令和元年度市町村の財政状況　詳細版（その1）

令和元年度市町村の財政状況(詳細版)（PDFファイル：662KB）

第1　令和元年度市町村普通会計概況（その1）

1　決算の背景

（1）令和元年度当初の経済見通し

• 国内総生産　566.1兆円（名目）
• 経済成長率　名目＋2.4％、実質＋1.3％

（2）国の令和元年度当初予算

ア　一般会計の規模

101兆4,571億円（対前年度比＋3兆7,443億円、＋3.8％）

イ　一般歳出（国債及び地方交付税等、東日本大震災復興特別会計への繰入れを除く歳出）

61兆9,639億円（対前年度比＋3兆680億円、＋5.2％）

ウ　財政投融資計画

13兆1,194億円（対前年度比－1兆3,437億円、－9.3％）

（3）地方財政の概要

ア　地方財政対策の概要

　令和元年度地方財政対策では、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、人づくり革命の実現や地方創生の推進、防災・減災対策等に対応するために必要な経費を計上するとともに、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行う一方、国の取組と基調を合わせた歳出改革を行うこととされた。
また、歳入面においては、地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成30年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとされた。

イ　地方財政計画の規模

通常収支分

89兆5,930億円（対前年度比＋2兆6,957億円、＋3.1％）
（歳入）地方税　＋1.9％、国庫支出金　＋7.8％、地方債　＋2.3％
（歳出）一般行政経費　＋3.7％、公債費　－2.4％、投資的経費　＋12.0％

東日本大震災分（平成24年度から東日本大震災の復旧・復興事業等について区分するため策定）

うち復旧・復興事業分　1兆987億円（対前年度比－92億円、－0.8％）
（歳入）震災復興特別交付税　－4.2％、国庫支出金　＋1.2％
（歳出）一般行政経費　－17.9％、投資的経費　＋6.8％

うち全国防災事業分　1,058億円（対前年度比＋23億円、＋2.2％）
（歳入）地方税　＋2.3％　一般財源充当分　＋2.0％
（歳出）公債費 　＋2.2％

ウ　地方交付税総額（震災復興特別交付税除く）

16兆1,809億円（対前年度比＋1,724億円、＋1.1％）

（4）国及び地方財政の補正措置

ア　国

補正予算第1号（令和2年1月）

　歳出面では、令和元年12月に閣議決定された「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を実行するため、以下の経費等が計上された。
・災害からの復旧・復興と安心・安全の確保
・経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援
・未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上
また、歳入面では、公債金、前年度剰余金等が追加計上された。
この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも令和元年度当初予算に対し、3兆1,946億円増加し、104兆6,517億円となった。

イ　地方財政

　国の補正予算により、国税収入の減額補正等に伴い地方交付税が減額されるとともに、歳出の追加に伴う地方負担の増加が生じることから、以下の財政措置が講じられた。
・国税収入の減額に伴う地方交付税法定率分の減については、一般会計からの加算等により令和元年度当初の地方交付税総額を確保
・幼児教育・保育の無償化に係る地方負担の増加に対応するため、子ども・子育て臨時交付金の増額
・投資的経費に係る地方負担額等については、原則として、地方負担額の100％まで地方債を充当できることとし、後年度における元利償還金の50％を基準財政需要額に算入し、残余については単位費用により措置
地方公務員の給与改定について、「地方公務員法」の趣旨に沿って適切に対応するよう通知されたが、当該給与改定に係る一般財源所要額については、地方財政計画上の追加財政需要額の一部により対応することとされた。

（5）令和元年度の経済実績

• 国内総生産　559.7兆円（名目）
• 経済成長率　名目＋0.5％、実質－0.3％

　令和元年度の日本経済は、年度前半では海外経済の減速などから外需がマイナスの影響をもたらしたものの、個人消費や設備投資など内需が増加し、緩やかな景気回復が続いた。その後、10月の消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減に加え、台風や暖冬の影響により、個人消費は落ち込んだが、雇用・所得環境の改善が続く中で、持ち直しの動きが続いていた。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響による個人消費の減少、海外経済の悪化と訪日外国人旅行者数の減少などの影響により、年度末にかけて、内需と外需のいずれにおいても日本経済は厳しい状況となった。

2　決算概要

• 歳入総額：8,691億円（前年度8,（第1表）決算規模の状況（単位：千円、％）526億円）
• 歳出総額：8,351億円（前年度8,190億円）

歳入は対前年度比＋1.9％（＋165億円）、歳出は同＋2.0％（＋160億円）で、歳入歳出ともに4年ぶりの増となった。35市町村で実質収支が赤字の団体はなかった。

3　決算収支

　実質収支は、265億円（対前年度比－3.8％）となった。
単年度収支は、10億円の赤字（前年度は2億円の黒字）となった。赤字団体は18団体（6市、12町村）であった。
実質単年度収支は、203億円の赤字（前年度は132億円の赤字）で、4年連続の赤字となった。赤字団体は23団体（11市、12町村）であった。

4　歳入の概要

（1）歳入決算額の状況

　「市町村税」は、市町村民税（法人税割）が13.1％の減となったものの、固定資産税や軽自動車税が増となったことなどにより、対前年度比＋0.3％（＋8.9億円）となった。
「地方交付税」は、普通交付税では1.2％の増、特別交付税では9.8％の増となり、全体では2.2％（＋24億円）の増となった。
「地方債」は、単独災害復旧事業債、学校教育施設整備事業債等が増となった一方で、旧市町村合併特例事業債や過疎対策事業債が減となったことにより、対前年度比－8.5％（－66億円）となった。（臨時財政対策債を除く地方債は、対前年度比－4.2％（－22億円）。）

• ※1　各種交付金は、利子割交付金、配当割交付金、株式譲渡所得割交付金、地方消費税交付金、ゴルフ場利用税交付金、特別地方消費税交付金、自動車取得税交付金及び自動車税環境性能割交付金の合計である。
• ※2　国庫支出金は、交通安全対策特別交付金及び国有提供施設等所在市町村助成交付金を含む。

（2）市町村税の状況

　市町村税収入額（国民健康保険税を除く）は3,124億円で、対前年度比＋0.3％（＋8.9億円）となった。
「市町村民税」については、所得割が＋0.9％（＋9億円）、法人税割が－13.1％（－37億円）となったこと等により、全体としては対前年度比－2.0％（－28億円）となった。
「固定資産税」については、家屋分が＋3.3％（＋19億円）、償却資産分が＋2.9％（＋10億円）となり、全体としては対前年度比＋2.0％（＋28億円）となった。
「軽自動車税」については、対前年度比＋4.5％（＋3億円）となった。
税目構成は、市町村民税と固定資産税とで88.3％を占めており、前年度（88.5％）と同程度である。