭教育上の悩みや不安に応える相談事業を充実する。

 ここでは、社会教育・家庭教育における人権教育の取組について下記の4つの観点から指針を示します。

  1. 組織・計画に関すること
  2. 学習機会・内容に関すること
  3. 指導者養成に関すること
  4. 啓発・連携に関すること

(1)組織・計画等に関すること

〈指針1〉人権教育の推進体制を充実する。

 人権教育は、他部局や学校教育と連携を図り、組織的かつ計画的に推進することが重要です。

 既設の人権教育推進協議会等には、市町村教育委員会、社会教育関係団体が策定する人権教育の年間計画についての指導・助言や、実践の点検・評価をする役割を果たすことが求められます。

 また、多様な学習機会を設定するためには、市町村教育委員会、社会教育関係団体等における人権教育の推進状況を把握しておくことが大切です。

 さらに、地域の実情等に応じて、人権教育推進協議会等の人員及び構成団体について柔軟に考えていくことも大切です。

〈指針2〉生涯学習の視点に立った計画の策定及び見直し・修正を行う。

 社会教育における人権教育は、生涯学習の視点に立って、幼児から高齢者に至るそれぞれのライフサイクルに応じた多様な学習機会の充実、指導者の養成等の機会の充実が求められます。そのために人権教育計画の策定及び見直し・修正を行い、学習機会を充実させるとともに指導者の養成を図っていくことが大切です。

<参考>人権教育計画のチェックポイント

◎次の項目について、人権教育計画を見直しましょう。

  • 人権に関する学習機会の設定状況を次の視点で振り返る。
    1誰が対象か。2重要課題のどの項目か。3人権啓発の状況はどうか。4地域の課題に対応しているか。5実施した機関や団体を広げられるか。6実施時期の集中による問題はないか。7関係機関や団体(NPO法人を含む。)相互で学習機会の連携や学習内容調整が行われているか。
  • 実施対象や学習内容(重要課題の項目など)の人権教育の実施状況をもとに、地域の課題解決に向けた中・長期的な計画になっているか確認する。
  • 学習内容・方法等を明記し、人権感覚の育成に向けた学習内容の充実が図られているか確認する。
  • 計画的に指導者の養成が行われているか確認する。
  • 他部局、学校、NPO法人、その他民間団体で実施している人権教育について調査し、事業の連携や学習対象者、学習内容の重複の解消について確認する。

〈指針3〉人権教育の取組の点検・評価を実施する。

 中・長期的な展望に立って地域における人権教育を推進するためには、地域住民の人権に関する意識や学習状況を把握し、課題を明らかにするなど、人権教育の取組の点検・評価をすることが大切です。そして、把握した課題からその原因を考察し、その結果を人権教育計画に反映させていくことが大切です。

<参考>状況把握のための調査のポイント

◎状況把握のための調査は、対象者、実施時期、調査範囲等を明らかにした上で、以下の内容を参考に、質問内容を決めて実施することが大切です。

(1)基本的人権について

 例えば、基本的人権が守られているかどうかなど。

(2)人権や差別問題への関心について

 例えば、人権や差別問題に関心をもっているかどうかなど。

(3)差別や人権侵害を受けた事例について

 例えば、差別や人権侵害を受けたことがあるかどうかなど。

(4)身近な人権侵害への対応について

 例えば、身近な人権侵害にどう対応したのかなど。

(5)差別的な言動の種類について

 例えば、差別的発言をしたことがあるかどうかなど。

(6)重要課題について

 例えば、11項目の人権課題について、それぞれが尊重されているかどうかなど。

 また、家庭教育に関することも内容に盛り込み、その課題を把握する。

(2)学習機会・学習内容に関すること

〈指針4〉多様な場面における学習機会を拡充する。

  • 対象者のライフスタイルに考慮し、実施日時、開催場所、学習内容について、十分に検討を加え、より多くの人たちの参加が得られるようにすることが大切です。また、分かり易いテーマや表現、参加者が人権感覚に気付いていける工夫など、参加者の立場に立った配慮が必要です。
  • 人権教育は他の研修の一部として行うことも可能です。各種事業など、人が集まる場所において、特定の内容や対象者をしぼって人権教育を行うことができます。さらに、学習機会の拡充に向けて、視野を広くもつことも大切です。

