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アスベスト(石綿)は、加工の容易さ不燃性などの特性により、スレート材、吹付け材といった建築資材をはじめ、幅広い用途に使用されてきましたが、その粉じんの吸い込みによる中皮腫や肺がんの危険性が指摘されるなど、その毒性が社会問題化し、我が国では一部の特性部材を除きその製造・流通が行われておりません。
廃棄物処理法や労働安全各法も改正され、これを適正に処分しなければならないこととなっています。
アスベスト(石綿)廃棄物は、特別管理産業廃棄物である「廃石綿等」とアスベストを含有する成型品が廃棄物となった「石綿含有産業廃棄物」とに分けられ、それぞれ廃棄物処理法によりその収集・運搬方法や処分方法などが定められています。
石綿含有産業廃棄物(廃棄物処理法施行規則第7条の2の3) | 廃石綿等(廃棄物処理法施行令第2条の4第5号ヘ) |
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工作物の新築、改築又は除去に伴って生じた産業廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの(廃石綿等(右欄参照)を除く)をいいます。過去には、「非飛散性」といわれたことがありますが、その取り扱いによっては飛散することから、現在では「石綿含有」といいます。 ※石綿含有成形板(セメント、けい酸カルシウム等の原料に、石綿を補強繊維等として混合し、成形されたもの)や石綿含有ビニル床タイル、石綿含有仕上塗材等が解体等工事により撤去され廃棄物となったものが該当します。 《主な石綿含有成形板》
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廃石綿及び石綿が含まれ、若しくは付着している産業廃棄物のうち下記(1)、(2)であって、飛散するおそれのあるものとして廃棄物処理法施行規則で定めるものをいいます。
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石綿建材除去事業における「廃石綿等」又は工作物の新築、改築、除去等の工事における「石綿含有産業廃棄物」の排出事業者は、原則として元請業者が該当します。実際の除去事業の施工は下請業者が行う場合であっても、廃棄物処理についての責任の所在が曖昧にならないよう、発注者から直接除去事業を請け負った元請業者を排出事業者とします。元請業者が排出事業者となるのは、建設工事等においても同様です。
「廃石綿等」は、特別管理産業廃棄物に該当することから、排出事業者は石綿建材除去事業により排出される廃石綿等の処理に関する業務を適切に行わせるため、それぞれの石綿建材除去事業を行う事業場(除去現場)ごとに資格を有する特別管理産業廃棄物管理責任者を置き、県に報告しなければなりません(廃棄物処理法第12条の2第8項)。
特別管理産業廃棄物(廃石綿等)の排出事業者は、環境省令で定める事項を記載した帳簿を事業場(除去現場)ごとに備え、1年ごとに閉鎖し、閉鎖後は5年間保存しなければなりません。
排出事業者(元請業者)は、廃石綿等及び石綿含有産業廃棄物の適正処理を図るため、これらの処理に関し次の事項を定めた処理計画を定めましょう。この際、発注者からの情報をもとに、情報収集や現地確認により石綿の使用状況の全体像を把握することが大切です。
労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則では、廃棄物の処理以外の作業方法や作業順序を示した作業計画を定めることとされているので、これらを加味して計画書を作成する必要があります。また、石綿が使用されている建築物等の解体や吹き付けられた石綿の封じ込め又は囲い込みの作業、吹き付け石綿の除去作業を行う場合に、事前に届出等を義務づけています。石綿障害予防規則に基づく届出等の詳細については、最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。
大気汚染防止法では、石綿含有吹き付け材、保温材、耐火被覆材等の特定粉じんを排出する作業について事前に県(現場が前橋市、高崎市においてはそれぞれの市)への届出を義務づけています。
また、労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則及び大気汚染防止法に基づき、解体等工事の元請業者等は、解体等工事に係る事前調査を行ったときは、遅滞なく、当該調査の結果を県へ都道府県知事等に報告しなければなりません。詳しくは管轄の環境(森林)事務所又は市役所へお問い合わせください。
排出事業者は、その(特別管理)産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければなりません。
