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「ネイチャーポジティブ(自然再興)」とは、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることを意味します。
我々の生活は、生物多様性の上に存在しており、その恵みなしでは成り立ちません。しかし現在、地球上の生物多様性は急速に失われ続けており、地球環境の状況は人類が生存し続けるための限界に達していると言われています。その現状を受け、世界は、生物多様性の損失を反転させて回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」を2030年までのミッションに掲げ大きく動き出しました。ネイチャーポジティブの実現には、自然を守ることだけではなく、私たちの社会・経済全体が生物多様性の保全に貢献するような「社会変革」が必要です。
2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)において、2010年に採択された愛知目標の後継となる、2030年までの新たな世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030年ミッションとして「生物多様性の損失を止め反転させる」すなわち「ネイチャーポジティブ(自然再興)」が掲げられました。
昆明・モントリオール生物多様性枠組の概要(環境省)<外部リンク>
2023年3月31日に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」は、前述の「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を踏まえた日本の生物多様性の保全と持続可能な利用に関する基本的な計画です。本戦略は、生物多様性損失と気候危機という「2つの危機」に統合的に対応し、2030年までにネイチャーポジティブを実現するため、健全な生態系の確保や自然資本を活かす社会経済活動の推進を目指しています。
さらに、環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の連名で2024年3月に策定された「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」は、企業の事業活動に焦点を当てた国内の取組を具現化しています。本戦略では、ネイチャーポジティブの取組は企業にとって、単なるコストアップ等でなく、新たな成長機会であることを明確にし、その実践のための手法(負荷等の評価手法含む)も併せて提示されました。

図:ネイチャーポジティブへの移行のイメージ(出典:環境省「ネイチャーポジティブ経済の実現に向けて」)
これらの戦略を通じて、個々の企業がネイチャーポジティブ経営に移行し、バリューチェーンにおける負荷の最小化と製品・サービスを通じた自然への貢献の最大化が期待されています。同時に、環境省の試算によると、日本では2030年時点で47兆円/年のビジネス機会が新たに生まれると推計されており、そのうち4分の3以上(額ベース)がカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに強く関連しています。
企業が環境課題への対応を通じて競争力を向上させることは、新しい市場を創出するチャンスとして捉えることができると言えます。
国の取組の詳細はこちら: 生物多様性と経済活動(環境省)<外部リンク>
私たちの経済や社会は、生物・非生物を含めた自然界で形成される資本に依存しています。その分、ビジネスが自然に与える影響は年々深刻化してきており、生物多様性の損失や自然資本の劣化は、経済・社会活動のリスクを高め、不確実性を増大させるとともに、レジリエンス(回復力)を低下させる要因になっています。
したがって、持続可能な事業活動を実現する上で、自然資本及び生物多様性の保全への取組が欠かせません。これらを踏まえて、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の実現に向けた取組が求められています。

図:事業者の活動と生物多様性の関わり(出典:環境省「事業者の活動と生物多様性の関わり」を一部加工)
生物多様性・自然資本に関する情報開示枠組を提供する自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)の情報開示フレームワークが2023年9月に公表されました。2024-2025(会計)年度において、財務諸表等に沿ったTNFD統合開示を公表予定の企業である「TNFD Adopters」リストがTNFDサイト上に更新されており、2025年5月時点で、日本企業(金融・非金融)は世界最多の160社以上に達しています。