〈指針5〉人権感覚・人権意識を高められるよう、学習内容を充実し、学習方法を工夫する。

  • 重要課題については、他部局、学校教育、社会教育関係団体等とも連携・協働し、人権教育計画の見直し・修正を行い、11課題すべてに取り組むことが大切です。
  • 学習内容の充実には、知識を習得する学習ばかりでなく、学習者が主体的に参加する参加体験型学習を効果的に計画するなど、学習意欲が高められるよう、学習教材や学習プログラムを工夫することが大切です。
  • 「人権デー」(12月10日)を最終日とする「人権週間」の期間に、人権標語作品展、人権ポスター展の開催など人権について集中的に取り組み、人権意識の高揚を図ることが大切です。

〈指針6〉家庭教育についての学習機会を拡充する。

  • 家庭ではぐくまれる豊かな情操や思いやり、生命を大切にする心、善悪の判断などの人間形成の基礎が人権教育の基盤です。言い換えれば、家庭教育が人権教育そのものであるということです。このことを踏まえて、親が子育てについて考え、見直し、子どもへのかかわり方を修正していけるように家庭教育に関する学習機会を提供していくことが大切です。
  • より多くの父親が積極的に家庭教育に参加するように、父親等を対象とした学習機会を提供していくことが大切です。
  • PTAの研修会等の保護者の集まりも人権教育の場ととらえ、学校と連携し積極的に活用していくことも大切です。

〈指針7〉人権感覚を高められるよう、家庭教育に関する学習内容を充実し、学習方法を工夫する。

 家庭の中で他人に対する思いやり、善悪の判断、社会的マナー、自制心や自立心を培うことにつながる学習内容を、参加体験型学習の手法を取り入れて実施するなど、学習教材や学習プログラムを工夫することが大切です。

(3)指導者養成に関すること

〈指針8〉指導者養成及び資質向上に関する講座や研修会を充実する。

  • 人権教育では、日常生活の中で人権尊重を基本においた態度や行動が現れるような人権感覚を身に付けさせることが大切です。そのため、家庭や地域など身近な人権課題の解決に向け行動できる指導者を、地域や組織の中で養成していくことが必要になります。
  • 指導者は、人権について広い識見と知識をもち、効果的に学習を進める手法を身に付けることが必要です。また、地域における指導者を養成する講座への参加対象者を広げ、幅広い指導者を養成することも大切です。
  • 指導者に対しては、人権一般の普遍的視点からの内容、具体的な人権課題に即した個別的視点からの内容、参加体験型学習の進め方などの内容を継続的に学習する機会を設定し、その指導力が高められるようにします。また、地域の指導者間の連携を図り、共同で人権教育の計画や学習のプログラムを立案したり、地域における人権教育の推進状況について意見交換したりするなど、指導者の資質の向上を図ることが大切です。

〈指針9〉指導者養成講座等を修了した人の活動の場を提供する。

  • 人権感覚や人権教育についての専門的な知識や技能を身に付けた指導者に講座等の指導者や事業の企画立案者として参加してもらうことが大切です。参画に当たっては、学習のアシスタントから企画・立案へと段階的になるように配慮することが必要です。
  • 指導者養成講座等の修了者が、講座で修得した内容を団体の会議等で積極的に伝達することで研修の成果を広めていくことが大切です。
  • 指導者養成講座等の修了者にPTAや青少年団体等を対象とした家庭教育に関する講座の講師として参画してもらうことも大切です。