排出事業者は、石綿含有産業廃棄物又は廃石綿等の運搬又は処分を他人に委託する場合には、産業廃棄物委託基準(廃棄物処理法施行令第6条の2)又は特別管理産業廃棄物委託基準(廃棄物処理法施行令第6条の6)に従いそれぞれ委託しなければなりません。
石綿含有産業廃棄物(廃棄物処理法施行令第6条の2) | 廃石綿等(廃棄物処理法施行令第6条の6) | |
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収集運搬 |
排出事業者が、石綿含有産業廃棄物の収集運搬を委託できる者は、産業廃棄物収集運搬業者であって、解体等に伴って発生する「汚泥」、「廃プラスチック類」「ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず」又は「がれき類」について、「石綿含有産業廃棄物を含む」旨が、その事業範囲に含まれる者に委託しなければなりません。積み込み地(排出場所・保管場所)及び積み下ろし地(中間処理施設又は最終処分場の所在地)双方の都道府県知事等から収集運搬業の許可を得ていることが必要です。 |
排出事業者が廃石綿等の収集運搬を委託できる者は、特別管理産業廃棄物収集運搬業者であって、「廃石綿等」がその事業範囲に含まれる者に委託しなければなりません。積み込み地(排出場所)及び積み下ろし地(中間処理施設又は最終処分場の所在地)双方の都道府県知事等から収集運搬業の許可を得ていることが必要です。 |
中間処理 |
石綿含有産業廃棄物の処分を委託できる者は、産業廃棄物処分業者であって、解体等に伴って発生する「汚泥」、「廃プラスチック類」「ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず」又は「がれき類」について、「石綿含有産業廃棄物を含む」旨が、その事業範囲に含まれる者に委託しなければなりません。 廃棄物処理法は、石綿含有産業廃棄物の処分又は再生を行う場合は、「石綿含有産業廃棄物による人の健康又は生活環境に係る被害が生ずるおそれをなくする方法として環境大臣が定める方法により行うこと」(廃棄物処理法施行令第6条第1項第2号ニ)と定めています。環境大臣が定める石綿含有産業廃棄物の処分又は再生の方法(平成18年環境省告示第102号)として次の四つが定められています。 このように、石綿含有産業廃棄物は、石綿含有産業廃棄物の溶融施設として都道県知事等から設置許可を受けた施設及び石綿を含む廃棄物を無害化処理(人の健康や生活環境に係る被害が生ずるおそれがない性状にする処理)できるものとして環境大臣の認定を受け設置された施設などでのみ中間処理(溶融・無害化・破砕や切断)が認められています。
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排出事業者が廃石綿等の処分を委託できる者は、特別管理産業廃棄物処分業者であって、「廃石綿等」がその事業範囲に含まれる者に委託しなければなりません。
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最終処分 |
石綿含有産業廃棄物の最終処分は埋立て処分により行うこととし、埋立て処分は廃棄物処理法第15条第1項に基づき都道府県知事等の許可を受けた安定型、管理型又は遮断型最終処分場で行わなければなりません。 |
廃石綿等の最終処分は埋立て処分により行うこととし、埋立て処分は廃棄物処理法第15条第1項に基づき都道府県知事等の許可を受けた管理型又は遮断型最終処分場で行わなければなりません。また、 排出事業者が廃石綿等の埋立て処分を委託できる者は、特別管理産業廃棄物処分業者であって、「廃石綿等」がその事業範囲に含まれる者に委託しなければなりません。 |
その他注意事項 | 石綿含有産業廃棄物の処理を委託する際には、委託者の有する委託した産業廃棄物の適正な処理のために必要な事項に関する情報として、委託する産業廃棄物に「石綿含有産業廃棄物が含まれる旨」を契約書に記載しなければなりません(規則第8条の4の2)。また、産業廃棄物を委託業者に引き渡す際に交付する産業廃棄物管理票(マニフェスト伝票)は、石綿含有産業廃棄物については他の廃棄物とは区分して、それぞれ廃棄物の種類ごとに1セットとして交付する必要があります。 | 特別管理産業廃棄物排出事業者は処理を委託しようとする者に対し、あらかじめ「委託する特別管理産業廃棄物の種類(廃石綿等)」「数量」「性状及び荷姿」「取り扱う際に注意すべき事項」を文書で通知しなければなりません(廃棄物処理法施行令第6条の6)。運搬業者は、運搬の際はこの文書を携帯する必要があります。(廃石綿等が収納されている袋又は容器に当該事項が表示されている場合は携帯する必要はありません。) |