ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 報道提供資料 > 【6月9日】群労委令和3年(不)第1号事件株式会社辰巳不当労働行為救済申立事件について命令書を交付しました。(労働委員会事務局管理課)

本文

【6月9日】群労委令和3年(不)第1号事件株式会社辰巳不当労働行為救済申立事件について命令書を交付しました。(労働委員会事務局管理課)

更新日:2022年6月9日 印刷ページ表示

 群馬県労働委員会は、令和4年6月8日、標記事件に関する一部救済を内容とする命令書を当事者に交付しました。その概要は下記のとおりです。

1 当事者

(1)申立人:群馬合同労働組合(高崎市柴崎町)(以下「X組合」という。)
(2)被申立人:株式会社辰巳(足利市五十部町)(以下「Y会社」という。)

2 事案の概要等

(1)事案の概要
 A組合員は、平成24年頃から新聞配達員としてC1会社の経営する足利市内の新聞店に勤務していた。
 令和元年9月、C1会社は、当該新聞店の経営を終了した。その後、Y会社は、C1会社を事実上引き継ぐ形で当該新聞店の経営を開始した。A組合員の労働条件は、Y会社の経営開始時点では、従前からの変更はなかった。令和2年1月、A組合員は、Y会社から、給料の減額等労働条件を変更する旨を伝えられ、その後、X組合に加入した。X組合とY会社は、A組合員の労働条件を巡って団体交渉を重ねていたが、その最中の同年8月、A組合員は、無断欠勤した。無断欠勤に気づいたB1店長がA組合員に電話したところ、A組合員は、深刻な反省や謝罪をしなかった。その後開催された第3回及び第4回団体交渉において、Y会社は、A組合員の能力不足を指摘した上で、今後の労働条件を示し、X組合がそれを承諾しなかったので、A組合員を解雇した。
 第3回団体交渉において、Y会社は、B1店長のほかB2を交渉担当者としたが、予め要求書に記載された要求事項に回答できる者を参加させなかったほか、B2の交渉権限を明らかにしなかった。また、B2は、当該団体交渉において、新聞発行会社本社のC2会社が、上記無断欠勤を問題視しているとの虚偽の発言をした。B2は、Y会社代表のB3社長及びB1店長とともに、その後開催された第4回団体交渉にも引き続き出席した。
 本件は、A組合員の解雇が労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第1号の不利益取扱いに該当する不当労働行為であるとして、また、第3回及び第4回団体交渉が労組法第7条第2号の団体交渉拒否に該当する不当労働行為であるとして、X組合から救済申立が行われたものである。
(2)組合の請求する救済内容要旨
ア Y会社は、A組合員の解雇をなかったものとして取り扱うこと。
イ Y会社は、A組合員の解雇の翌日から命令に至る日までの賃金を支払うこと。
ウ Y会社は、第3回団体交渉より前の交渉を前提として、団体交渉に誠実に応じること。

3 判断の要旨

(1)労組法第7条第1号(不利益取扱い)該当性
 A組合員の能力不足やその能力不足によりY会社に損害を与えていたことは認められるものの、A組合員に向上の見込みがないとまでは断定できず、また、就業に適さないと認められる状況にあったかについては疑問がある。
 また、A組合員に対する感情的な反発があったとしても、本件解雇はバランスを失しており、解雇を避けるため解決方法を模索する等の配慮のないまま突如解雇したことは、手続上の瑕疵がある。
 しかしながら、Y会社はX組合の活動を妨害することはなく、かえってA組合員の労働条件の見直しについてそれなりに前向きに対応するなど組合嫌悪を示す対応が認められないこと、Y会社が示した労働条件は、他の従業員と比べて不利とはいえず、A組合員との契約を避ける意図は認められないこと等から、本件解雇は、A組合員が組合員であること等を理由にしているとはいえない。
 よって、A組合員の解雇は、労組法第7条第1号の不当労働行為には該当しない。
(2)労組法第7条第2号(団体交渉拒否)該当性
 第3回団体交渉において、B2の権限を示さずに交渉に当たらせ、予め示された要求事項に回答できる者を出席させず、さらに、X組合の適切な判断を誤らせるおそれのある虚偽の主張を繰り返したY会社の対応は、不誠実であったといえる。
 よって、第3回団体交渉におけるY会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
 一方、第4回団体交渉においては、第3回団体交渉の虚偽の発言がX組合の判断に影響を与えていたと評価すべき事実は存在せず、また、権限の明確なB3社長が出席していたことから、Y会社の対応は、不誠実であったとはいえない。

4 主文の内容

(1)Y会社は、X組合に対し、第3回団体交渉におけるY会社の対応が労組法第7条第2号の不当労働行為であると認定されたので、今後同様の行為を繰り返さない旨を内容とする文書を交付しなければならない。
(2)X組合のその余の申立てを棄却する。

参考

1 不当労働行為とは

 不当労働行為救済制度は、憲法で保障された団結権等の実効性を確保するために、労組法に定められている制度であり、労組法第7条では、使用者の労働組合や労働者に対する次のような行為を「不当労働行為」として禁止している。

〔不当労働行為として禁止される行為〕
(1)組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(第1号)
ア 労働者が、

  • 労働組合の組合員であること。
  • 労働組合に加入しようとしたこと。
  • 労働組合を結成しようとしたこと。
  • 労働組合の正当な行為をしたこと。

を理由に、労働者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをすること。
イ 労働者が労働組合に加入せず、又は労働組合から脱退することを雇用条件とすること。
(2)正当な理由のない団体交渉の拒否の禁止(第2号)
使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを、正当な理由なく拒むこと。
※ 使用者が形式的に団体交渉に応じても、実質的に誠実な交渉を行わないこと(「不誠実団交」)も、これに含まれる。
(3)労働組合の運営等に対する支配介入及び経費援助の禁止(第3号)
ア 労働者が労働組合を結成し、又は運営することを支配し、又はこれに介入すること。
イ 労働組合の運営のための経費の支払いにつき経理上の援助を与えること。
(4)労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱いの禁止(第4号)

2 再審査の申立て期間

 命令書が交付された日の翌日から起算して15日以内に中央労働委員会に再審査の申立てができる。

3 取消訴訟の出訴期間

(1)使用者の場合…命令書が交付された日の翌日から起算して30日以内
(2)組合の場合…命令書が交付された日の翌日から起算して6か月以内

報道提供資料(PDFファイル:171KB)