〈指針10〉PTAや青少年団体等を対象にした指導者養成の講座等を実施する。

 家庭教育における人権教育を支援していくために、PTAや青少年団体等の子どもたちに直接関わっている人たちを対象に、指導者養成の講座等を行っていくことが大切です。

(4)啓発・連携に関すること

〈指針11〉人権教育に関する啓発活動の改善・充実を図るとともに、より効果的な方法について工夫する。

  • 人権問題を身近な課題として多くの人が気付いていくためには、人権にかかわる様々な情報提供を意図的・計画的に行うとともに、継続していくことが大切です。
  • 広報媒体としては、広報紙やポスターをはじめWebページなどがあります。
  • 重要課題の内容の取り上げ方に偏りがないように気を付けるとともに、定期的に取り上げるのか、人権週間等で集中的に取り上げるのか、事件等から緊急に取り上げるのかなど、取り上げる時期について配慮する必要があります。
  • 情報提供に当たっては、対象者の実態を考慮して、意図した情報が的確に伝わるよう工夫することが大切です。
  • 人権教育の啓発活動として、人権についての不安や悩みに応える相談窓口について広報していくことも大切です。

〈指針12〉他部局、学校、社会教育関係団体、人権擁護機関、ボランティア団体、NPO法人、企業等と積極的に連携・協働していく。

  • 行政間の連携はもとより、学校、社会教育関係団体、人権擁護機関、ボランティア団体、NPO法人、企業等とも積極的に連携・協働することで、そのネットワークを広げ、人権が尊重される地域づくりにつなげていくことが大切です。
  • 他部局、学校、社会教育関係団体、人権擁護機関、ボランティア団体、NPO法人、企業等と積極的に連携・協働していくことは、既存組織・機関の活性化にもつながり、女性、子ども、高齢者等の重要課題に応じた取組の推進ということからも、非常に効果的です。
  • 協働していく団体、機関とは、人権教育の推進という目標を共有し、互いを補完し合っていくという考え方で活動を進めていくことが大切です。特に、学校との連携では、互いにもっている様々な情報を共有したり、現状や課題を話し合ったり、課題解決の方策を論じたりしていくことが大切です。
  • 団体からの要望等は、真摯に受け止め、啓発活動等に取り入れていく姿勢が大切です。

〈指針13〉PTA、青少年団体等と積極的に協働して、家庭での人権教育に関する啓発活動を充実する。

  • 家庭教育での人権に関する啓発は、PTAや青少年団体等の広報紙等を活用して、家庭教育で培うべき、基本的な生活習慣、善悪の判断、社会的マナー、自制心や自立心などの理解やその育成などに関係した活動を行っていくことが大切です。また、家庭教育上の不安や悩みに応える相談窓口を充実させていくことが大切です。
  • PTA、青少年団体等との協働では、必要に応じて、その代表者に事業の企画段階から参画してもらうなど柔軟に考えていくことが大切です。
  • 各家庭で人権に配慮した子育てができるように、様々な情報提供を行っていくことも大切です。
  • 協働していく団体は、PTA、子ども会育成会、老人会、自治会、スポーツ少年団、各種サークル団体、ボランティア団体、NPO法人などが考えられます。

3 重要課題に対する取組の指針

 ここでは、11項目の重要課題についての取組について、指針と主な取組例を掲載しました。この取組例を参考に児童生徒や学習者の実態に応じて、各重要課題の解決に向けた取組を進めていくことが重要です。

(1)女性

〈指針1〉男女の平等や男女共同参画を推進する学習を通して、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することのできる男女共同参画社会の実現をめざす。

 取組例

◎学校教育 ※特に校種に限定した取組については(幼)、(小)、(中)、(高)と示す。

  • 幼児期において、一人一人が性別にかかわりなく、よさが発揮できるように遊びの環境構成を工夫する。(幼)
  • 社会科、生活科、家庭(技術・家庭)科、体育(保健体育)科、道徳及び特別活動において、男女がそれぞれを認め合い、尊重し合うことの大切さを理解するための学習を行う。(小・中)
  • 地理歴史科、公民科、保健体育科及び家庭科などにおいて、男女差別撤廃の歴史や男女平等実現を意図する様々な条約、法令・条例等を知り、その精神や目的を理解するための学習を行う。(高)
  • 特別活動や総合的な学習の時間において、男女共同で行う作業のよさや楽しさが体験できる学習を行う。(小・中)
  • 特別活動や総合的な学習の時間において、男女相互の理解と協力の在り方や男女共同参画社会について考察する。(高)
  • 男女が互いに認め合い、尊重し合うことの大切さを保護者にも理解してもらえるよう、授業参観や学級懇談会のもち方を工夫する。
  • 教職員がデートDV防止に対する正しい知識を持ち、望ましい人間関係について発達の段階に応じた適切な指導をする。

