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令和4年10月1日から「産後パパ育休(出生時育児休業)」がスタートし、さらに男性が育児休業を取得しやすくなりました。なぜ今、男性の育児休業取得が必要なのか。第1部では、男性育休を取り巻く状況、育児休業取得のメリットについて、企業側・パパ側からわかりやすく解説します。第2部では、男性の育児休業制度や育児休業給付制度について、さらに詳しく解説します。
男性の育児休業取得をテーマに、男女とも仕事と育児を両立できる職場環境、働きやすい企業を考えてみませんか。
講師:認定NPO法人フローレンス 中村 慎一 氏
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講師:群馬労働局雇用環境・均等室 担当者群馬労働局雇用環境・均等室 担当者
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《ダウンロード用資料はこちら》
育児休業給付の内容と支給申請手続(令和4年10月1日施行版) (PDF:1.19MB)
tsulunosポータルサイト<外部リンク>
第1部「男性育休が家族の未来を変える」については、令和5年2月9日(木曜日)までの間、アンケートフォーム内で講師への質問を募集しました(現在は募集終了)。
お寄せいただいた質問と講師からの回答は以下のとおりです。
(回答)
家事育児に関して「自分の主担当はこれ」と無意識に線を引いてしまっていたことに気付きました。
「線の向こう側(※注)はパートナーがやってくれるだろう(だから自分は主体的に関わる必要がない)」と思っていた、ということです。
育休期間中に「ぜんぶ自分がやる!」と決めたことで、そういった「パートナーに依存していた」部分に気付けたことは、その後サポーターではなくプレーヤーとして家事育児をするというポリシーに繋がりました。
※注 例えば「子どもの学校のPTA、習い事など地域社会との繋がりのケア、予防接種など健康管理、きょうだい間の関係性ケア」など
(回答)
「自分がいなくても仕事が回る状態」を意識して作ることです(属人化の排除)。
もし職場に長時間労働が蔓延っているならば「自分はそこから距離を取る」ことを様々な言葉や行動で周囲に示していくことも有効です。
とはいえ、たった1人でそれをやり通すには覚悟や勇気が必要です。
考えに共感してくれたり、近い価値観を持つ人を探し、仲間を作りましょう。仲間と一緒に発信、行動、価値観を表明し、楽しみながら職場の雰囲気を変えていくことができれば最高です。
「労働者が事業主に対して育休等の相談をしたこと、または事業主が当該労働者の相談に対応した際に労働者が述べた事実を理由に、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない」と法律にも明記されています。(男女雇用機会均等法および育児・介護休業法)
もし上司から不当な扱いを受けたときは、落ち着いてそれを記録し、すぐに会社の相談窓口に申し出るのが良いでしょう。会社に相談窓口がなかったり、相談しても適切に取り扱われないときは、総合労働相談コーナー、労働局、労働基準監督署などの公的機関、労働専門機関に相談しましょう。
(回答1)講師の経験
育休取得前から、子どもの保育園送迎のために定時退社を続けていました。男性社員で定時退社をしているのはフロアで自分だけだったので、そこから男性社員で初の育休取得への道筋がつけられたのかもしれません。職場の雰囲気や同調圧力に対して鈍感力を発揮し「自分は長時間労働や、上司より先に帰らないといった暗黙のルールには従いませんよ」というスタンスを表明していくことが有効です。
育休取得したことで、「家事育児の全てを自分ひとりで取り回す」体験ができたことが大きな収穫でした。子育てになにが必要なのか、今まで自分に見えていなかったもの、自分が見ようとしてこなかったものはなにか。それに気付けたことが、最も意味のあることでした。
(わたしの場合は「食材管理と献立作り、毎日の家族の食事作りの大切さと大変さ」がそのひとつです)
(回答2)ボーナスについて
育休中は会社から給与は支払われず、国の雇用保険から給付金が出ます。よって、育休中はボーナス査定の対象外となるのが一般的です。
が、ボーナス支給は会社ごとの判断になりますので、ご自身が務める会社の経営や人事、経理などにご確認ください。
(回答1)総括
「男性が男性のことについて考え、言葉にし、行動する」。それを積み上げ、繰り返すことが現状を変えていきます。
男たちが「女性にもっと活躍してもらうには」などと言っているあいだは、50年経っても大して変わらないでしょう。
「男はなぜ職場に縛り付けられてしまうのか。男が長時間労働から脱却するにはどうすればいいか」について本気で男たちが考え、男たちが行動すれば、数年で大きな変化が巻き起こるはずです。
(回答2)他国の状況
男性育休取得率の高さという観点では、ノルウェー、スウェーデン、ドイツが挙げられます。政策面では、ノルウェーとスウェーデンにおいては北欧諸国で導入されている「パパ・クオータ制度」が効果を発揮しているようです。これは育児休暇の一定期間をパパに割り当てる制度で、もし父親が育児休暇を取らなければ休暇や給付金をもらう権利が消滅してしまうというものです。ドイツでは「両親時間」という名称の育児休暇の権利があります。子どもが生まれてから、最長36ヶ月取得でき、元の職場復帰までが保証されます。しかも父親・母親同時にとってもOkで、この育児休暇を取得した場合、12ヶ月の「両親手当」なる育児手当があります。
しかしこうした手厚い制度に加えて、例えばスウェーデンを例にとると、ライフステージを通じて就業率の男女差が最も少ない国の一つで、女性活躍や、仕事と育児の両立が根付いていることが、男女の育休取得格差を生じさせない、ひとつの要因と考えられます。図表にある夫の家事・育児関連時間のランキングが、男性育休取得率と比例している事実は大変興味深いです。
(回答3)今後の見通し
東京大学経済学研究科教授・山口慎太郎氏の著書『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(光文社新書・2019年刊)によれば、男性の育休取得について、ノルウェーの調査事例が取り上げられています。ノルウェーでは、1993年から2006年のわずか13年間に、男性の育休取得率が35%から70%まで上昇したというデータです。その上昇の要因が「育休が『伝染』した」と考えられるというのです。例えば男性Aさんが育休を取った場合、周りの同僚や兄弟の育休取得率は目に見える数値で上昇したそうです。
このご質問に「日本では男女の育休取得差を埋めるのに●年かかります!」という言い切り型でお答えすることは叶いませんが、会社や組織の中で男性育休取得者の声がポジティブなメッセージとして共有されることが、取得のメリットをもっとも実感してもらいやすく、周囲も追随しやすいということは重要な事実です。たった13年で取得率が倍増したというパワーを、日本企業でも施策として採用していただきたいと考えます。
★男性育休取得率100%を誇るフローレンスでも、育休取得者による経験談を積極的に発信しています
(1)育休取得は僕たちが「家庭の当事者」になるためのスイッチだった<外部リンク>
https://florence.or.jp/news/2023/01/post58133/
(2)育休は家族の基盤をつくる時間であり、生き方まで変えてしまった時間だった<外部リンク>
https://florence.or.jp/news/2023/02/post59085/