◎社会教育・家庭教育

  • 固定的な性的役割分担意識や就業分野等における男女の格差の解消に関する学習機会を様々な機会を捉えて設定していく。
  • セクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンス(DV)防止のための学習機会を積極的に設定する。
  • 女性の職業生活と家庭・地域生活の両立を支援するための学習機会を積極的に設定する。
  • 父親等の積極的な子育て参加に関する学習機会を工夫して設定する。
  • 女性の社会進出支援や父親の子育て講座等をPTA活動、地区行事や公民館の学習活動に積極的に取り入れる。

(2)子どもたち

〈指針2〉子どもの人権について理解を深める学習や、いじめや児童虐待など子どもの人権に関する問題についての対応を通して、子どもの人権を尊重する社会の実現をめざす。

 取組例

◎学校教育

  • 道徳教育において、「思いやり」「生命尊重」などを扱い、自分や他の人を大切にする道徳的実践力を育成する。
  • 道徳教育や特別活動において、いじめや差別について話し合い、それらを許さない態度を身に付けるための学習を行う。
  • 社会科、生活科、家庭(技術・家庭)科及び特別活動等において、自分や友だちのよさに気付き、互いに尊重し合うことの大切さについて理解を深めるための学習を行う。特に、社会科においては、日本国憲法に定められている「基本的人権」や「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」について学習し、児童生徒一人一人の個性や考え方が尊重されることが重要であることについて理解させる。(小・中)
  • 地理歴史科、公民科、家庭科及び特別活動等において、子どもをめぐる人権問題について理解を深め、その解決に主体的にかかわろうとする態度を身に付けるための学習を行う。特に、家庭科においては、乳幼児への理解を深めるとともに、子育てにおける親の役割や子どもの福祉について考察し、それらを実践できる知識と技能を身に付けさせる。(高)

<留意点>

※教職員は、いじめは、どの学校でも、どの子にも起こり得る問題であることを十分認識し、早期発見、早期対応に努める。

※教職員は、児童虐待について、学校及び教職員に早期発見義務及び通告義務があることを十分認識し、早期発見、早期対応に努める。

  • 教職員が児童生徒と会話する機会を増やすなどして、いじめ被害や児童虐待の防止、早期発見に努める。
  • 児童虐待が発生する背景の一つと指摘されている貧困の現状と児童虐待との因果関係等に関する教職員の理解を研修等を通して深める。

◎社会教育・家庭教育

  • 児童虐待防止及び非行等の青少年問題に関する学習内容を改善・充実する。
  • 積極的に子どもたちの人権や基本的な生活習慣、豊かな情操、他人に対する思いやり、善悪の判断、社会的マナー、自制心などに関する学習を様々な機会を捉えて設定していく。
  • 子育てについての悩みの解消し、子育てに自信をもてるような子育て支援に関する学習内容を改善・充実する。
  • 保護者等の家庭教育に関する不安や悩みに応える相談窓口の充実に努める。
  • 出産・育児経験の豊富な方を地域の子育て支援の講師に登用し、さらに子育てについて相談できるような仕組みをつくる。

(3)高齢者

〈指針3〉高齢者との交流や高齢者について理解を深める学習を通して、高齢者が生き生きと暮らせる社会の実現をめざす。

 取組例

◎学校教育

  • 高齢者との交流において、高齢者から話を聞いたり,高齢者と共同作業したりすることを通して、豊かな経験をもつ高齢者に対する尊敬と感謝の心を育てる。
  • 模擬体験をすることで、高齢者の立場になって、自分ができることは何かを考えることができるような学習を行う。
  • 社会科、生活科、家庭(技術・家庭)科及び特別活動等において、高齢社会に関する基礎的理解や介護・福祉の問題などの課題について理解を深めるための学習を行う。(小・中)
  • 総合的な学習の時間において、小中学校間の学習のつながりを図り、発達段階に応じて高齢者との触れ合いを生かした学習を行う。(小・中)
  • 公民科、家庭科及び専門教科(家庭、看護、福祉)において、高齢社会に関する理解や介護・福祉の問題などについて知識、技術を習得するための学習を行う。(高)
  • 福祉施設等における体験学習を企画する際には、児童生徒に認知症にかかわる理解を深める学習を行う。

◎社会教育・家庭教育

  • 高齢者への偏見・差別や虐待等の人権侵害の実態及び高齢者を理解するための学習内容を改善・充実する。
  • 社会教育施設における各種教室・講座で経験豊かな高齢者を指導者等として参画してもらうなど、高齢者の社会参加を促進する。
  • 児童生徒等と高齢者との世代間交流を図る事業を継続して実施する。
  • 認知症にかかわる理解を深めるとともに、今後のさらなる高齢社会を見据え、若者と高齢者が相互理解し、共存していくための学習の場を積極的に設定する。

(4)障害のある人たち

〈指針4〉障害のある人たちに対する理解を深めることやノーマライゼーションの理念を定着させるための学習を通して、障害のある人たちの自立と社会参加をめざす。

ノーマライゼーションの理念とは、障害のある人もない人も、互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会をめざす考え方。

 取組例

◎学校教育

  • 幼児期において、障害のある幼児とのかかわりを通して、自分と相手との違いを知り、相手を尊重して行動できるような態度を身に付ける。(幼)
  • 特別活動や総合的な学習の時間等において、障害のある児童生徒との交流及び共同学習等を通して、障害のある子どもに対する理解を深めるための学習を行う。また、模擬体験をすることによって、障害のある人たちの立場に立った考え方ができるようになるための学習を行う。また、模擬体験をすることによって、障害のある人たちの立場に立った考え方ができるようになるための学習を行う。
  • 社会科を中心とする教科において、障害者問題についての基礎的知識や障害者が生活しやすい社会について理解を深めるための学習を行う。(小・中)
  • 公民科及び専門教科(福祉)において、障害者に対する社会的支援や介助・福祉の問題について理解を深めるための学習を行う。(高)
  • 身近な障害のある人たちとの日常的な交流及び共同学習等の機会を設け、障害のある人たちへの理解を一層深める。

◎社会教育・家庭教育

  • 障害者に対する偏見や差別の実態及び障害者を理解するための学習内容を改善・充実する。
  • 障害のある人との相互理解を深めるため、連携・協働してフェスティバルを開催したり、各種団体等の学習活動の発表の場を設定したりするなど、交流を推進する。
  • 企業における障害者への理解促進等、具体的な事例を基に、障害者に対する偏見や差別の解消に向けた取組を推進する。

(5)同和問題

〈指針5〉同和問題に関する正しい理解と認識を深める学習を通して、同和問題に関する差別意識の解消を図る。

 取組例

◎学校教育

  • 社会科を中心とした教科において、同和問題を歴史的に正しく理解するとともに、基本的人権にかかわる課題としてとらえ、身近な差別や偏見を進んで解消しようとする実践力を身に付けるための学習や、科学的・合理的なものの見方・考え方や生き方を培うための学習を行う。(小・中)
  • 地理歴史科及び公民科において、同和問題の歴史的経緯について正しく理解するとともに、同和問題で学んだことを自己の在り方生き方に生かし、差別のないよりよい社会を実現しようとする行動力を身に付けるための学習を行う。(高)
  • 教職員自身が同和問題に対する正しい知識をもてるよう、各種講座及び研修会を積極的に活用する。
  • 社会科や地理歴史科・公民科等において、同和問題の歴史的に正しい理解と、科学的・合理的なものの見方・考え方を一層深める。

◎社会教育・家庭教育

  • 同和問題に対する正しい理解と認識を定着させるため、講座や研修会等の学習内容・学習方法を改善・充実する。
  • 集会所をはじめとする社会教育施設等を活用して、各種教室等を開設し、住民相互の交流活動を推進する。
  • 同和問題に対する間違った意識を悪用した「えせ同和行為」についての学習機会を設定し、その排除に努める。
  • 「どこが同和地区か」などの指導はしない方針を継続していくとともに、人権教育についての指導者養成を一層進める。

<留意点>

※「群馬県同和教育の基本方針」に基づき取り組むことが大切である。(学校教育・社会教育)

(6)外国籍の人たち

〈指針6〉異なった文化や習慣に対する理解を深める学習や外国籍の人たちとの交流を通して、外国籍の人たちに対する偏見や差別の解消を図り、多文化共生社会の実現をめざす。

 取組例

◎学校教育

  • 小学校での英語活動や中学校からの英語科を中心として、ALTとの指導の工夫も図りながら、異文化理解にかかわる学習活動を積極的に取り上げ、諸外国の文化や言葉について正しく理解するための学習を行う。
  • 総合的な学習の時間において、「国際理解」をテーマとして取り上げ、お互いの文化を尊重しながら共に生きていく態度やその生き方を育成するための学習を行う。
  • 外国籍児童生徒が活動できる場を設定し、外国籍児童生徒から外国の話を聞いたり、外国の文化に触れたりすることで、外国籍児童生徒の存在の価値を感じ取らせるようにする。
  • 社会科を中心とする教科において、日本と世界の結びつきや異なる文化や習慣について理解を深めるための学習を行う。(小・中)
  • 地理歴史科及び公民科において、世界の国々の実情と外国籍の人たちを取り巻く現状を正しく理解し、異なる文化をもつ人々が共に生きられる国際化社会の実現に向けて行動する実践的態度を身に付けるための学習を行う。(高)
  • 自国の文化を大切にしたうえで異文化を尊重できるよう指導する。
  • 社会的・文化的・地理的な背景等を踏まえた異文化に関する学習を工夫する。

◎社会教育・家庭教育

  • 外国籍の人たちと地域の人たちの相互理解を深めるための学習機会を充実するとともに、学習の指導者として外国籍の人たちに参画してもらう。
  • 外国の文化や習慣について理解するため、外国籍の人たちとの交流活動を促進する。
  • 日本に住む外国籍の人に対して、日本の文化や習慣などを伝わりやすい、分かりやすい方法で紹介する講座なども積極的に取り入れる。
  • 外国語及び外国文化についての講座や交流活動などを、PTA活動や公民館等で設け、理解を深める。

(7)HIV感染者等の人たち

〈指針7〉HIVやエイズに関する正しい知識を身に付ける学習を通して、HIV感染者やエイズ患者に対する偏見や差別の解消を図る。

 取組例

◎学校教育

  • 体育(保健体育)科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間等において、HIVやエイズに関する正しい知識を身に付けるとともに、HIV感染者やエイズ患者への偏見や差別をなくそうとする心情を育てるための学習を行う。
  • 教職員が疾病に関する正しい知識をもてるよう、計画的に校内研修等の機会を設ける。
  • プライバシー保護の重要性にも触れながら、HIV感染者等の人たちに対する人権問題について指導する。

◎社会教育・家庭教育

  • HIV感染者やエイズ患者に対する偏見や差別を解消するための学習機会を設定し、正しい知識の普及と予防を含めその理解を深める。
  • 偏見や差別を解消するための学習機会を通して、正しい知識の普及と予防に関する理解を一層深める。

(8)ハンセン病元患者の人たち

〈指針8〉ハンセン病に関する正しい知識を身に付ける学習を通して、ハンセン病元患者の人たちへの偏見や差別の解消を図る。

 取組例

◎学校教育

  • 社会科、公民科、体育(保健体育)科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間等において、ハンセン病に関する正しい知識を身に付けるとともに、ハンセン病元患者の人たちに対する人権問題について理解を深めるための学習を行う。
  • 教職員が疾病に関する正しい知識をもてるよう、計画的に校内研修等の機会を設ける。
  • プライバシー保護の重要性にも触れながら、ハンセン病元患者の人たちに対する人権問題について指導する。

◎社会教育・家庭教育

  • ハンセン病元患者の人たちに対する偏見や差別を解消するための学習機会を設定し、正しい知識の普及とその理解を深める。
  • 偏見や差別を解消するための学習機会を通して、正しい知識の普及とその理解を一層深める。

(9)犯罪被害者等

〈指針9〉犯罪被害者等に関する人権問題について理解を深める学習を行う。

 取組例

◎学校教育

  • 社会科及び公民科において、犯罪被害者等に関する人権問題について理解を深めるための学習を行う。

<留意点>

※教職員は、犯罪被害者等である児童生徒の相談等に対応できるように努める。

  • 児童生徒自身も被害者になる可能性があることを伝え、犯罪被害者の置かれている現状についての理解を深められるよう指導する。

◎社会教育・家庭教育

  • 犯罪被害者等に関する人権問題についての学習機会を設定し、理解を深める。
  • 公民館事業等の学習機会を通して、犯罪被害者等に関する人権問題についての理解を一層深める。

(10)インターネット等による人権侵害

〈指針10〉インターネット等による人権侵害や情報モラルに関する学習を行う。

 取組例

◎学校教育

  • 社会科及び公民科において、インターネットによる差別事象やプライバシーの侵害等の人権問題について理解を深めるための学習を行う。
  • 技術・家庭科及び総合的な学習の時間において、掲示板やメールなどについて具体的に考えさせる場面を通して、情報モラルや個人の責任について理解を深めるための学習を行う。(小・中)
  • 情報科において、インターネット上の情報をめぐる問題を含め、情報化の及ぼす影響について考察し、情報の収集・発信における個人の責任や情報モラルについて理解を深めるための学習を行う。(高)
  • インターネットや携帯電話に詳しい民間NPO等諸機関を活用するなどして、情報モラル等に関する学習を工夫する。

◎社会教育・家庭教育

  • インターネット等による人権侵害及び情報モラルに関する学習機会を充実する。特に、誹謗中傷、差別的な書き込みや犯罪につながる恐れのあるサイトの実態についての学習機会は積極的に設定する。
  • 誹謗中傷・差別的な書き込み、犯罪につながるサイト、セクスティング等について、実態を知ることが大切であり、特に小中学生を持つ保護者に周知する取組が望まれる。

セクスティングとは、携帯電話で性的な写真や動画を送る行為を指す。

(11)その他の人権問題

〈指針11〉アイヌの人々や性同一性障害などの人たちに対する偏見や差別の解消を図るとともに、拉致問題など、様々な人権問題について理解を深める学習を行う。

 取組例

◎学校教育

  • 社会科、地理歴史科及び公民科において、アイヌの人々の生活文化や伝統についての理解を深め、尊重しようとする態度を身に付けるための学習を行う。
  • 様々な人権問題を見過ごすことのないよう、人権侵害を受けた人の立場に立つことができる想像力や共感的に理解する力を培う。
  • 法の整備や人権擁護に関する国民の意識の高まりに関心をもち、人権上の問題について理解しようとする態度を育てる。
  • 拉致問題の理解のために、映像資料アニメ「めぐみ」を活用するなど、様々な人権問題への理解を深める学習を工夫する。
  • 同性愛者、性同一性障害の人たち、生活保護を受けている人、ホームレスなどに関する研修の機会を設け、多様化する人権問題に対する教職員の理解を深める。
    アニメ「めぐみ」は、内閣府拉致問題対策本部が企画・制作した、国内外の拉致問題啓発のための25分のドキュメンタリー・アニメ。

◎社会教育・家庭教育

  • アイヌの人々の人権問題や様々な人権問題に関する正しい知識の普及・啓発を図る。
  • 公民館の講座や市町村主催の人権啓発講座等で、拉致問題について、アニメ「めぐみ」を視聴したり、同性愛者、性同一性障害の人たちについて、当事者や専門家の話を聴いたりするなど、積極的な取組が望まれる。

<留意点>

※「様々な人権問題」として、刑を終えて出所した人、プライバシーに関する問題、ストーカー被害を受けている人などへの偏見・差別など多様な問題がある。このような人権問題についても研修する機会を設け、理解を深める。(学校教育・社会教育)

資料編

省略

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群馬県教育委員会 各課発行・提供資料にある「人権教育<外部リンク>」の中の【基本資料】「群馬県人権教育充実指針」をクリックしてダウンロードしてください。


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